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苦しんだ2戦に自らへの怒りを口にした右SB菅原由勢「こんなもんじゃないだろうと…」

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日本代表DF菅原由勢(AZ)

 日本代表DF菅原由勢(AZ)は21日のトレーニング終了後、吹っ切れた表情で報道陣の前に立った。「このパフォーマンスをやっている自分がすごく不甲斐ない。それしかない。自分自身にすごく腹が立っている。こんなもんじゃないだろうというのは自分自身が一番考えているので、それをしっかりピッチで示さないといけない」。低調に終わった過去2戦を経て、自らへの怒りも口にしつつ立て直しへの決意を力強く語った。

 23歳の菅原は初のアジア杯となる今大会で、初戦ベトナム戦(○4-2)、第2戦イラク戦(●1-2)にいずれも先発出場。相手が日本の右サイドを徹底的に警戒してくる中、攻撃ではなかなか良さを発揮できない場面が目立ち、守備では対人戦で振り切られて失点につながるピンチを招くなど、ここまで苦悩の日々が続いている。

「1、2試合目が満足のいくパフォーマンスじゃ到底ないのは自分自身が一番わかっている」

 そう振り返る菅原はイラク戦後、今大会での自身のプレーを映像で丁寧に振り返ったという。課題は「挙げ出したらキリがない。話したら1時間くらいになる」と多くは語らなかったが、攻撃面ではオーバーラップ、守備では失点時の守備対応に触れつつ、「教訓にしないといけないし、これが2度と起こらないようにしっかり考えている」と力を込めた。

 さらに悪いパフォーマンスを反省するだけでなく、「過去の自分が納得のいく試合も見返した」という。その映像の中には絶対的な右SBとして連戦出場が続くAZでのプレーに加えて、日本代表として高いクオリティーを発揮していた昨年9月のドイツ戦、昨年10月のチュニジア戦のシーンも含まれていた。

「自分の感触的にプレーが良かったなということよりも、全体像としてチームの流れも含めてうまくできたところに注目して見ていた。あの頃の試合と、今の過去の試合を見ると、もっともっとアグレッシブに動き出すところ、そこのダイナミックさが失われている。それを失ったら僕自身の価値も無くなる。そこを出さないといけない」

 まず自身に求めていくのは、本来の持ち味を取り戻すことだ。第2次森保ジャパンで主力に定着し、右ウイングのMF伊東純也(スタッド・ランス)との縦関係で地位を高めてきた菅原。今大会では相手の厳しい対策を前にアグレッシブさが出せていないと感じており、原点回帰への思いを口にする。

「昨年1年間やってみて、右サイドから崩せて、攻撃も作ることができて、完結もできてというところで相当な自信はあったけど、公式戦になると特にアジアの国は対策してくる。左も(三笘)薫くん、(中村)敬斗くんがいるけど、それよりも右への対策をものすごく感じる。それでももっともっと回数、質を上げていかないといけない。対策を上回るものを作っていかないといけないと感じる」

「対策されているからと1戦目のようにオーバーラップを躊躇したり、後ろのサポートを多くするのではなく、逆にそういうところだからこそ回数を増やしていって、もっともっと相手をかき乱せれば。相手も人間だし、90分走れる体力は日本のほうがあるし、僕はそこに自信がある。もっともっと相手を動かす意味でも、ダイナミックに動く必要があると思う」

 そうして立て直していける自負もある。当時18歳だった19年夏からオランダに渡り、4年半でエールディビジ183試合に出場。その中では良いパフォーマンスだけでなく、悪いパフォーマンスもあったはずだが、それらを乗り越えながらいまの地位を築いてきたからこそ、苦境を乗り越えられるすべは知っている。

「もちろん人間なので波はあるわけで、そういう時にいかに原点に立ち返りながらも、しっかりマインド的に切り替えられるかが大事。いい試合のプレーができるということはそれができているということ。悪いプレーをしたら、それが実力なのかもしれない。でも悪い時を考えすぎるのではなく、悪いことの中でも課題や次につなげるものをしっかりと抽出して、いいものはいいもので質を上げ、もっともっと武器になるように仕上げていくことが大事だと思う」。そのサイクルはプロキャリアで丁寧に積み上げてきたものだ。

 ここまでの菅原はA代表で迎える初の国際大会による重圧ゆえか、日頃戦い慣れていないアジアの舞台ゆえか、現段階で本領発揮に至っていないのは事実。それでも大会は続いていく。「アジア杯という大会でもあるし、いろんな外部から来るものもあるけど、自分のパフォーマンスに集中しないといけない。もっともっと自分がどんな選手なのかを自分が示してきたように、今までのようにこれからやらないといけない。まだまだこれからだと思う」。このまま終わるつもりはない。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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