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U-17日本代表が試合終盤の4発で広島ユースに逆転勝ち。U-17W杯メンバー入りへ、「これができるんだ」を示す

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U-17日本代表は0-2の後半26分、交代出場MF布施克真(日大藤沢高)が追撃ゴール。逆転劇のきっかけを作った

[8.8 Balcom BMW CUP第1節 広島ユース 2-4 U-17日本代表 広島広域公園第一球技場]

 U-17日本代表が終盤の4発で逆転勝ち! U-17日本代表、U-17ウズベキスタン代表、サンフレッチェ広島ユース、広島県高校選抜U-18の4チームが総当たりのリーグ戦で優勝を争う「HiFA 平和祈念 2023 Balcom BMW CUP 広島国際ユースサッカー」が8日、開幕した。U-17日本代表は広島ユースと対戦。0-2の後半26分から4点を奪い返し、4-2で逆転勝ちした。

 U-17日本代表は今年6月から7月にかけてタイで開催されたU17アジアカップで優勝。今年11月に行われるU-17ワールドカップ(インドネシア)への出場権を獲得している。今大会、U17アジアカップメンバーで選出されているのは、GK荒木琉偉(G大阪ユース)、MF宮川大輝(G大阪ユース)、MF山口豪太(昌平高)、FW高岡伶颯(日章学園高)の4選手のみ。世界大会へ向けた競争、新戦力発掘、U-16世代の経験に充てられている。

 その初戦、U-17日本代表は4-4-2システム。GKが荒木、右SB斉藤秀輝(大宮U18)、ゲーム主将のCB山本虎(青森山田高)、CB鈴木樟(鵬学園高)、左SB島佑成(神戸U-18)、宮川と川合徳孟(磐田U-18)のダブルボランチ、右SH菅原悠太(FC東京U-18)、左SH小竹知恩(清水ユース)、そしてFW山口太陽(FC東京U-18)、FW高岡の11人でスタートした。

 広島ユースはU17アジアカップ優勝メンバーのMF中島洋太朗(2年)やU-18日本代表候補FW中川育(3年)らが先発。前半、U-17日本代表は劣勢を強いられた。立ち上がりは山本の的確なカバーリングなどで相手の攻撃に対応。10分には鈴木樟が1対1を止めてそのまま持ち上がり、川合のスルーパスで抜け出した菅原が左足シュートを放つ。また、鈴木のロングパスから小竹が爆発的なスピードで抜け出し、ラストパスを狙った。

 だが、前半はファーストDFが全く決まらず、中途半端な守備。大半の時間帯で広島ユースにボールを握られ、MF竹山心(3年)や中島らに自由なビルドアップを許してしまう。17分には前線でボールを失うと、そこから不用意な失点。広島ユースは、中島が左ハイサイドに残る中川へロングパスを通す。立ち上がりから突破力を示していた中川は、一気にドリブルで加速。寄せの甘いDFを3人、4人と振り切り、右足シュートをゴールへ流し込んだ。

 U-17日本代表はさらに「ボクの一番嫌いな連続失点」(森山佳郎監督)。18分、自陣右サイドから後ろへ下げたスローインを狙われてボールを失うと、そのままFW井上愛簾(2年)に決められ、0-2とされた。その後もボールの失い方が悪く、また奪い切れず、相手に保持される時間の連続。終盤、菅原とのワンツーから斉藤が右足を振り抜き、攻守にスプリントを繰り返す高岡が山口とのコンビからDF背後を強襲するなどゴール前のシーンを増やすも、0-2で前半を終えた。

 ハーフタイム、U-17日本代表の森山監督は「守備も攻撃も共通認識もってやらないと、どうにもならないよ」と指摘。初招集組や復帰組が多く、それぞれが一生懸命プレーするだけに。指揮官は自ら大声を発し、声で意思疎通することを求めた。これに対し、宮川は「コミュニケーションのところでどこに守備を掛けてとか、(みんなが)馴染めていなくて、声も出ていなかった。声だけで解決できる部分がたくさんあった」。後半は特に後方からの声でファーストDFが明確に。相手右SB石原未蘭(3年)の推進力ある攻め上がりなどに押し込まれるシーンもあったが、前線の選手たちが運動量を増やしたこともあって守備から改善することに成功する。

