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冨安健洋が第2次森保J初合流「前々から“ゆくゆくは僕と滉くんで”という話を…」東京世代CBコンビで歩む復活への道

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DF冨安健洋(アーセナル)

 近年は負傷に苦しむ時期を長く過ごしたDF冨安健洋(アーセナル)にとって、今回の欧州遠征は再起を期するシリーズとなる。不完全燃焼に終わったカタールW杯を経て、コンディション面も回復。「いまの状態は良いと思っていて、むしろ怪我をする前よりもやっている感覚は間違いなく良い。今はまだ100%ではないので、これからより良くしていけるキャパシティもある。サッカーだけじゃなくフィジカル面も含めてより良くなっていくと思っているので、そこの面も含めて伸ばしていけたら」。いよいよ第2次森保ジャパンを牽引する働きが期待がかかる。

 2018年9月の森保ジャパン発足とともに当時19歳でA代表に初招集された冨安は、翌19年初旬のアジア杯で全試合出場を果たし、A代表のレギュラーに本格的に定着。所属クラブもシントトロイデン、ボローニャ、アーセナルと順調にステップアップを遂げ、世界トップレベルのディフェンダーへと成長してきた。ところが21年の東京五輪ごろから目に見えて負傷を押してプレーする機会が増え、22年には代表活動からの離脱や招集辞退も頻発。昨季はアーセナルの活動でも負傷離脱が続き、年末のカタールW杯も無理しながらの出場にとどまるなど、不完全燃焼のまま苦しいシーズンを過ごしていた。

 ベストなコンディションでプレーすることがなかなかできていない一方で、世界最高峰のプレミアリーグで生き残っていくには高いパフォーマンス水準を要求される。そこには大きな葛藤もあったという。

「できる限りメディアの前では感情を出さないようにしていた部分はあるけど、難しい1年でしたし、W杯もアーセナルのほうも含めて、今までのサッカー人生で一番タフな1年であったのは間違いない。そこからどう戻ってくるかという意味では怪我もそうだし、サッカーの面もそう。(プレミアリーグは)かなり要求が高いので、自信を失う時期もあったし、正直いろんなことも考えました」(冨安)

 それでも徐々にコンディション面の向上が見られ、冨安は今季も引き続きアーセナルでプレーすることを決断。いまは迷いを断ち切ってプレーしていく心持ちになれているようだ。

「もう今シーズンはアーセナルでやることは決まったので。もう市場も……まあサウジはまだ開いてますけど(笑)」と冗談も交えながら報道陣を笑わせた冨安は「しっかりとその要求が高い中で、要求に応えられるようにやるだけかなと思っています」ときっぱりと決意を口にした。

 そんな冨安にとって、今回の欧州遠征はカタールW杯以来となる代表活動。3月シリーズは当初、招集メンバー入りしていたものの、直前のリーグ戦で右膝に重傷を負ったため招集を辞退し、6月シリーズはリハビリ中で招集リスト外だったため、第2次森保ジャパンのトレーニングは初参加という形となった。

「W杯後初の活動になるので、サッカーも自分のチームでやっているものと変わるのでそこの整理もしつつ、あとは個人的に僕の中での整理というか、何ができるのかというところの整理も含め、練習からトライしていきたいと思っている」(冨安)

 カタールW杯でドイツやスペインにボールを握られ続け、コスタリカやクロアチアを崩し切れなかった反省から、新たにボール保持志向へのトライが続いている第2次森保ジャパン。W杯期間中から「90分全てではないかもしれないけど、自分たちを過小評価しすぎずに戦うステップに進んでもいいのかなと思っている」と強調し続けていた冨安の復帰により、そのトライが一歩前に進むことが期待できる。

 その初陣となるのが9日の国際親善試合ドイツ戦だ。

 冨安はW杯以来の再戦に向けて「W杯では勝ったけど、よりリアリスティックになったというか、主導的でないやり方での勝利だったので、(次は)トライすべき場だと思うし、主導権を握りながらゲームを進めることができればいいなと思っている」と堂々と主張。「今回はいつもより準備期間が長いので、よりすり合わせができると思うし、最大限の準備をして、しっかり勝ちにもこだわって、また主導権を握って勝つことができればいいものになると思う」と高い基準を掲げながら意気込みを語った。

 主導権を持って戦うスタイルを目指すにあたっては、同じCBに板倉滉(ボルシアMG)がいることも頼もしく感じているようだ。前日の取材対応では板倉が「僕が怪我したり、トミが怪我していたりで一緒にできることが少なかったので非常に楽しみにしている」と同世代コンビの再会に目を輝かせていたが、冨安もさらに楽しみな様子で展望を語った。

「ずっと前々から『ゆくゆくは僕と滉くんで組んでやんないといけない』という話をお互いしていたし、その中でなかなか僕の怪我で組むタイミングがなかったのであれだけど、いい意味で遠慮せず、高いリクエストをお互いにし合いながらできると思っている。お互いに妥協せず、お互いに要求し合ってやることができれば、もう一段階も二段階も上のレベルにいける。それはディフェンスだけじゃなくチーム全体が上がれると思う。お互いに遠慮せずに引き出し合って、やっていけたらいいなと思います」(冨安)

 カタールW杯のクロアチア戦後には「何をやってるんだろうという気持ちが強いぶん、先を見られない。どうしたらいいんだろうという感じ」と沈痛な様子で口にしていた冨安だったが、この日語られた具体的な展望からはあの日の面影は見られず。チーム全体で優勝を目標に掲げ始めた3年後の北中米W杯に向けて、頼れる男の復活に期待ができそうだ。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

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