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遠藤航が小学生&ファンとデュエル対決!! “W杯優勝を目指す”発言の真意も明かしたイベントに密着取材

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小学生とデュエル対決を繰り広げるMF遠藤航(シュツットガルト)

 日本代表のキャプテンに就任したMF遠藤航(シュツットガルト)が今月25日、自身が主催するオンラインコミュニティ『月刊・遠藤航』のトーク&体験イベントを横浜市内で行った。第1部では普段からサッカーをプレーしている小学生、第2部では日頃から遠藤を応援しているファン・サポーターが中心に参加。技術指導ではブンデスリーガで代名詞となった“デュエル”の秘訣を遠藤自身が実演し、参加者と熱いマッチアップを繰り広げるという貴重なイベントとなった。

 イベントに参加したのは『月刊・遠藤航』の会員と、その家族の小学生。遠藤自ら企画を立案しているコミュニティでは、自らの試合を振り返る『PICK UP MATCH』や『現代ボランチ研究会』などディープなコンテンツが提供されていることもあり、「より意識の高い人が集まる」(スタッフ)集まりとなった。

 第1部の冒頭では遠藤がトークセッションを実施。ブンデスリーガとカタールW杯を含む日本代表活動でフル稼働した長いシーズンを振り返りつつ、小学生の質問に答えた。

シュツットガルトのユニフォーム姿も大勢来場していた

 ギプス姿で来場した小学生からの「足を骨折したんですが、いま何をして過ごせばいいですか」という問いには「僕だったらサッカーをいっぱい見るかな。でもお勉強も頑張ると思う」と“模範回答”。続けて「サッカー選手としてサッカーに向き合ってくれるのは嬉しいけど、子どもの可能性はいろいろあるので、いろんなことにチャレンジする時間にしてもいいし、いい時間にしてほしいですね」と優しい言葉をかけていた。

 またキャプテンに求められる試合中の声かけについての質問には「自分がどうしたいかを伝えられるかが大事。必ずしも盛り上げ役になる必要はない」とアドバイス。「FWなら点を取るため、DFなら自分が守るためにどうしたらいいかを伝えること。自分がプレーしやすいようにというのもそうだし、チームが勝つためにもなる。そうやってチームがディスカッションできればいいと思う」と自身の経験を振り返りながら話した。

 その後はいよいよピッチに出て、遠藤が考案したメニューでの実技指導。数十人の小学生のドリブル突破を次々と受け止める“デュエル対決”は大いに白熱し、遠藤が何度もシャツを着替えるほどのインテンシティとなった。

ウォーミングアップは手つなぎ鬼ごっこ

小学生が次々にデュエルを挑んだ

 すみだサッカークラブの関晴翔くん(5年生)は遠藤との1対1でゴールを記録。鋭い切り返しからのドリブルで抜きにかかると、一度は足で阻まれたが、こぼれ球を素早く拾ってゴールを破った。「みんなバンバン取られていたし、圧が凄くて怖かった」と振り返りながらも、「かわせるとは思わなくて、ダメかなと思ったけど、(こぼれ球が)まだあると思って行った。ここに来れたことだけで自慢できるのに、ゴールもできて嬉しい」と笑顔で話してくれた。

デュエル対決を制した関晴翔くん

第1部ではサイン入りボールを全員にプレゼント

 第2部は、遠藤を普段から応援しているファン・サポーターへの実技指導からスタート。2006年のトリノ五輪と10年のバンクーバー五輪にボブスレー選手として出場した経験を持ち、現在は遠藤のパーソナルトレーナーを務める小林竜一氏が、普段から遠藤が取り組んでいるフィジカルメニューを伝授した。

小林竜一氏のフィジカルメニューも実践

可動域と安定感を見せた

 さらに子どもたちと同様に“デュエル”のメニューも実施。フットサルのセンターサークルの中で、遠藤からボールを奪うというミッションが参加者に課せられた。

センターサークルでデュエル対決

果敢に挑んだ女性参加者も

 遠藤はボールタッチのミスでボールがエリア外に転がり、まさかの敗戦を喫する場面もあったが、ボールを奪われた回数はゼロ。さすがの強さと駆け引きには、参加したサッカー経験者からも驚きの声が上がった。