 13分、中川との1対1を身体ごと止めた山本が倒れ込み、大事を取ってそのまま交代。同じタイミングで川合と山口も交代し、ボランチの布施克真(日大藤沢高)、左SH西原源樹(清水ユース)、そしてFW鈴木大馳(鳥栖U-18)が投入された。万能型DFの島が一時CBに入って相手の攻撃を凌ぐと、19分には菅原と小竹をCB山田海斗(神戸U-18)と右SH柚木創(流通経済大柏高)へスイッチ。2点差を追う状況で「行くしか無い」チームは宮川や鈴木が前へ出てインターセプトし、高岡が相手GKまでプレッシャーをかけてその攻撃を乱す。

 26分、布施のインターセプトから鈴木樟が縦パス。高岡が左へさばくと、西原がDF背後へ絶妙なクロスを入れる。これに走り込んだ布施が跳躍から右足ダイレクトで合わせてファインゴール。広島ユースは攻撃参加した石原のドリブルシュートなどで攻め返すが、U-17日本代表GK荒木が立ちはだかる。

 そして30分、U-17日本代表は敵陣右サイドで人数をかけてインターセプト。タッチライン際でセカンドボールを拾った斉藤がDF2人の間へパスを通す。エンドライン際で受けた鈴木大がDFとGKの間へラストパス。これをファーサイドの西原がゴールへ沈め、同点に追いついた。

 U-17日本代表は止まらない。33分、敵陣中央で柚木がFKを獲得。素早く左サイドへ展開すると、西原がゴール方向へクロスを入れる。これがニアのDFに当たってコースが変わり、そのままゴールイン。7分間の3ゴールで試合をひっくり返した。36分には斉藤、高岡と右SB江口拓真(神戸U-18)、MF揚石琉生(栃木U-18)をスイッチ。その直後には柚木が敵陣右中間でボールを失いかけながらも、エンドライン際のセカンドボールにいち早く反応し、デュエル勝負で競り勝つ。そのままゴール方向へドリブル。最後は巧みにDFを外し、左足シュートでファーサイドのネットを破った。

 この後、広島ユースMF中島のロングパスから怖さを見せていたFW井上にシュートへ持ち込まれるシーンもあったが、GK荒木が処理して2点差のまま試合終了。森山監督は「この(U-17年代の)グループとしては0-3から追いついたり、『2点差は簡単に追いつける』と共有していた」と語っていたが、U-17ワールドカップメンバー入りへのアピールを狙う選手たちは追い込まれた状況から4点を奪い返して4-2で勝利した。

 森山監督は今回招集した選手たちに対し、「失敗したとか、ミスしたとか、これができなかったとかじゃなくて、『これができるんだ』というできるものを見る」と伝えているという。前半はどこかブレーキを引いてしまっていた部分があったものの、流れを変え、貴重な成功体験。代表経験の浅い選手たちがチームの方向性を知る良い機会にもなった。

 今大会最終節には、U17アジアカップ初戦で引き分け、同じくU-17ワールドカップ出場のU-17ウズベキスタン戦も組まれている。その中で何ができるか。西原は「アジアカップ行ったメンバーよりももっとできないと選ばれないと思うので、この大会でアピールしたいと思います」と語り、宮川は「残り2試合も先制されて厳しい試合があったりするかもしれないですけれども、(今日のように)みんなと力を結束して勝ちたい」。年上の広島県高校選抜U-18戦を含めて残り2試合。選手たちは共通認識を持ちながら、それぞれが「これができるんだ」を示して勝つ。

(取材・文 吉田太郎)

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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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