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移籍期間と異国生活の苦しみを経て、セリエA初弾で吹っ切れた鎌田大地「あの試合はかなり強い覚悟で臨んでいた」

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日本代表MF鎌田大地(ラツィオ)

 6年間にわたって在籍したドイツ・フランクフルトを離れ、イタリアに活躍の場を移した日本代表MF鎌田大地(ラツィオ)が5日のトレーニング後、報道陣の取材に応じ、「生活も違うし、サッカーも違うし、言語も違うし、最初は大変でした」と心境を明かした。

 鎌田は今夏、欧州挑戦をスタートしたフランクフルトとの契約期間が満了し、フリーの状態で移籍先を模索。ミランなどのビッグクラブが獲得に乗り出していたと報じられていたが、なかなか移籍先が決まらず、8月上旬になってようやくラツィオへの加入が発表された。

 鎌田はこの日、移籍の候補先は明言しなかったが、「2チームに絞っていたのでどっちかには行けるだろうと思っていて、両方が難しくなった時が一番(メンタル的に)難しかった」と当時の心境を吐露。「いろいろありましたけど、まあとりあえず決まって今はよかったなという感じ」と苦労の跡を口にした。

 またラツィオ移籍後もMFセルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチの後釜としてインサイドハーフに入ったが、昨季セリエAの2位だったチームはまさかの2連敗を喫してしまう。「ブランクが長かったので、チームを新しくすると難しくもなるだろうなと思っていたけどやっぱり難しかった。個人的にというよりもチームとしても難しい時期を過ごしてたので、自分一人でどうにかできるタイプじゃないし、チームとしても良くなかったというのが僕にとっても難しい部分だった」。もがきながらシーズン序盤を戦っていたようだ。

 それでも鎌田は代表合流直前、自らの活躍で活路を切り拓いた。

 今月2日に行われたセリエA第3節のナポリ戦、鎌田は1-1で迎えた後半7分に左サイドからの折り返しを受けると、細かく持ち出して左足一閃。地を這うような強烈なシュートを突き刺し、昨季王者を破って今季初白星に導く決勝点を記録した。

「あの試合は自分自身もかなり強い覚悟で臨んでいたし、結果が欲しいというのもあったので、本当にこの試合はすごく大事だなと思っていた中で結果がついてきたので良かった」。イタリア現地では評価も高まり、沈滞ムードから吹っ切れる機会になったようだ。

 そんな鎌田は良い流れに乗ったまま日本代表に合流し、9日のドイツ戦でも活躍が期待されている。

 鎌田自身はカタールW杯グループリーグ初戦の前回対戦にもフル出場していたが、自身のパフォーマンスには納得がいっていなかった様子。「もちろんチームが勝ったことが一番だったし、ああいう大きな大会はそれが一番なので、そこに関しては良かったけど、個人的にはもっとできてもおかしくなかったと思うし、できないとダメだったと思う」。今回のドイツ戦では「求められているものは大きかったので、また自分の価値というのを表現できたらと思う」と本領発揮に意欲を見せる。

 日本代表が6月シリーズと同様に4-3-3のシステムを継続する場合、鎌田が担うのはインサイドハーフ。これまで取材の場で何度も“本職”だと表現し続け、ようやくラツィオで任されているのと同じポジションだ。

「自分がやりたいフォーメーションで、自分がやりたいポジションというのをずっと昔から言っていて、ようやくそこのポジションでいまプレーできている。今までだったらトップ下のイメージがすごい強くて、ボランチできないだとか、いろんなイメージを持たれていたけど、今は普通にそれくらいの監督(経験豊富なマウリツィオ・サッリ監督)からしっかりそこでできる評価を得られていると思うし、そのポジションを任されている。選手としては自分自身今まで発言していた6番、8番、10番できるというのを今は表現できる場所があるので、どこでもできるというのは示していけたらいいなと思う」

 さらに鎌田にとっては、自身が欧州生活のスタートを切ったドイツでのアウェーゲームという意味でも縁深い一戦となる。

 カタールW杯でグループリーグ敗退に終わったドイツ代表は、今年に入っても1勝1分3敗と大苦戦中。「彼らはここ最近、納得できるような結果が得られていない中、彼らも間違いなく日本戦に全力で来ると思うのでお互い全力でやれると思う」。そう意気込む鎌田はトライが続くボール保持志向にも「もちろんポゼッションの部分はチームとして増やそうと求めてやってきたけど、何を言っても一番はやっぱり結果」ときっぱり。「結果が出れば終わってから良くなかったことも言えると思うので、いい結果がついてくるといい」と必勝を誓った。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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