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鮮烈A代表デビューの実感よりも…DF毎熊晟矢「抑えられる自信があったぶん余計に悔しい」

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DF毎熊晟矢(C大阪)

[9.12 キリンチャレンジ杯 日本 4-2 トルコ ゲンク]

 前半45分間のみの出場ではあったが、確かなインパクトを残す鮮烈なA代表デビューとなった。

 日本代表初招集のDF毎熊晟矢(C大阪)はキリンチャレンジ杯・トルコ戦に右サイドバックで先発出場。前でプレーするMF久保建英とMF堂安律の動きに合わせて的確なポジションを取り続け、自在なサイド攻撃を支えると、前半36分には果敢なボール奪取からFW中村敬斗のゴールをお膳立て。さっそく初アシストまで記録した。

 ところが試合後、取材エリアに姿を見せた毎熊は開口一番に後悔の弁を述べた。

「交代して一番にベンチで思っていたのは、失点シーンのFKが本当に悔しくて。それのことばっかり考えていました」

 悔いが残ったのは前半40分過ぎの1失点目。自陣で守備対応に回った毎熊はMFイルファン・ジャン・カフベジに身体を寄せに行ったが入れ替わられ、後ろから倒してイエローカードを受けると、そのファウルによって相手にFKのチャンスを与え、これが失点に結びついていた。

 FKの場面でもファーサイドでマークしていたDFメルト・ミュルドゥルにボールを折り返され、失点に関わった。その場面にも「あそこは外に出さないといけなかった」と課題を認識していた。

 しかし、それ以上に悔しかったのはファウルを与え、イエローカードを出された場面だった。「個人的には抑えられる自信があったぶん余計に悔しいです」。普段のJリーグであれば寄せの速さは毎熊の持ち味でもあり、自信を持って対応できるはずのデュエルだったからだ。国際舞台、相手が一枚上だった。

「Jだとまず最初に当たったところで勝てるので、ここじゃないと体験できないなというのはコーチとも話しました。そこも踏まえて今度どうやって抑えていくか。また帰って、外国籍選手もたくさんいるので練習から取り組んでいきたいです」

 ワンプレーの恐ろしさをあらためて刻み込まれたA代表デビュー戦。しかし、それだけで残したインパクトが消えるわけでは決してない。

 失点前の前半36分、毎熊は相手の左サイドバックに高い位置でプレッシャーをかけると、そのままノーファウルでボールを奪取。スピードを生かして縦へと独走し、最後はペナルティエリア内の様子を冷静に見つめる余裕も見せながらクロスを送り、中村のゴールをアシストした。

「コーチからも寄せるところはJリーグでも評価していると言われていたし、そこプラス攻撃の部分でアクセントをつけるという部分は評価されているのかなと感じる」。その言葉どおりのプレーで刻んだ初アシスト。「アシストはしたけど、もっとチャンスを作りたいというのがあった」とも口にしていたが、数字で結果を残せたのはポジティブだ。

 また毎熊が今後も代表に定着していくにあたっては、堂安や久保といった世界トップレベルの舞台でプレーする常連組と好連係を見せたのも前向きに働きそうだ。

 毎熊にとって2人は同世代でトップを走ってきた選手。「律もタケも自分は見てきた選手なので、今日はトップ下がタケだったけど、入れ替わってもプレーできるな、プレーしてるなというのは前々から思っていたところ。特に2人の動きというのは良く見るようにしていた」。共にプレーした経験はなくても、これまで見てきた経験がコンビネーションを支えていたようだ。

 少なからずインパクトを残し、大きな悔しさも味わったA代表デビュー戦。今後の糧にするには価値の大きな45分間となった。

「まず一歩踏み出せたというのは、個人的にも大きいことだけど、あのファウルでカードをもらって、それが理由かは分からないけど交代してしまった。せっかくチャンスを与えていただいた中で自分でプレータイムを縮めてしまったのでそこは反省しつつ、また帰ってアピールして、またこういう場に呼ばれるようにやっていかないといけないと思う」

 試合の経験に加えて、欧州の地で日々レベルの高いチームメートとしのぎを削った経験も得難いものだった。

「紅白戦をしていても、例えばJリーグだとスカウティングで『この選手に気をつけよう』みたいな形で一人か二人を挙げると思うんですけど、それが全員というか。全員に気をつけないといけないという感じ。Jリーグではちょっとした間があっても抑えられる部分があるけど、あっという間に距離を空けてしまってやられてしまう。常に集中しないといけないという、ちょっとヒリついた感じが好きでした」

 その経験は次へのモチベーションとなった。「本当にもう練習から刺激的な日々が送れた。本当にレベルが高い中でやれるのが本当に楽しかったし、戻って来たいという思いが強くある。そのためにはまたチームでやるしかない。もっとやってやろうという思いがある」。国際Aマッチは10月、11月にも控えており、その先にはアジアカップ。毎熊はさらに強くなって帰ってくる。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

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