beacon

課題も出てSBSカップ優勝を逃すも、U-18日本代表は“個人昇格”への可能性示す

このエントリーをはてなブックマークに追加

U-18日本代表はSBSカップ3位に

[8.28 SBS杯最終節 U-18日本代表 1-1(PK4-5)U-18ウズベキスタン代表 エコパ]

 個々が可能性を示したU-18日本代表、課題を学び、3位でSBSカップ終了――。U-18ウルグアイ代表、U-18ウズベキスタン代表、U-18日本代表、そして静岡ユース(静岡県高校選抜)が優勝を争った「2022 SBSカップ国際ユースサッカー」(静岡)は28日、大会最終日を行い、U-18日本代表はU-18ウズベキスタン代表と対戦した。80分間の勝負で勝てば逆転優勝だったが、1-1で前後半を終了。PK戦も4-5で落とし、1勝2敗(2PK負け)の3位で大会を終えた。3戦全勝(2PK勝ち)のウズベキスタンが初優勝を飾っている。
 
 4-3-3システムの日本はGK中村圭佑(静岡学園高)、右SB坂井駿也(鳥栖U-18)、CBヴァン・イヤーデン・ショーン(横浜FCユース)、CB高井幸大(川崎F U-18)、左SB高塩隼生(横浜FCユース)の4バック、下田栄祐(鹿島ユース)がアンカー、インサイドハーフが根本鼓太郎(桐蔭横浜大)とゲーム主将の徳永涼(前橋育英高)、前線は右から高橋輝(大宮U18)、五木田季晋(川崎F U-18)、名願斗哉(履正社高)が並んだ。

 日本は立ち上がりから積極的に攻撃。個でもボールを奪い返す力と展開のパスが光る下田をはじめ、各選手がグループの中でそれぞれの力を発揮していた。4分に五木田がターンから右足シュートを狙い、直後にも下田が左足を振り抜く。また、左SB高塩が名願とのコンビネーションなどからPAを目指した。

 ウズベキスタンも奪い返しからシュートへ持ち込んでいたが、日本が先制点を奪う。前半17分、本職であるボランチ同様の配球力を見せていた右SB坂井が、内側を取る形で高橋、根本とパス交換。そして、根本が中央へ横パスを繋ぐと、ターンから一気に前へボールを運んだ下田が左前方へスルーパスを通す。
 
 これで抜け出した名願がマイナスのラストパス。ゴール前まで詰めていた坂井が自身よりも後方に来たパスをコントロールし、振り向き様の右足シュートをゴール左隅へ蹴り込んだ。GK中村のゴールキックを起点に攻撃を組み立て直しながら20本ものパスを繋ぎ、最後はSBの坂井が決めたファインゴール。ウズベキスタンは反撃に出るが、日本はクロスを高井がスライディングしながらクリアしたほか、技術力の高い相手に対して徳永や下田中心に好守を続け、高橋と名願の両翼や高塩のドリブル突破や根本を交えた崩しに繋げていた。

 日本は後半開始から名願とMF松村晃助(横浜FMユース)をスイッチ。一方のウズベキスタンは相手に主導権を握られながらも、崩れない。ニショノフ・ファルホド監督は「みんなで一緒にまとまって戦った。それだけです」と謙虚に語ったが、ウズベキスタンはチームとしてのまとまり、ゴール前でのタフさ、安定感を含めての強さがあった。

 日本はヴァン・イヤーデンや下田、高塩のインターセプトから攻撃に結びつけ、五木田、高橋がシュートへ持ち込む。だが、2点目が遠かった。日本の冨樫剛一監督は、「全ての試合に置いてゲームを決める、ゴールを獲るというところに課題を残していた大会だったなと思います」と振り返る。

 日本は18分に根本と右SB都築駿太(流通経済大柏高)を入れ替え、坂井をインサイドハーフへ上げる。迎えた20分、日本は痛恨の失点。自陣でボールを失うと、DFジュラボエフ・アサドベク(ナウバホル)にペナルティーアークまでボールを運ばれ、サポートしたFWイスラモフ・リアン(パフタコル)に右足ミドルを右隅に決められてしまう。このシーン、冨樫監督は相手の攻撃のスピードを吸収しながら押し出せなかったこと、また「自分のポジションを捨ててまで他の選手が、(行く)というところは(トレーニングで)詰め切れなかった」と指摘。加えて、日本とウズベキスタンのシュートレンジの差について口にしていた。

