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被シュート1完封にビルドアップで相手を操った冨安健洋「個人的にも今後につながる試合だった」

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DF冨安健洋(アーセナル)

[10.17 キリンチャレンジ杯 日本 2-0 チュニジア ノエスタ]

 チュニジアが5-4-1で守備を固めてきた中、日本代表は攻め急ぎすぎることなく、リスクを避けすぎることもなく、したたかな試合運びで勝ち切った。そのゲームコントロールを担ったのは最終ラインのDF冨安健洋(アーセナル)。被シュート1本にとどめた守備も見事だったが、攻撃のリズムを整える働きでも異彩を放っていた。

 昨年6月のキリンカップ決勝で0-3の大敗を喫したチュニジアとの一戦。堅守からのカウンターが相手の持ち味であることははっきりしていたが、この日の日本代表はほとんどその持ち味を発揮させることはなかった。

 大きな鍵となったのはビルドアップの安定感だ。

 この日のチュニジアはあえて冨安とDF板倉滉のセンターバック2枚にはハイプレスをかけず、中盤までボールが入ったところを狙っていた中、主に配球起点を担った冨安は身体の向きや視線も交えて駆け引きを敢行。中盤の奥で目を光らせている相手選手をも動かしながらパスコースを見定め、冷静に攻めどころを模索していた。

 そうした振る舞いが功を奏し、冨安がボールを持つ間にトップ下のMF久保建英やボランチのMF守田英正がポジションを動かし、相手を崩しに行く攻撃の体制を構築。テンポの良いパスワークができれば、自然とアタッキングサードに侵入できるという状況ができあがっていた。またその状況までは至らなくても、相手のマーカーから離れたMF伊東純也やDF菅原由勢が1対1で勝負を仕掛けられるというシチュエーションも何度となく作っていた。

 こうした冨安の試みは普段からアーセナルで意識していることだ。15日の取材対応では、自身がアーセナルから日本代表に還元できるポイントについて「チームの時間をコントロールしていくのがCBの役目だなと思っている。時間をコントロールするところを学んでいるし、いまもトライしているところ」と話していた。

 アーセナルでCBを担うウィリアン・サリバ、ガブリエル・マガリャンイスとの比較では「やっていくうちに少しずつ良くはなっていると思うけど、サリバやマガリャンイスに比べるとまだまだなので、そこも見て学びながら、代表でまたそれも還元できればいいなと思っている」と課題を口にしていたが、この日の振る舞いは、まさに「時間のコントロール」が効いていたように思われた。

 この日の試合後、冨安は「相手が来たところのスペースが空くので、相手に来させて(空いたスペースを)使ってということができればベスト。でも今日はあまり来ていなかったので、僕が持ち過ぎてしまったところもあった」と反省点を口にした。それでも「僕自身も成長途中。アーセナルで初めてそういうところを学んでいる最中だし、今までと違った種類の相手とやることができて、個人的にも今後につながる試合だったと思う」と手応えも語っていた。

 またチーム全体のゲームコントロールについても「じれずにやれたかなと思う。前半はなかなかチャンスが作れず、点が取れない感じがあったけど、じれずにやって前半に1点取れたので、収穫がある試合だったと思う」と胸を張った。「最後のほうにチャンスが何回もあったので、そこが仕留められるようになれば試合を殺せる。3-0、4-0となれば相手をメンタル的に折ることができるので、そういったチームになれれば良いかなと思う」と伸び代に目を向けることも忘れなかったが、良い歩みはできているようだ。

 こうした冨安のトライは日本代表がより強くなっていくため、あるいはより強くなった先に相手からの警戒を受ける場面で、さらに大きな力になりそうだ。11月に開幕する北中米W杯予選、来年1〜2月に控えるアジア杯ではそうしたシチュエーションも想定済み。「固められる展開は多くなるし、そういう意味では良いテストマッチになったと思う」(冨安)。予選前最後の親善試合は冨安にとっても、チームにとっても収穫の大きな一戦となった。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

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