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[SBSカップ]急遽参戦のU-20関東大学選抜が初優勝。U-18日本代表をPK戦で下し、3戦全勝

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U-20関東大学選抜がSBSカップを制した

[8.20 SBS杯第3節 U-18日本代表 2-2(PK3-5)U-20関東大学選抜 エコパ]

 U-18日本代表、U-18韓国代表、U-20関東大学選抜、静岡ユースの4チームが1回戦総当りのリーグ戦で優勝を争った「2023 SBSカップ国際ユースサッカー」はU-20関東大学選抜が頂点に立った。U-20関東大学選抜は20日に行われた最終節でU-18日本代表と対戦。2-2で突入したPK戦を5-3で制し、3戦全勝(2PK戦勝利)で初優勝した。

 80分間の勝利は勝点3、PK戦勝ちは勝点2、PK戦負けは勝点1がそれぞれ与えられるレギュレーション。前節まで1勝1敗で勝点3のU-18日本代表は80分間でU-20関東大学選抜に勝利すれば勝点6となり、同5のU-20関東大学選抜を逆転する。GK中村圭佑(静岡学園高)、ゲーム主将の右SB桒原陸人(明治大)、CB中光叶多(広島ユース)、CB喜多壱也(京都U-18)、左SB池田春汰(横浜FMユース)、中盤中央に大関友翔(川崎F)、尾川丈(川崎FU-18)、鈴木陽人(名古屋U-18)の3人、右SH松田悠世(桐光学園高)、左SH中川育(広島ユース)、1トップに塩貝健人(慶應義塾大)という11人で「勝点3を80分以内で取る」(船越監督)、そして逆転優勝への戦いをスタートした。

 一方のU-20関東大学選抜はGKデューフエマニエル凛太朗(流通経済大1年)、右SB池谷銀姿郎(筑波大1年)、CB桑子流空(東海大2年)、CB梅津龍之介(法政大1年)、左SB島田春人(法政大1年)、ゲーム主将の鈴木奎吾(流通経済大2年)と小川雄輝(中央大1年)のダブルボランチ、右SH高橋輝(東洋大1年)、左SH松永颯汰(流通経済大2年)、そして小池直矢(法政大1年)と高足善(明治大1年)の2トップで優勝決定戦に挑んだ。

 ボールを保持する大学選抜に対し、U-18代表は強くアプローチに行くことができていなかった。奪ったボールを丁寧に繋ぎながら前進しようとするが、強度の高い相手の守りの前にPAまで持ち込むことができない。前半はシュートゼロ。17分、19分の連続失点で2点を先取されてしまう。

 17分、大学選抜は桑子が相手右SBの背後を狙った松永へ鋭いフィードを通す。松永は対応した相手選手を切り返しでかわすと、わずかに空いたニアへ右足シュート。2試合連続の先制点を叩き出した。さらに19分、大学選抜は中盤、DFラインでボールを繋ぎ、鈴木が左から逆サイドのオープンスペースへ展開。ここから一気に仕掛けた高橋が、右足シュートを対角のゴールネットに突き刺した。

 大学選抜は初戦で静岡ユースにPK戦で辛勝。当初出場予定だったU-18パラグアイ代表の不参加を受け、大学選抜に出場の打診があったのは今月12日のことだったという。急いで翌日にチームを編成し、15日に合流。台風による大雨もあって準備不足、“ぶっつけ本番”だったことは確かだが、佐藤健監督(中央大)は不甲斐ない初戦後、選手たちに厳しい言葉をぶつけていた。

「今の大学生はプロを目指しているという意識が非常に強い選手が多いので、『プロって簡単に行けるの?』、とまず最初に言いました。1戦目、何もできない選手やチームのためにやっているというところが見えなかった選手もいた。何人か呼んで『しっかりやりなさい』と。技術が高いのに気持ちが優れなくて自分で潰れていくことはよくあるようなパターン。(高校からプロへ行けなかった選手を)大学の4年間で鍛えなければなというのがある。『しっかりとやらないと4年間何も残らないよ』と伝えました」。指揮官の檄を受け、切り替えた選手たちは続く第2節、前からの攻守でU-18韓国代表に4-1で快勝。この日も前半はU-18代表にほぼ何もさせなかった。

 大学選抜は28分にも左サイドからの攻撃で決定機。U-18代表はGK中村が前に出て止めて3点目を阻止したものの、40+1分に喜多が負傷交代を余儀なくされてしまう。U-18代表はCB尾崎凱琉(大阪桐蔭高)を投入。後半開始からは尾川と中川に代えてMF神田拓人(尚志高)とFW神田奏真(静岡学園高)をピッチへ送り出し、2トップへ変更した。

