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2次予選にも注目願った久保建英「W杯ありきの日本代表じゃないので」

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日本代表MF久保建英(ソシエダ)

 日本代表MF久保建英(ソシエダ)にとって、“格下”と目される相手との戦いが続く北中米W杯アジア2次予選は、2年半後の本大会に向けた単なる通過点ではないようだ。

 トップ下での先発が見込まれる21日のシリア戦は、自身のW杯デビューからちょうど1年という節目の日。そんな一戦を2日後に控えた19日、サウジアラビア・ジッダでの練習後に報道陣の取材に応じた久保はW杯にまつわる熱いビジョンを口にした。

「これはW杯が始まる前にも言ったと思うけど、W杯が全てじゃない。まずは2次予選に集中したい。もっと日常から日本代表に注目してほしいなと。W杯ありきの日本代表じゃないので」

 前回2次予選での46得点2失点という戦績が示しているとおり、日本にとってW杯2次予選の位置付けは難しい。初戦のミャンマーは日本がリードした状態でも守りを固め続け、日本代表の選手からも次々に戸惑いの声が上がっているが、いわゆる「相手がリスペクトしてくる」という状況さえも超えたポジションに立っていると言える。

 その上、北中米W杯からは出場国が32から48に増え、アジアの出場枠も4.5から8.5にほぼ倍増。アジア予選の価値自体に疑問を投げかける声も少なくない。シリア戦は日本国内でのテレビ放送が決まっておらず、直接的な原因はシリア協会が提示する放映権料の問題だとされているものの、長い目で見ればアジア予選の価値を反映したものでもあるだろう。

 そうした中、久保は目の前の大会の価値にかかわらず、日本代表が試合をするという“日常”に価値を見出そうとしている。

「こういう2次予選だったり、親善試合でも、もっと注目してもらえるような代表、そういう(W杯に向けた戦いという)枕詞を抜きにしても、実力だけで注目してもらえるような代表に、もうなりつつあると思うので、そんな強い代表をあさっての試合でも見せていきたいなと思います」

 久保自身はこの1年、ラ・リーガや欧州CLでの活躍により、長らく苦しんできたA代表での序列を高めてきた。「個人的には右肩上がりで知名度も実力も世界的に見てついてきたかなとは思っている。このままの成長曲線を続けられたら、もっともっといい選手になれるんじゃないかなという実感が湧く1年だった」。その言葉からは確かな実績とともに積み重ねてきた自信がにじむ。

 それでも日本代表での立場に話が向くと、まだまだ控えめな姿勢を崩さない。

「絶対的な選手は今の代表にはいない。みんながみんないい特長を持っていると思うけど、そもそも日本代表というチームは個の力だけでなんとかというより、11人の力、交代してサブから入ってくる選手の力も含めて、組織で圧倒して、それに個をプラスする感じだと思う」

 そんな日本がさらなる成長を続けていくためには「スターがいっぱいいたらいいんじゃないですか」と久保。「どのレベルの選手をスターってみんなが思うかわからないけど、有識者の方だったり、サッカーを知らない人もその基準が上がってくれたら日本がもっと強くなるのかなと思う」。その言葉の裏にはさらなる成長意欲をのぞかせた。

 そうした中で迎えるアジア2次予選。久保は「試合に出たら点も欲しいし、チームの勝利に貢献しないといけない。まだ2試合目なので勝ち点3を取ることにフォーカスしたい」と静かに意気込む。だが、その目線の先には“日常”の価値向上。自らが結果を残し続けることにより、そのチャレンジを推し進めていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集
竹内達也
Text by 竹内達也

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