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前半は自信、後半は課題が収穫に、佐々木監督「ステップアップしている」

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[4.1 キリンチャレンジ杯 日本1-1アメリカ ユアスタ]

 694日ぶりのゴールも喜び切れなかった。前半32分、先制点を決めたDF近賀ゆかり(INAC神戸)は「練習でもやっていた形。それを試合で出せてよかった」と、10年5月8日のメキシコ戦(4-0)以来、約2年ぶりとなる代表戦でのゴールを振り返りながらも「ゴールより自分のところでミスが多かったので、そこを修正しないと。あの場面しかいいところがない感じだった」と笑顔はなかった。

 チームとして取り組む前への意識がゴールにつながった。右SBの近賀からMF川澄奈穂美に当てると、「(右サイドハーフの)大野も出られるタイミングがあったけど、一つ川澄がためてくれて、2個目のタイミングで自分が行った」。ワンツーの形でリターンパスを受けた近賀はゴール前に折り返し、DFがカットしたこぼれ球が再び自分の目の前に転がってきた。「いいところにこぼれて来て、思い切って振り抜いた」。左足でゴールに叩き込み、均衡を破った。

 前半の45分間は完全に日本のペースで試合が進んだ。昨年の女子W杯決勝では、アメリカに対し防戦一方となりながら粘り強く耐え、数少ない好機を得点につなげていった。それがこの日は日本らしいパス回しでアメリカを揺さぶり、次々とチャンスメイク。佐々木則夫監督も「攻撃の仕方は、対アメリカとしてはステップアップして、チャンスやシュートシーンまで行けていた」と及第点を付けた。

「ドイツ(女子W杯)での決勝よりアルガルベ杯。アルガルベ杯より今日。結果は出なかったが、やろうとしていることはよかった。段階を踏んだ中で結果は欲しかったが、前へという意識は以前より出ていた。これをベースにまた積み上げていきたい」

 昨年7月17日の女子W杯決勝でPK戦の末にアメリカを下し、今年3月5日のアルガルベ杯でも1-0で勝った。1年足らずの間に3度対戦し、この日も1-1のドロー。近賀も「何年か前よりはボールを持つ時間も増えているし、戦えるなと感じた」と手応えを深めている。

 あとは相手が前がかりになり、劣勢を強いられた後半のような試合展開の中でいかに逃げ切るか、あるいは突き放すか。「相手に勢いがあるときのいなし方や裏の付き方。テンポを変えるところが今日の課題かなと思った」と佐々木監督。「相手の勢いもあって、精神的なプレッシャーから選択を誤ったところもあった。そこは冷静にやることで回避できる。後半の中でも裏を取ってチャンスが2、3度あった。そこで仕留めておけばという場面もあった」。ロンドン五輪でも金メダルを争う最大のライバルとの一戦で出た自信と課題。その両方を手にすることができたのが最大の収穫だった。

(取材・文 西山紘平)

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