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異例のGK途中交代で父に続くA代表デビュー! 前川黛也「ノータッチだったけど…」大声で全うした責務

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A代表デビューのGK前川黛也(神戸)

[11.16 W杯2次予選第1節 日本 5-0 ミャンマー パナスタ]

 初招集から2年半越しの日本代表デビューは、珍しいシチュエーションで訪れた。4-0で迎えた後半36分、森保一監督はここまで無失点だったGK大迫敬介に代わってGK前川黛也(神戸)を投入。アクシデントではない形でGKが代わるのは異例だが、指揮官は自信を持って送り出していた。

 試合後、森保監督は記者会見で起用に踏み切った理由を明かした。

「前川はこれまでも招集させていただいていたが、出場のチャンスを与えてあげられなかった中、トレーニングでも非常にいいパフォーマンスを見せてくれていたし、どこかでチャンスをあげることができればと思っていた。選手としてはスタートから出ることを一番望んでいると思うが、W杯アジア予選の緊張感がある中、短い時間だけど試合に出てもらうことが本人がこれまで見せてくれたプレーに対する評価につながればいいと思った」

「チームとしても無失点で勝ち切って行きたいなか、プレゼントで出場資格を与えるつもりはなく、無失点でチームに貢献してくれるというプレーを練習で見させてもらったのが非常に大きかった。所属チームで、Jリーグで優勝を目指して戦っているチームの守護神としてしっかり結果を出しているので、この代表の舞台でプレーする権利があると思い、今日の出場に至った」

 前川によると、試合前には起用の構想を告げられておらず、ウォーミングアップ中の呼び出しで出場を知った。それでもユニフォームに着替えた守護神に動揺はなかった。「ああいう状況こそ事故があるので、油断できないところだと思う。しっかり僕から声をかけ続けることが大事だなと思っていた」。ピッチに立った時点から大声でのコーチングに尽力。一方的な攻勢の中でリスクマネジメントに務める守備陣を後方から支えた。

 結果的に守備機会はなく、ようやくボールに触れたのはタイムアップの笛が鳴った直後、相手のクリアが流れてきてからのことだった。約10分間、ボールタッチなしでのA代表デビュー。それでも前川は「代表で日の丸を背負ってピッチに立てたことは素直に嬉しい。ノータッチではあったけど、触らないところでも貢献できることはたくさんある。無失点で終えられるように努めた」と振り返り、「欲を言えばキーパーがシュートを止めるというところでの貢献をしたいのはもちろんだけど、触らなくても声を出し続けることであったり、難しい試合ではあったのでどんな形でも勝利に貢献することが大事」と責務を全うしたことを誇った。

 今回の出場により、前川は水沼貴史氏・水沼宏太(横浜FM)以来、史上2組目となる親子でのA代表キャップを記録した。父の和也さんは同じGKで17試合に出場。黛也は「ピッチに立って重圧を感じたし、その中で父親は何試合もプレーしてきたことを考えると、すごいことだなと肌で感じた」とあらためて父の偉大さを口にした。

 前川自身は2021年3月の初招集で2試合に出場できず、10月シリーズは試合前に指の負傷で離脱を強いられていた中、2年越しのA代表デビューとなった。「呼ばれても出られなかったり、離脱してしまったことはあったけど、それも僕の実力。でも代表を目指すこと、代表で試合に出ることを目指し続けてきた結果、ああやってピッチに立てた。そこは自信を持って自分を誇らしく思う」。そう感慨を述べながらも「これからもそれに満足せず、もっともっと貢献できるように頑張りたい」とさらなる活躍を誓った。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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