 日本は松村の右足シュートなどで再び勝ち越しを目指す。27分には坂井と右SH阪田澪哉(東山高)を入れ替え、高橋と五木田の2トップへ移行。32分には徳永の左FKをファーの下田が完璧に折り返す。これを高橋が頭で狙うも、シュートは枠左へ外れた。さらに高塩に代わって投入された左SB石川晴大(清水ユース)の左クロスを五木田が頭で狙うが、決め切ることができない。

 日本はこの後、ヴァン・イヤーデンを前線へ上げてパワープレーへシフト。1点をもぎ取りに行く。39分には再びイスラモフ・リアンのコントロールされた右足ミドルがゴールを捉えるが、これは「(1点目は)絶対に防げない失点ではなかったので。そこに自分たちの甘さが出たかなと思います。無回転でスピードのあるシュートを凄く打ってくるので自分がもっと止めれる選手にならないと世界ではやっていけない」というGK中村が1失点目の反省を活かしてファインセーブを見せる。

 ウズベキスタンは80分間で勝利できなくても、PK戦で勝利すれば優勝という状況だった。遅延行為の連続で退場者を出しながらも、約3分半のアディショナルタイムでゴールを死守して後半終了。第1試合でU-18ウルグアイ代表に3-0で勝った静岡ユースが勝ち点6、得失点差プラス3で全日程を終えていた。日本はPK戦で勝利して勝ち点2を加えても同6で得失点差プラス1。後半終了の笛とともに優勝の可能性が潰えた。

 ただし、PK戦での勝利に集中。日本が勝てば優勝の決まる静岡ユースの声援も後押しにPK戦へ臨んだ。先攻の日本は1人目の下田から高橋、松村が連続で成功。だが、GK中村はシュートコースを当てながらもはじき出すことができない。迎えた4人目、日本は阪田の右足シュートが左ポストを直撃し、外へ。そして3-4で迎えた5人目、日本は徳永が右足シュートを決めたが、ウズベキスタンに5人連続で決められ、4-5で敗れた。

 日本はU-18ウルグアイ代表との初戦で後半アディショナルタイムに決勝点を挙げて勝利。その一方、試合最終盤に失点し、PK戦で敗れた静岡ユースとの第2戦では終盤の時間の使い方に課題を残した。そして、この日のウズベキスタン戦を含めて日常から危機感を持ってシュートレンジを広げることや、1点を奪い切る力、守り切る力を身に着けなければならないことを実感。中村は「静学に帰ってトレーニングして、また日の丸をつけて戦えるように。グレードアップしていきたいと思っています」と誓っていた。

 U-18日本代表の1歳年上に当たるU-19日本代表は、9月にAFC U20アジアカップ予選(ラオス)に臨み、いずれも23年に開催されるU20アジアカップ本大会、U-20ワールドカップと続く戦いがスタートを切る。今回のSBSカップは、U-18世代の才能たちにとって、世界へ向かうU-19代表への“個人昇格”を懸けたチャレンジの場でもあった。

 アジア、世界を戦うチームに加わる“基準”に到達した選手はいたのか――。U-19日本代表の監督を兼任する冨樫監督は、「実際に今大会良い印象を持っている選手は非常に多くいますし、グループとしても良いチームだったとは思います。(直近の大会に限らず)彼らが“個人昇格”というところで言ったら、チャンスを持っていた選手はたくさんいたんじゃないかなと思います」とコメント。坂井は「今回(9月の大会で)入れなくてもその次絶対に入ってやるという気持ちは常に持っているので、日頃の練習からもっともっとやっていかないといけない。また頑張っていきます」と力を込めた。可能性を示したU-18日本代表の選手たちが、SBSカップをきっかけに成長を加速させる。

(取材・文 吉田太郎)

TOP