beacon

【特別対談】日本を代表するGK2人による必聴のゴールキーパー論!山下杏也加×西川周作

このエントリーをはてなブックマークに追加

 2大会連続でFIFA女子ワールドカップに出場する日本女子代表(なでしこジャパン)のGK山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)と、2014年のFIFAワールドカップで日本代表に選出されたGK西川周作(浦和レッズ)。日本を代表するGK2人によるスペシャル対談が実現した。なでしこジャパンの守護神にインタビューしていると、山下が目標にしているという西川がサプライズで登場。ゴールキーパー談議に花を咲かせた。

―2人は初対面ですか?
西川「そうですね。山下さんのことは知っていましたけど」
山下「はい、そうです」

―山下選手、憧れの西川選手を目の前にして今の心境は?
山下「日本の宝じゃないですか。ナイキとゴールキーパーにとっても。そうなれるように頑張りたいですけど、やはり年齢は数字だなと思います」

―日本を代表するGKの2人ですが、お互いの印象を聞かせください。
西川「やはり日本の守護神として活躍されていますし、(三菱重工)浦和レッズレディースにはライバルの方もいると思いますけど、そういうライバルの方を押しのけてゴールマウスを守り続けているという素晴らしい印象です。僕もゴールキーパーなので、出続ける大切さや難しさ、色々なプレッシャーというのはあると思うんですけど、そのプレッシャーも感じさせないように、しっかりと出続けている。そして、しっかりとタイトルを取り、昨年は(WEリーグの)初代MVPとしてゴールキーパーの価値を高めてくれたと思います。僕も現役中にMVPというのは憧れていますし、そこは目指してやっていきたいです」
山下「ザ・笑顔。笑顔の手本です。キックの精度やシュートストップはあり得ないくらいすごいですね。めちゃくちゃ良いゴールキーパーが日本にいて、長くずっと見ていたいなと思いますし、贅沢ですけど、ゴールキーパー練習とかを間近で見てみたいなと思うほど、素晴らしい選手だと思います」

―山下選手は西川選手同様、足もとの技術、キックの精度が高いという印象を受けます。何か参考にしていますか?
山下「低くて速い弾道のパントキックをワンステップで綺麗に蹴れる。あれは海外でも見たことがない。私はアシストを目指しているので、世界と戦ったときに高すぎるパントキックだと、相手の身長には敵わない。低くて速いボールで、選手にピタッと止まるボールを供給してあげることが、自分にできる最大限のパスだと思うので、そこを目指して頑張りたいです。池田咲紀子(三菱重工浦和レッズレディース)も綺麗なキックをしていて、西川さんのような存在がいるレッズってなんか良いなと思います。私も近くで見習いたいです」

―西川選手がビルドアップなど足もとのプレーを得意だと実感し始めたのはいつ頃ですか?
西川「中学生くらいです。キック力はみんなよりあったので、自主練習でハーフウェーラインからポストを狙って蹴る練習をしていました。フォワードなどでもプレーしたので、基礎技術はそこで補えたのかなと思っています。色々とやっていったからこそ自信は自分の中にあった。試合でトライし続けるということ、ミスしてもいいんだと思いながらやっていました」

―山下選手、プレー面で西川選手に聞きたいことはありますか?
山下「ずっとトップパフォーマンスで居続けるメンタルとモチベーションはどこから来るんですか?」
西川「僕の場合は、やはり日本代表という場所が今でも自分の中のモチベーションになっていて、しばらく代表から外れていますけど、年齢という理由で外されているということだけは自分の中で嫌で、それを覆していきたい。37歳になったんですけど、ゴールキーパーは年齢を重ねるごとに脂がのってくると思っていますし、経験値も上がってくるので、そういう見返したいという思いでやっています」
山下「ACLの決勝は緊張しましたか?」
西川「緊張しました。プロ19年目ですけど、どんな試合でも緊張するんですよ。それがリーグ戦だろうが、カップ戦だろうが。公式戦だと絶対に一回は試合前に緊張に襲われて、でも、その緊張が来たときって自分としては嬉しくて、さらに集中できる環境になっているなって思いながらやっています。それをリラックスさせるルーティンみたいなものも自分の中で作って今挑んでいます。山下さんは緊張しますか?」
山下「しないんですよ。緊張という感覚が年々薄れてきていて、自信があるというか経験もあるからこそだと思うんですけど、(やっている)レベルが違うので。ACLの決勝は緊張すると思います。スタジアムも赤に染まってすごいです」
西川「多少痛いところがあっても、あのピッチに立つと痛くなくなるというか、アドレナリンもすごく出て、見られているってすごいですよね。力になりますよね」

―2人はナイキのGKグローブを使っていますが、気に入っているところを教えてください。
西川「僕は新品でも試合で使ったりするんですよ。なので、グリップ力とかはもちろんですけど、練習用、試合用って特に分けずに試合に挑めるというのは、ナイキになってからずっとそうなので、自分には合っているかなと思います」
山下「ナイキはダメージがあまりないイメージがあるので長く使えます。キーパーグローブが高くなっていく中で、長く使えるというのはやはり良いと思います」

―2人がGKとして大事にしていること、こだわっていることを教えてください。
西川「楽しんでプレーすることは今もすごく大事にしていて、練習で自分が追求したことを発表する場だと思っているので、試合に入ってしまえば、自分の自信があるものを最大限出そうと心掛けています。自分が楽しんでやれれば、チームに勝利というものをもたらすこともできますし、後ろからポジティブな風を吹き込んであげることで、みんなも良いプレーができるかもしれない。楽しむということを大事にしています」
山下「キーパーが目立つ、仕事をするときって守備をしているときなんですけど、その守備を攻撃に変えてあげるのもキーパーの役割なので、キャッチングにはこだわりがありますね。一回で終わらせることでそこから攻撃が始まるので、キャッチングは練習中も意識しています。ナイキ(のグローブ)は取りやすいです」

―プロサッカー選手や日本代表を目指す子どもたちにメッセージをお願いします。
西川「キーパーは本当に格好いいポジションなんだよというのは伝えていきたいですし、一番大事なポジションだと思うので、山下さんが言われたように、試合の流れを変えられるポジションでもあります。ゲームメーカーとしても非常に大事なポジションなので、その大切さや楽しさというのを、今の子どもたちに知ってもらえたらなと。それは自分たちがピッチの上で証明しなければいけない。そこは自分たちの役割だと思っています」
山下「去年のシーズンはMVPを受賞して、キーパーでもそういう賞を取ることができるというのは実際に証明することができました。ゴールキーパーは可能性がたくさんあるポジション。相手のフォワードのシュートを止めたときが一番楽しいと思うので、まずはそこから始めてもらえたらなと思います」

■対談動画の全編はゲキサカのYouTubeからご視聴ください

(取材・文 成田敏彬)

●女子ワールドカップ2023特集
成田敏彬
Text by 成田敏彬

TOP