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熾烈なポジション争いに苦笑いの久保建英「一昔前の日本代表がうらやましいです」伊東純也と共存アピール

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伊東のゴールをアシストしたMF久保建英(ソシエダ)

[10.17 キリンチャレンジ杯 日本 2-0 チュニジア ノエスタ]

 日本代表MF久保建英(ソシエダ)はトップ下で先発出場し、2ゴールに絡む働きで存在感を放った。本職の右サイドハーフにはMF伊東純也(スタッド・ランス)が君臨する中、共存できるところを示すアシストも記録。試合後、久保は「今日のプレーならトップ下のほうがいいと思う」と代表でのポジション争いに展望も口にした。

 13日のカナダ戦で出場機会のなかった久保はチュニジア戦で10月シリーズ初出場。4-2-3-1のトップ下で先発した。序盤こそ中央で攻撃に関わろうとしていたが、次第に右に流れるような場面が増え、その後は低い位置でビルドアップに関わったり、左サイドに顔を出したりと、縦横無尽に動き回ってボールに関わっていた。

「両サイドには特徴を持った選手がいたので、むやみやたらにサイドに張りたくはなかったけど、“うまくいっている感じでうまくいっていない”という感じがあったので。ちょっと旗手選手が中に落ち気味だったのと、伊東選手が張ってたのでちょっと右に落ちようかなと」。

 なかなかフィニッシュに至らない前半20分過ぎには「ちょっと落ち過ぎたと思った」というが、徐々に相手のマークが散ったことで自身が中で受けられる機会も増え、手応えを得ながら時間を過ごしていたという。

 その後は着実にゴールに絡んだ。前半43分、久保はMF守田英正からのパスを左寄りで受け、相手を背負いながらボールを収めて急加速。「来るなと分かっていたので、逆に身体を預けてという感じ」。そんなイメージで攻撃を前進させると、そこからMF旗手怜央に預け、FW古橋亨梧の先制ゴールにつなげた。

 さらに後半24分には、左サイドでFW浅野拓磨(ボーフム)からのパスに反応し、最終ライン裏に抜け出すと、マイナス方向へのクロスでMF伊東純也のゴールをアシスト。「基本的に彼はすごくスピードがあるし、僕もウイングで何をしたいかなというのは分かっている」。まさに久保がソシエダで、ウインガーとしてフィニッシャー役を担っている時のような攻撃パターンから追加点を導いた。

 そうして迎えた後半37分、慎重に調整を続けている古傷の左ハムストリングに張りを覚えたため、名波浩コーチに自ら交代を申し出て役目は終わり。2本の直接FKをはじめゴール前でのシュートシーンも複数あったため、「点取れたのでそこはちょっと悔しい」と振り返りつつも、「2点とも絡めたのはすごいポジティブかなと思う」と一定の手応えを得る試合となったようだ。

 9月シリーズで主力メンバーが起用されたドイツ戦(○4-1)はベンチスタートという立場に終わり、途中出場で2アシストを記録した後にも「100%僕は出ると思っていたので、正直がっかりした」と率直な思いを明かしていた久保。だが、今回はMF鎌田大地がコンディション不良で不在の中、トップ下のポジションで主力組の先発機会を掴み、右サイドを争う伊東との共存にも期待を示したと言える。

 ラ・リーガで得点ランキング2位タイの実績を残しながらもポジションは安泰ではない。そんな森保ジャパンのレギュラー争いには苦笑いも浮かべる。

「厳しいですよね。羨ましいです、一昔前の日本代表が。良いメンバーはいたけど、さすがに今の2列目はあんまり見ない。なんて言うんでしょうね。すごいビッグネームがいるわけじゃないけど、実力が確かな選手ばかりなので、一番厳しいですね」

 それでも今回のパフォーマンスを経て「(代表での序列も)ちょっとは上がったんじゃないですか」と期待を高めた様子。「来ていない選手もいるし、ちょっと上がったんじゃないかというのを次回の活動で期待して、どうなるか見てみようかなと思う」。未来の出来事を語る際に欧州でよく使われる言い回しを交えつつ、先発定着に意欲を見せた。

 いまは右サイドで伊東が圧倒的な存在感を放ち続けていることもあり、トップ下での定位置獲得に狙いを定めている。

「今日のプレーならトップ下のほうがいいと思う。僕がトップ下にいて、右に伊東選手がいるほうが相手にしたら脅威なのかなと。右で勝負したい気持ちもなくはないけど、もったいないかなと。結果に出ているけど、中のほうが僕的にも日本のためになるのかなと思う」。所属クラブとのポジションの違いにも「チームスポーツなので、選手個人はチームのため、代表のために折り合いをつけていきたい」と前向きだ。

 さらに久保はチームの仕上がり状態にも手応えを口にした。

 チュニジア戦の結果については「前の試合でずっと4点取っていたので、いろんなTwitterのアカウントに取り上げられていたりとかしたので、あと2点は欲しかった」と冗談めかしつつも、「相手が正直強かったので。韓国には0-4でやられていたけど、実力差以上の結果だったと思うので、そういう意味でいい試合をしたかなと思う」と前向きに振り返った。

 またカナダ、チュニジアという昨年敗れた相手に連勝したという結果にも「総合したら6-1。非常にいいと思う」とポジティブ。「『このレベルの相手なら強化にならない』とか言う人もいるどこかにいるでしょうし、少なくとも1年前は苦戦していた相手にこうやって2試合とも結果を残せたのは、今の代表の1年間での成長を出せていると思う」。11月から始まる北中米W杯アジア予選に向け、自信を深める一戦ともなったようだ。

 もっとも久保の目線はすでに前を向いている。この代表シリーズを終えた後、久保には中3日でマジョルカとのホームゲーム、さらに中3日でベンフィカとのUEFAチャンピオンズリーグ、その後も中4日でラージョとのアウェーゲームと厳しい連戦が待っている。

「キツイですね。いったん飛行機で休んで、一応睡眠薬をもらったので、スパッと寝られればいいかなと。次の試合も土曜日の14時で日本の皆さんからしたら試合が見られていい時間帯かもしれないけど、僕からしたらキツイので(苦笑)」

 そうコンディション調整の厳しさを口にした久保は「CLでも思った以上の好発進ができて、逆に負けられない戦いになっている。落とせない戦いが続くし、リーグでも上に引き離されないように負けられない戦いが続くので、コンディション面とどう折り合いをつけていくか。栄養やいろんなところに気を配りながら栄養などいろんなところに気を遣っていければと思います」とコンディション管理に目を向けつつ、スペインへの帰国の途についた。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

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