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U-20日本代表初ゴールの佐野航大、懇願のPK弾は「絶対に決められると思っていた」ブレイク中の兄・海舟と日の丸の夢を見る

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先制ゴールを決めたMF佐野航大(最右)

「アジアの戦いは難しい」

 A代表の選手たちからもよく聞かれる言葉だが、「世界大会でもあれだけ活躍しているような選手たちが、どうしてアジアでこんなに苦戦するのだろう?」という素朴な疑問は、多くのサッカー少年が抱くものである。

 ただ、実際に味わってみればよくわかる。「どうして日本代表がアジアで苦戦するのか分かった」。年代別日本代表の選手たちは、いざアジア相手の戦いを終えると、そんな言葉を残すのである。

 1日に開幕したAFC U20アジアカップ、その第2戦に初先発したMF佐野航大(ファジアーノ岡山)も、そんな「難しさ」を実感した様子だった。

「こういうゲーム展開になるのはわかっていたんです。でも、あのブロックを作られるところだったり、鋭いカウンターは難しさがあります。でも、やっぱり攻めて攻めてとなると、リスク管理の難しさが出てくる。やっぱり点が取れないとなると、気持ちが前に行っちゃうので……」

 試合序盤からボール支配率で言えば日本が上回っているのだが、ゲームをコントロールしている実感はなかった。相手のミドルプレスに対し、「前半はボールをロストし過ぎた」と佐野が率直に振り返ったように、うまく敵陣へと運び出せない展開が続く。

 もどかしい展開の中で佐野と松木玖生(FC東京)の二人のインサイドハーフが下がって受ける展開が増えたが、「後ろに重くなり過ぎた」(佐野)と言うように、バランスの良い形でもなかった。

 ただ、こうした状況から修正していけるのもチームとしての地力が問われる部分であり、個人の力量を証明するところでもある。

 ハーフタイムを挟み、松木をトップ下に置く形へフォーメーション自体を変えた日本は、確実にペースを取り戻していった。

「後半は高い位置を取りながらやれました。自分のマークに付いていた選手をかなり困らせることができていて、時間が経つにつれて相手が焦れてくるのも分かった」(佐野)

 徐々にペースを握り返すと、後半28分には裏へと飛び出した松木がPKを奪い取るビッグチャンスが生まれる。第1戦では松木がPKを外している中で、佐野はこのキッカーに名乗りをあげた。

「玖生に『蹴らせて』と言って、クマ(熊田直紀)にも『蹴らせて』と頼んで、二人の許可を取って蹴らせてもらいました」

 米子北高時代からPKは蹴り込んできており、「自信はあったし、絶対に決められると思っていた」。小刻みにリズムを変えてGKをずらすテクニックも披露しつつ、「いつも通り、冷静に決めることができました」。

 実はこれがこの代表における初ゴール。「ずっと決めたかった」と実感を込めて話したように、とにかく欲しかったゴールを得意のPKで突き刺すこととなった。

 米子北の中村真吾監督がDAZNを通じて「どうやら観ているらしい」ことは知っているし、同じく米子北出身の兄・佐野海舟(鹿島アントラーズ)のJリーグでの活躍も大いに刺激になっている。

「(A代表に)呼ばれてほしい」と語る兄の存在は、最も身近なライバルであり、お手本でもあった。いつか共に日本代表のユニフォームを着て、ダブルボランチを組むこともあるかもしれない。

「いつか一緒に(代表を)背負いたいです」

 この大会は、そんな佐野家の夢に向けた第一歩でもある。

(取材・文 川端暁彦)
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