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“毎熊ルート”を追うU-22日本代表のC大阪内定DF奥田勇斗、異なるポジションで魅せた“生き残り”メンタリティ

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2試合連続先発のDF奥田勇斗

[9.25 アジア大会GL第2節 U-22日本1-0パレスチナ 杭州]

 飄々としたプレーぶりで左サイドから自在に中へも入りつつ、攻守両面で安定した仕事ぶり。セレッソ大阪加入内定のDF奥田勇斗(桃山学院大)は「緊張とかはなかった」と語る通り、U-22日本代表の一員として臨んだアジア大会で堂々たるプレーぶりを見せている。

 2試合連続で左SBとして先発出場しているが、「けが人が出たときにちょっとやった程度」であって本職ではない。第1戦は守備時の体の向きの作り方で「右でやっているときのクセが出てしまった」というミスもあったものの、第2戦ではこの点もしっかり修正。順応性の高さも示した。

 代表に来て所属チームでやっているポジションと異なる位置を任されたときにネガティブな反応をしてしまう選手も少なくないが、奥田は「良いモチベーションの持ち方をできている。右と左の両方ができるのは強みになる」と前向きに取り組んでいる。

 かつて北京五輪代表だった長友佑都が、所属の明治大と異なる役割を任された代表チームにおいて「むしろ色々できるところを見せられれば生き残りやすくなる」とポジティブに取り組んで監督の信頼を勝ち取っていったように、こうした感覚を持てるかどうかは「生き残り」に向けた一つの分岐点になりやすい。

 ボールを持つ状況になれば右利きの左SBのメリットを自然と活かしており、大岩剛監督のチーム戦術で不可欠となる、SBが中に入っていくプレーでも存在感を発揮している。G大阪JY、ユース育ちらしいボールを持つことをまったく怖がらないスタイルは、チームの攻撃的な狙いと合致してもいる。「戦術的な部分での指示と自分の考えはこうという部分をうまくマッチさせながらやっている」と言うように、自分のアイディアも出しながら役割をしっかり消化してもいる。

 昨年、奥田に「パリ五輪代表を意識しないのか?」と聞いたときには遠慮や謙遜の言葉が出てきた。当時は代表歴もなく、この代表は遠い存在だったのだろうが、当時とは明らかに雰囲気も違う。

「セレッソに内定して(特別指定選手として)ルヴァン杯にも出て、(今年6月のU-22日本代表)欧州遠征にも呼んでもらえて、一つ一つ掴めているので、今は五輪を目指す気持ちがあって、そのためにもこの大会が大事だと思っている」

 もちろん、本人が「もっと練習しないといけない」と苦笑いを浮かべたミドルシュートを浮かしてしまった場面が象徴するように、精度の部分ではまだまだ課題も残る。ただ、可能性を感じさせるプレーぶりなのも確かだろう。

 所属の桃山学院大、そして加入先のC大阪からDF毎熊晟矢(C大阪)のA代表選手も誕生している。攻守両面でさらなるレベルアップを図りつつ、偉大な先輩の背中を追い掛けていく。

(取材・文 川端暁彦)

●第19回アジア大会特集ページ
川端暁彦
Text by 川端暁彦

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