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F東京・ポポヴィッチ監督「10人代えられるなら、10人代えていた」

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[6.16 J1第14節 F東京0-1 横浜FM 日産ス]

 シニカルな言葉が、次々と飛び出してきた。リーグ再開初戦の横浜F・マリノス戦を0-1というスコア以上の完敗で終えたFC東京ランコ・ポポヴィッチ監督は、「悲しい試合でした」と第一声を発すると「今日の試合で唯一良かったのは、すべてが悪かったことです」と言葉を続けた。

 今季、セルビア出身の指揮官が就任して以来、ここまで何もできずに負けた試合はなかった。シュート数は、わずか3。中断前の13節浦和戦(1-1)で見せた魅力的な攻撃サッカーを実践したチームとは、まるで別のチームだった。試合前の囲みインタビューで「公式戦から少し離れており、多少の不安はあります」と言っていた予感が的中してしまった。

「今日の試合では心ここにあらずという選手があまりにも多かった。まだリーグ戦が再開したことを知らない選手が何人かいましたし、何人かはバケーションから帰ってきていなかった。そして代表に行ったままの選手も何人かいたと思う」

 前半37分にDF椋原健太を下げ、さらに後半開始と同時にDF太田宏介を下げたのはなぜか、という質問に対し指揮官は「健太は今日、良くなかった。だが、マルディーニにも悪い日はある。健太も同じこと。宏介はケガのために交代しました。自分としても予想していない交代で、2つの交代枠を使ってしまったので、意図的に使えたのは1枚だけでした」と言い、「今日は10枚交代枠があったら、10枚代えていた。唯一、権田(修一)だけは変える理由はなかったが、もしかしたらGK塩田(仁史)をFPで使った方が、今日は良かったかもしれない」と、怒り心頭だった。

 だが、「グッドルーザーという言葉は、ルーザー(敗者)という言葉が入っているだけで、嫌い」と言うほど負けず嫌いの指揮官が、このまま引き下がっているはずは、ない。

「今日はサポーターが90分間最後まで応援をしてくれました。しかし、彼らの応援に私たちは応えられなかった。私は借りたものは返す主義です。サポーターのみなさんに、この借りを返さなければいけません。今日は一度もチャンスをつくれないまま終わりました。何のために練習をしているのか、という試合でした。ただ、長いシーズンを戦う中で、こういう日もあるでしょう。大事なのは、これを繰り返さないことです。しっかり修正して、次の試合に臨みます」

 ユーモアのある言葉の中に、悲しみと怒り、そして悔しさを散りばめながら、指揮官はチームの立て直しを誓った。

(取材・文 河合 拓)

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