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[SBSカップ]1年間で変わり、無名の存在から年代別代表のエース候補へ。FW塩貝健人(慶應義塾大)にとって、目の前の壁は「まだ変わるチャンス」

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後半31分、U-18日本代表FW塩貝健人(慶應義塾大)が右足シュートを決め、2-2

[8.20 SBS杯第3節 U-18日本代表 2-2(PK3-5)U-20関東大学選抜 エコパ]

「自分の力が多分足りないというのがここに来て気づいたので、自分にベクトルを向ける良い大会になったと思います」

 U-18日本代表のエース候補が、待望の代表初ゴール。一方でこの日はPKを止められ、以前はできていたことができていない現状について口にする。FW塩貝健人(慶應義塾大)は自分自身が壁に当たっていることを明かし、まだ成長するための「チャンス」である壁を乗り越えることを誓っていた。

 U-18韓国代表とのSBSカップ初戦(17日)は前半からDF背後へ抜け出してシュートを放つシーンもあったが、枠へ飛ばすことができずに無得点。続く静岡ユース戦(18日)は7分間の出場でシュートゼロに終わっていた。

 U-19日本代表に初招集されて臨んだ第49回モーリスレベロトーナメント(6月、フランス)も無得点。塩貝は昨年度の選手権で衝撃的なプレーを見せ、日本高校選抜でも大活躍した。デュッセルドルフ国際ユース大会では5得点を決めて、得点王。國學院久我山高から今春進学した慶應義塾大では、関東大学3部リーグで得点ランキング首位の8得点をマークしている。Jクラブスカウトやメディア、サッカーファンを驚かせるようなプレーを続けてきたが、代表では結果を残せていなかった。

 代表チームでは慶大以上に技術力の高い選手たちがいる。ここでゴールやチャンスの数を増やせないのは自分の責任。この日の前半はボールを引き出すことができず、「前は結構ポストプレーもできたけれど最近、全然ダメ」。本人は試合序盤に負傷した足を言い訳にはしなかったが、なかなかプレースピードを上げられなかった。

 それでも、1トップからFW神田奏真(静岡学園高)との2トップへ移行した後半、U-20関東大学選抜の脅威に。最前線から相手GKにまでプレッシャーをかけ、神田奏のポストプレーからゴールに迫り続けた。

 そして、31分に鋭い抜け出しからゴール前でDF、GKを外して右足シュート。待望の代表初ゴールを決めたが、「2点取り返したかった。1点しか取れなかったのでダメだった」。U-18代表が逆転優勝するためには80分間での勝利がマスト。次の1点を奪えず、チームを優勝へ導けなかったことを悔しがった。

 U-18日本代表の目標は2年後のU-20ワールドカップだ。塩貝は「U-20のワールドカップに出たいというのが短期的な目標なので、その大会に出るためにはこの大会(SBSカップ)で結構アピールしなければいけなかったので、それが結構空回りしてしまった」と首を振る。

 塩貝は全国的に無名の存在から、高校3年時に飛躍し、日本高校選抜、U-19日本代表へステップアップ。特別な攻撃力に加え、高校卒業前から慶大に練習参加して守備の部分も強化してきた。また、ヘディング練習も重ねて上達。今回の活動期間中も神田奏に尋ねるなどヘディングも得点パターンの一つにしようとしている。

 一方で、「伸びてきているんですけれども、色々なことをやっていくことによって、自分の持ち味が消えているのかなと。4月とか、高校選抜の活動とか、高校の時とかもっと自分で持って、背負って、運んで、反転できたりしていた。あまり最近できていない」と自己分析する。

 そして、「プレッシャーに負けているのかなと思います」。1年前はプロになりたいと思っていなかった。だが、注目度が高まる中で心境は変化。プロにならなければ、結果を出さなければ、というプレッシャーを感じ、目の前の壁を超えられないでいる。

 それでも、塩貝は前向きだ。「こういう時期は多分あると思うので。ここで消えていくのか、もう一回化けるのかが大事だと思うので、もう一回基礎的なところに立ち返るというか、そういうところしっかりやっていけばまたチャンスがあるのかなと思います。トンネル抜ければめちゃくちゃ点を取れると思う」

 目標のU-20ワールドカップまで、時間はある。「高3の時までずっとこんな(壁に当たっているような)感じだった。自分、この1年で変わったと思う。まだ変わるチャンスがあると思うので、そこをブレずに地道にやっていければ自分の持ち味を出していけるのかなと思っている」。横浜FCユースへ昇格できず、悔しさをバネに國學院久我山で技術力向上と徹底的な肉体強化。技巧派MFから、抜群の得点力、推進力を持つストライカーへ変貌した。壁を超えた変わった経験を持つ塩貝が、再び壁を超えて世界を驚かせる。


(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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