思わぬミスで敗戦…


 また参加者6人が攻撃側のフィールドプレーヤーを務め、遠藤とGKの2人で守るという変則6対2のミニゲームも実施。明らかな数的不利ながら一度もゴールを破られることなく、これには遠藤も満足した様子だった。

白熱した6対2の変則ミニゲーム

 最後は第1部同様、遠藤がトークセッションを実施。3年後の北中米W杯に向け、“世界一”という目標を掲げるに至った真意を語った。

「僕も最近知ったんですが、日本サッカー協会には2050年までにW杯優勝を目指すという目標があって、それを知った選手たちが『なんで2050年なんだ』という話になったんですよね。僕らはいま代表選手としてプレーしていて、2050年にプレーしていることはない。『じゃあ俺らは期待されてないの?』って話になるわけですよ(笑)。いまの代表は若くて勢いがある選手たちがいて、そういう発言をする選手が多い中で、自分はキャプテンとして優勝という発言をするべきだなと思ったのが一番の理由だった」

「もともと今の代表は(W杯で)ベスト16の壁というのがあって、いまの日本サッカーはそれを意識しすぎているというか、だからこそ変に意識しすぎてそれを越えられていないんじゃないかという僕の思いもあった。W杯後に思ったのはその目標設定をベスト16ではなく、ベスト4なのか、優勝なのか、変えていったほうがベスト16の壁も意識せずに変えていけるんじゃないかと思って、発言したという経緯もあった」

 もっともそうした中で思い返されるのが、選手たちが世界一やベスト4を掲げて挑みながらも、1勝もできずにグループリーグ敗退に終わった2014年ブラジルW杯の苦い記憶。過去の実績以上に高い目標を掲げることで、メディアやサポーターからこれまで以上に厳しい目線を向けられることも考えられる。この日、司会を務めた黒田俊さんからは、そうした状況における心構えに関する質問が遠藤に向けられた。

 それでも遠藤は「それでいいと思ってるんですよね」と冷静に受け止めていた。

「前回のドイツはたぶん、優勝を狙っていたと思うけど、結果的にグループリーグ敗退に終わった。でもそれがW杯というもの。たとえば日本代表も次に優勝と言いながらグループリーグで敗退する可能性もあるわけで、そこは何も気にする必要がないというか、そうなったら自分たちの実力がなかったということだけだと思う」

「ただ、日本サッカー協会として2050年にW杯優勝という目標があるのであれば、今から優勝ということを目指すべき。結果がどうであれ、もし次のW杯で予選敗退したとしてもその次のW杯の目標も優勝とすべきだと思う。今はそんな雰囲気がチーム内にあるし、もしかしたらサッカーファンの皆さんも期待しているかもしれない」

「今回、W杯を見た子どもたちはいまの日本代表がドイツ、スペインに勝ちをつけたんだと思っている。自分の息子もそうだけど、日本代表は強いと思ってるんですよ。俺が子どもの頃はブラジルとかドイツが優勝していて、ブラジル強いな、ドイツ強いなってイメージがあった。でも今はドイツに日本代表がW杯で勝った。そういう純粋な気持ちを大事にすべきだなと思うし、子どもたちがそういう期待をするのであれば、今の日本代表選手はW杯優勝を目指すべきで、そういう思いを持った子どもたちがもしかしたら2050年にW杯でプレーして優勝しているかもしれない。変にベスト16の壁という言葉とかで目標設定が下がるような雰囲気にしたくない。そういう思いもありますね」

 3年後の北中米W杯に向けてだけでなく、日本サッカーの将来ビジョンも見据えて力強く語った遠藤。日本代表新キャプテンとしての強い覚悟が示され、4時間超にもわたる濃密なイベントは幕を閉じた。

トークセッションで熱く語りかける遠藤

じゃんけん大会ではサイン入りユニフォーム&スパイクをプレゼントした


(取材・文 竹内達也)
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