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アジア8強敗退の森保Jに反町技術委員長が信頼表明「全面的にサポートする」5戦8失点の守備、中東相手の戦い、東大院生ら分析サポートにも言及

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JFAの反町康治技術委員長

 日本サッカー協会(JFA)の反町康治技術委員長が8日、U-16日本代表の活動で滞在先のポルトガルからオンラインで報道陣の取材に応じた。

 同日の技術委員会ではアジアカップでベスト8敗退に終わった日本代表について、約1時間にわたる議論を行った様子。森保一監督体制については「肯定的な部分と厳しい声も聞こえてきたが、基本的に今まで以上にしっかりサポートし、W杯に向けて準備していくコンセンサスは得ている」と技術委員会での立場を明かしつつ、「次に活かしてもらうのが大事。我々はそれを全面的にサポートする。そこには疑念の余地はない」と信頼を示した。

 取材対応の中ではアジア杯での日本代表における守備の課題を指摘。「5試合で8失点は今までのアジア杯で史上最悪。8分の5がセットプレーの失点も踏まえ、課題として見えているのは明らか。しっかりと見直さないといけない」と振り返った。一方で「攻撃のところは中盤の選手が前線も含めクオリティーは悪くない。枠内シュートの数字には少し課題が残ったが、攻から守への切り替えは全部の試合を通じて日本らしさが見えた」と前向きな見解も述べた。

 セットプレーの失点については「セットプレー(だけ)と解決できないところもある。最終ラインのGKとの連係、ディフェンシブサードの個人の力や対応も。特にイラクやイランは長いボールも交えながら危険なところにボールを運んでくるが、そこへの対処法も含め、W杯予選に向けて課題があるので直していかないといけないというのを我々の意見として集約できた」と反町委員長。今後は同委員会にも出席した山本昌邦ナショナルチームダイレクターを通じ、チームスタッフにフィードバックを行うという。

 またアジア杯大会後にはDF冨安健洋から「熱量が足りなかった」という声が出ていたが、技術委員会でも同様の議論が行われたという。反町委員長は「精神的な部分で言うと、W杯本大会も含め、強い相手とマッチメークしたことで(強豪相手の)チャレンジ精神が生まれているが、アジア杯となると前評判が高かったこともあり、受けて立つ感じになってしまい、熱量が欠けていたのは否めないという話も出た」と明かした。

 実際に日本戦で勝利したイランの選手たちは劇的な試合後、ピッチを走り回って優勝したかのように喜び、この一戦にかける気迫を表現していた。そのイランは準決勝で開催国カタールに敗れたが、日本戦で会場をのみ込んだイランサポーターを上回るようなホームの空気感が後押ししていた。またカタールと同じアラブ勢のヨルダンも史上初めて決勝に進出。いわゆる「熱量」の違いが結果に表れた側面もあった。

 こうした現状について反町委員長は「中東と言っても一つにまとめて話をするのは難しい。サウジにはサウジのサッカー、カタールにはカタールのサッカーがあるし、イランもイラクもそう。イランはFIFAランキングで日本の次ですよね。彼らは必ずしもロングボールだけではない」と述べつつも、「彼らの熱量、この試合にかける熱量は非常に高いと思う。それはイラクもそう。相手側がチャレンジ精神を持って挑んでくる。シンプルに我々のウィークなところを突こうというのが見えてくる」と違いを見つめた。

 だが、その一方で「中東だからという苦手意識はない」と反町委員長。「応援の仕方は近隣の国から来やすいのかもしれないが、我々からしてみるとヨーロッパの選手はホームとアウェーでは全然違う環境で戦っていて外圧にも慣れている。それで精神面が不安定になったり、セルフコントロールができなくなることはない。うまくいかなかった時に敗因を求めて、理由づけをするものだが、今の日本においてはそれは当てはまらない」と断言した上で「それよりも相手の分析であるとか、戦い方、個人戦術、そういうところにもっと視点を移したほうがいい。そこでうまくいかなかったことを次に活かさないといけない。それが大事になると思う」とピッチ内の要素に焦点を当てる姿勢を強調した。

 分析という観点では今大会、2026年の北中米W杯を見据え、東京大・筑波大の大学院生ら25人がバックアップ体制を組み、森保ジャパンに帯同しているテクニカルスタッフの分析業務をサポートするという初めての取り組みも実施。対戦の可能性がある国々の情報を幅広く収集し、結果的には対戦が実現しなかった韓国、オーストラリア、カタールなど強豪国のデータもストックしていた。

 反町技術委員長によると「大会が始まる前にはすでに分厚い量の資料が揃っていた」といい、大会が進むにつれても選手の特徴やチームの傾向など、カタール現地に帯同するテクニカルスタッフが分析業務をスムーズに行えるよう、ベースとなる情報を提供できていた様子。決勝トーナメントでは他国の結果により、対戦相手が直前まで決まらないという状況にもなったが、各国を担当する院生らと臨機応変にやり取りしてデータを整え、テクニカルスタッフに送っていたという。

 反町委員長は「(ラウンド16)のバーレーン戦が終わった後、次の試合の相手はどちらが勝ち上がってくるか分からなかった中でもたくさんの情報があった。以前のW杯のように『そこからよし作業するか』というのではなく、すでに資料がたくさんあった」と準々決勝前の状況を例に手応えをアピール。今後は現場サイドとも振り返りを行うというが、現時点でも「しっかりやっていただいたという報告は受けている」と前向きに語った。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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