 その後半、U-18代表が流れを一変させる。船越監督がハーフタイムに指摘したことは全くボールを奪いに行けていないこと。後半、U-18代表は相手のボランチ、DF、GKにまでプレッシャーを掛けてボールを取りに行き、主導権を握り返した。1分、鈴木の左CKをファーの桒原が頭で決めて1点差。さらに5分、塩貝がドリブルでゴールエリア付近まで持ち込み、鈴木が決定的な左足シュートを放つ。そして12分には、左サイドの鈴木が相手の厳しいチェックに倒れずに粘り、PAへ持ち込む。パスを受けた大関が右足シュート。こぼれを自ら拾ってドリブルしたところで足をかけられてPKを獲得した。

 これをキッカーの塩貝が右足で狙うが、大学選抜GKデューフが右へ跳んでストップ。U-18代表は流れが切れかけたものの、前からボールを奪いに行く姿勢を続ける。大学選抜は12分にMF井野佑優(国士舘大1年)とMF櫻井稜(法政大1年)、22分にはDF畑野遼太(流通経済大1年)とFW前澤拓城(明治大1年)を投入。U-18代表は22分にMF安齋悠人(尚志高)、28分に右SB梅木怜(帝京高)を送り出す中、光る動きを見せていたのがU-18代表FW神田奏だ。

 前線で3本、4本と連続で浮き球に競り勝ってチャンスメーク。24分には神田奏のヘッドから右サイドを塩貝が抜け出し、ループシュートを放つ。これは大学選抜右SB池谷のゴールカバーに阻まれたものの、U-18代表は31分に2-2とした。GK中村のゴールキックを神田奏が頭でそらし、再び塩貝が抜け出す。大学選抜DFがタックルに行ったが、粘ってキープした塩貝が右足でゴールを破った。

 失点した大学選抜は直後にMF堤陽輝(東海大2年)とDF平川周汰(東京国際大2年)を同時投入。ここで勢いを持続できなかったU-18代表に対し、大学選抜はセカンドボールを回収し続け、相手を押し込んだ。そして、セットプレーなどから決定的なチャンス。だが、U-18代表も大関の身体を張ったクリアなどで次の1点を許さない。大学選抜は40+3分、井野の右足ミドルが左ポストを直撃。U-18代表も直後に梅木のラストパスに神田奏が反応するが合わせることができない。2-2で前後半を終了。この瞬間、U-18代表の優勝の可能性は消滅した。

 大学選抜にとっては、勝てば、続く静岡ユース対U-18韓国代表戦を待たずして優勝の決まるPK戦。第1節・静岡ユースとのPK戦で1本を止め、この試合でも後半にPKを止めているGKデューフが再び魅せる。後攻・U-18代表の2人目、梅木のシュートを右手でストップ。大学選抜は前澤、井野、畑野、池谷が決めると、最後は堤が右足シュートで左隅を破り、優勝を喜んだ。

 U-18代表は2位で大会を終了。船越監督は「2点差追いついて、『良く頑張った』というつもりは毛頭ありません。この大会に参加して悔しい思いばかりですけれども、我々の基準がどこなのか、選手が改めて分かってくれたのかなと思います。ワールドカップで通用する選手、チームになるためには何をしなければいけないのか明確になったということが成果だったかなと思います」と語った。2年後のU-20ワールドカップで輝くために、一人ひとりが自覚を持って、成長する。

 大学選抜は1、2歳年下相手の大会で優勝。大会MVPに選出された松永は「PKという形だったんですけれども、勝ちで終われたのは良い経験だった」と語り、佐藤監督は「(U-18日本代表戦は後半に)PKもありましたし、本来ならば2-3で負けていたかなと。まだまだ力不足だなと思います」とより成長することを求めていた。

 昨年のワールドカップ日本代表メンバーはMF三笘薫(現ブライトン)ら9人が大卒。佐藤監督は「みんなデンソー(カップ)とか選抜に選ばれて鍛えられて羽ばたいて行ったと思う。きょうの選手も何とか追いかけて頂いて、もっともっと強くしますので、大きく書いて頂きたいなと思います」と微笑んだ。かつて、MF遠藤航(現リバプール、11年大会)やMF堂安律(現フライブルク、15年大会)、DF板倉滉(現ボルシアMG、15年大会)らも経験している伝統のSBSカップ。大学選抜も出場した23年大会をきっかけに日本代表や世界で輝く選手が現れるか、注目だ。 
 
(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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