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森保Jの過去の苦境知る伊東純也「ここでうまく引き締まった」右サイド復活にも自信

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MF伊東純也(スタッド・ランス)

 長らく森保ジャパンの武器を担ってきた右サイド攻撃が、今回のアジアカップでは苦境に立っている。初戦のベトナム戦(○4-2)、第2戦のイラク戦(●1-2)はいずれも相手から最大限の警戒が向けられ、優位に立って攻撃を進める場面はほとんど見られず。それどころか、守備に人数をかける相手がカウンターの糸口に使ってくることで、失点に絡む形も続いていた。

 それでもMF伊東純也(スタッド・ランス)は「(警戒を)言い訳にしてはいけない」と言い切り、改善に前向きな見通しを示した。

 イラク戦の攻撃には「ベトナム戦より多少ボールを受けられたけど、クロスを上げようとしたときに中の枚数がいないのは難しかった。回数も少なかったと思う」と反省。その上で「チーム全体でボールの動かし方」にテーマを掲げつつ、「昔できていた部分ができなくなっているところがあるので、そこをしっかりしてサイドの高い位置にうまくボールを運べるようになればもっとチャンスが多くなる」と展望する。

 今回のアジア杯2試合では、右サイドが伊東とDF菅原由勢(AZ)の縦ラインのみで攻撃を進める場面が頻発。これまでの親善試合は2人だけで攻撃を完結できる場面もあったが、明確に警戒してくるアジアの相手にはなかなか通用していない。

 イラク戦を振り返った伊東は「タケ(久保建英)とか(遠藤)航、(浅野)拓磨も含めてうまく連係で崩していかないといけなかった」と指摘。昨年11月のW杯2次予選シリア戦(○5-0)を例に挙げて「シリア戦はそういうのが結構あったので、うまくコンビネーションできるところを増やさないといけない」と力を込めた。

 また昨年の好調時は最終ラインから最前線がコンパクトに保たれていたが、アジア杯では相手のパワフルな攻めに布陣を広げられ、間延びする時間が続いたことも攻守にうまくいかない要因となった。伊東は「ディフェンスラインと中盤とフォワードの距離が広くなっていると思うし、そのぶんコンビネーションも少なくなっている」と振り返りつつ、チーム全体でのディスカッションも進んでいると明かした。

「今日もミーティングで話をしたし、選手個人の意見も出したりしていて、今日は特にディフェンスラインの押し上げをもう少しコンパクトにというのを話し合えた。コンパクトになればコンビネーションも良くなるし、セカンドボールも拾えるし、二重三重の攻撃ができるのかなと思う」(伊東)

 そうした選手間の積極的な議論は、21年秋のカタールW杯最終予選や、22年夏の強豪国とのテストマッチで苦しんだ時期にチームを浮上させてきた大事なアクション。それらの苦境を攻撃の軸として牽引してきた伊東は「ポジティブに話し合って、昔のようにできれば全然まだまだいける。(大会で)負けるのはよくないけど、ここでうまく引き締まったと思うし、ここから全部勝って優勝できればいいかなと思う」と前向きに受け止めている。

 また伊東自身も今大会、報道陣の前でチームのプレー選択に改善点を指摘することがたびたびあり、ピッチ上でもチームメートに激しく指示をする場面も頻繁に見られるなど、自らが発言力を持ってチームを前向きに進めようとする意識が感じられる。

「もともと伝えてはいる。うまくいっていた時は別に言う必要がなかったけど、合わない時はやっぱり伝えていかないといけないし、そういう部分ではなるべく言うようにしている。それでうまくいけばいいと思っているので」。過度に意識した振る舞いではないと強調するが、チーム全体への目配りが進んでいるのは頼もしい。

 何よりチーム全体の攻撃が整理されれば、再び伊東を中心とした右サイドの武器も活きてくるはずだ。自身のプレーにも「もっとチャレンジする回数を増やしていってもいい」と改善も進めようとしている伊東。「やっぱり自分が得点に絡まないとチームの得点数も少なくなると思うし、やっぱりゴールだったりアシストだったりというのは作り出さなきゃいけない」と結果への貢献を誓った。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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