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パリ五輪一次予選・初戦では最後方から好パス連発、U-22日本代表DF西尾の“対アジア”ビルドアップ法

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DF西尾隆矢

 パリオリンピック出場を目指すU-22日本代表は、一次予選も兼ねるU23アジア杯予選の最終戦・バーレーン戦を12日に控える。10日の練習後、第2戦は出場がなかったDF西尾隆矢(C大阪)は「初戦から2日後くらいにはフルの状態。いつ出てもいいように準備はしていたので、いまはすごくコンディションはいい」と意気込んだ。

 初戦・パキスタン戦は6-0で、第2戦・パレスチナ戦は1-0で連勝を果たした日本。U23アジア杯出場が決まるグループ首位に立つものの、最終戦・バーレーン戦で敗れると2位になる場合もある。11組で行われるグループリーグで2位となると、各組2位の成績上位4チームしか本大会に行くことができないため、他力での突破決定を待つことになってしまう。連勝したとはいえ、最後まで気が抜けない戦いが続く。

 強国としての日本を迎え撃つアジアに対し、冷静に2つの白星を手にした。西尾は試合内容も含め、一定の手応えを得る。「自分たちがやりたいことを表現するということが、1試合目も2試合目もできた。2試合目は少し難しい展開になったところもあるが、自分たちの技術をもっと磨いて表現していきたい」。引き分け以上で首位は確定するが、「勝つことだけを考えているのはみんな一緒。チーム一丸で(大岩剛)監督が提示するやりたいことを表現して、勝ち点3をしっかり取って予選突破を掴みたい」と勝利のみを考えている。

 対アジアの鍵のひとつは、最終ラインからのビルドアップだ。固いブロックを敷く相手に対し、CBはボールを持つ時間が大幅に増える。しかし保持の時間が長すぎたり、パスも単調になると、それだけ相手に守りやすくさせてしまう。西尾は初戦・パキスタン戦で後方から短いパスをつなぐだけでなく、大きくサイドチェンジをしたり、最前線にロングパスを送るなどテンポを変えた。4-0で迎えた後半14分にはMF松木玖生の動き出しを見逃さず、精度の高いロングパスを配球。松木は敵陣PA内でファウルを誘発し、PK奪取に成功していた。

「CBにすごく時間があるので、ゆっくりボールを運ぶよりできるだけテンポを良くしたい。相手のスローペースに飲まれてしまうと思ったので、出し入れしながらスペースがあれば少しドリブルして、相手が出てくれば確実に(相手選手間のスペースが)開く。そこを突くことを意識していたら、前の選手がすごくいいように動いてくれた。そこがハマるとビルドアップも楽にできる」(西尾)

 自身がもたらした好パスにも「それは前の選手に感謝したい」と謙虚だ。「ものすごくレベルの高い選手がたくさん集まっている。いい刺激にもなりますし、ここで切磋琢磨すれば、サッカーキャリアとしての経験にもすごくいいものになる」。22年1月にはA代表の合宿に招集されたが、その後は苦しい時間が続く。今季はJ1開幕から2試合フル出場をするが、その後は先発出場はない。大岩監督体制のチームでも定位置争い真っただ中。生き残りに懸ける思いも強い。

 まずは目の前の戦いを経て、A代表も再び目指す。「ここで生き残れる力があれば、おのずとA代表にもチャンスが来る。まずは自分の立ち位置を自覚して、自分にベクトルを向けながら100%を出したい」。大岩監督体制では“A代表経由パリ五輪行き”が掲げられるが、高みを目指すルートに正解はない。西尾は自分の道のりを見極めて一歩ずつ進むつもりだ。

(取材・文 石川祐介)

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石川祐介
Text by 石川祐介

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