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「満足とかOKということはない」9戦11発とゴールを量産する上田綺世が目指す理想のストライカー像

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試合を決定づける3点目を決めたFW上田綺世

[1.31 アジア杯決勝T1回戦 日本 3-1 バーレーン アルトゥママ]

 これぞエースの働きだ。後半19分に2-0から1点を返され、スタジアムの熱狂に後押しされて勢いづく相手を自らのゴールで再び黙らせた。日本代表は後半27分、DF毎熊晟矢からパスを受けたFW上田綺世(フェイエノールト)が鋭いターンで前を向き、DFを振り切ると、PA内右の角度のない位置から右足でGKの股間を抜き、ゴールネットを揺らした。

「何というか思いつきです」という感覚的な抜け出しだったが、「相手の隙やフォーメーションの陣形の悪さというのは、前半から背後を狙いながら理解していた。そこを突けたと思う」と胸を張る。何度となく動き出しを繰り返し、ラインの乱れを突く上田には後半11分にMF守田英正から、同17分にもDF毎熊晟矢からスルーパスが通ったが、いずれもオフサイド。わずかに味方とタイミングは合わなかったが、上田の狙いは明確だった。

 不運な形で失点に絡んでしまったが、引きずることもなかった。2-0の後半19分、相手CKからGK鈴木彩艶がパンチングしたボールがゴール方向に飛ぶと、ゴールライン上にカバーに戻っていた上田と鈴木が交錯する形となり、鈴木がこぼしたボールがゴールに吸い込まれた。

「あそこはちょっとアンラッキーで、だれが悪いわけではなく、僕も(鈴木)彩艶もたぶん声をかけていたけど、自分のゴールにボールが向かっている中で、それをどっちかに任せることはできない」。失点シーンをそう振り返った上田は「しょうがないということはないけど、全力は尽くした。切り替えてプレーしたけど、取り返そうという感覚はなかった」と強調した。

 2ゴールを決めた24日のインドネシア戦(○3-1)に続く2戦連発で今大会4ゴール目。昨年6月15日のエルサルバドル戦でのA代表初ゴールから数えて早くも国際Aマッチ通算11得点となり、自身が出場した試合は9戦11発と、驚異的なペースでゴールを量産している。

「ゴールは今欲しいから取れるものでもない。運とかタイミングもあるけど、今日はタイミング良くチャンスを作って取れたと思う」。そう話すと、自身が描く理想のストライカー像へと話は及んだ。

「自分が(ゴールを)欲しいとき、自分の価値が変わりそうなとき、そういう重要なタイミングで点を取れているという感覚はあまりなくて。もちろんそういうときもあるけど、実際は逃しているなって。そういうときに取れる選手に価値があるし、FWにとって何も関係なく毎試合点を取る選手がいい選手だし、タイミング関係なく取れるのが一番いい。そういう選手になれればと思っている」

 FWとしての得点へのこだわり、執着。「FWをやっていれば何となく分かる。点を取る、取らないで立場や価値が変わるなという試合、タイミングがある。常にそうなんだけど、逃して気づくこともある。それは育成(年代)もそう。タケ(久保)も(堂安)律も(中村)敬斗もみんなそういう試合をかいくぐって、結果を残して今がある。そこで結果を残し続けないと上がっていけない」。それは上田自身も同じだ。ただ、その理想と目指すべき場所は限りなく高い。

「僕は常に環境やタイミングに関係なく毎試合取れることを目標にしている。そこで結果を出せば自ずと変わる」。チームが苦しい状況で試合を決定づけたこの日の3点目にはまさにそれだけの価値があった。「もっとベターな結果はいくらでもある。満足とかOKということはないけど、一つ大事なところで取れたのは評価できるのかなと思う」。自分に厳しい上田にとって最大限の自己評価だった。

(取材・文 西山紘平)

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西山紘平
Text by 西山紘平

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