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2ゴールの横浜FC小野瀬「嬉し過ぎて、体が勝手に動きました」

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[7.1 J2第22節 町田0-4横浜FC 町田]

 横浜FCのMF小野瀬康介は、後半戦初戦となった町田ゼルビア戦で、チームの勝利を決定づける3点目のゴールを挙げた。自身にとっては嬉しいJ初ゴール。横浜FCの下部組織出身の選手として初ゴールだが、19歳は「ただの1点に過ぎません」と冷静に振り返った。しかし、得点を挙げた直後、ゴール裏のサポーター席に飛び込んだことについては「嬉し過ぎて、勝手に体が動きました」と笑顔を見せた。

 ピッチに立ったのが後半21分、得点を挙げたのは、わずか1分後。自身にとってのファーストプレーの流れからだった。右サイドでスローインを受けた小野瀬は、得意のドリブルでDFをかわし、前線に走るFW大久保哲哉にパスを出す。大久保がPA内にボールを持ち込むと、折り返したところで再び小野瀬がボールを受けた。

「相手がスライディングに来ていたので、マークをかわして『打っちゃえ』と思ったら入っちゃった感じですね。打てば何かが起きると思いました」と振り返る。

 さらに後半40分、小野瀬は左サイドでボールを持つと、中央に切り込み右足でシュートを放った。これがGK修行智仁の手の先を抜けて、ゴールネットを揺らす。初ゴールからわずか19分後に2点目を挙げた。「2点目は自分の形でした。練習した通りにできました」と振り返る。

 昨シーズン、2種登録でトップチームに帯同していた19歳のルーキーには、期するところがあったという。

「前回の町田戦も自分は出してもらいましたが、2-4で負けてしまっていたので、その責任もありました。借りを返したかった。最近は、全然試合にも出られなかったので、出たら結果を残したいという気持ちはありました。そういう気持ちで、シュート練習をやっていた成果が出ました」

 一つだけ、不満があるという。2点目を挙げたとき、彼は真っ先にベンチに駆け山口素弘監督に抱き付いた。「今後に向けてのアピールかな」といたずらっぽく笑い、「でも、ベンチに走って行ったのに、ベンチから誰も出てきてくれなかったんですよ」と口を尖らせた。

 ロッカールームに戻ってきてからも、チームメイトにイジられたという。「おめでとうとも言ってもらえましたが、それ以上に『鼻が伸びているぞ』とか『天狗になっているぞ』って言われて」と苦笑する。チーム最年少の小野瀬が結果を出したことについて、MF佐藤謙介も「あの(2列目の)ポジションも、今日は(武岡)優斗がいませんでしたが、競争が出てきて良いと思います」と喜んだ。

 この勝利で順位は9位に上がり、プレーオフの6位までの勝ち点差も4に縮めた。その原動力となるのが、チーム内の競争であり、彼のような若手の台頭は望まれている。

 山口素弘監督は小野瀬について「ここのところトレーニングで、良いパフォーマンスを見せていました。どこかで長い時間使えば、十分にチャンスはあるなと思っていました。雨の日は技術の高い選手が結果を出すと思っています。ものの見事にやってくれました」と、貴重な戦力として考えていることを口にした。

「ただの1点」という冒頭の小野瀬の言葉には、まだまだ満足はできないという意味も含まれているだろう。だが、チームに、サポーターに、深く愛されるユース出身の2ゴールが、横浜FCをさらに加速させる可能性は十分だ。

(取材・文 河合拓)

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