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決勝点アシストの川崎F・MF中村「不格好でも勝てた」

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[9.22 J1第26節 F東京 1-2川崎F 味スタ]

 冷静沈着なゲームメーカーが、その本領を発揮した。後半9分、川崎フロンターレはMF風間宏希が倒されてFKを得た。MF中村憲剛はボールを置くと、FC東京の選手たちがつくった壁を見た。ややゴールから距離は合ったが、直接狙える位置でもあった。だが、その壁の枚数を見て、中村は「ゴール前にクロスを入れようと思った」と明かす。

「壁に5枚入っていたから『中が空いているだろうな』と思いました。実際に数えてみたら、PA内で4対3という数的優位ができていた。1点取っていたし、余裕もあったから、無理して狙うことはせずに、ジェシか、その裏でフリーになっていた實藤のどちらかに合えばと思って蹴りました」

 キックの直前に「目が合った」と語るジェシは、中村の柔らかいパスにヘッドで合わせて、リードを2点に広げた。「中村は良いボールを蹴ってくれた。インテリジェンスのある、素晴らしい選手。素晴らしいボールをくれたから、点を取ることができた。感謝したい」とジェシは感謝の言葉を並べる。

 この試合は勝たなければいけない試合だったと中村は言う。「他の試合とは違う重みを両チームでつくってきたつもりです。勝った方が勢いに乗れる試合ですし、ましてやアウェーゲーム。これまで自分たちのサッカーができている中でも、なかなか勝てていなくて葛藤もあった。不格好だったかもしれないが、勝つことができた」と胸を張る。

 中村が「不格好だったかもしれない」と語ったのは、前半の試合運びだろう。これまで多くの試合で主導権を握っていた川崎Fだが、直近の6試合は3分け3敗と未勝利だった。この試合は相手に主導権を握られても動じることなく、結果にこだわった。実際にシュート数でも1対9と圧倒された前半を無失点に抑え、後半開始直後の2ゴールで勝利をつかみ取っている。

 勝利を喜ぶ中村は「オレの、あのプレー以外は素晴らしかった」と試合を振り返る。後半40分に中村が自陣深くでボールを奪われ、F東京に1点を返されてしまった。その場面を反省しつつ、残り8試合となったリーグ戦につながる勝利だと強調する。

「多摩川クラシコでの勝利は大きい。自分のミスで失点して申し訳なかったが、みんなの力で勢いの付く勝ち方ができたと思う。自分たちに自信がついた試合となった。必ずホーム(29日・札幌戦)で連勝できるようにしたい」

 風間八宏監督も「選手たちが自分たちの技術を使って、勝つことに集中してくれた。そこが一つ進歩したゲームだったと思う」と満足気に振り返る。勝ち点3を持ち帰った川崎Fだが、中村の言葉通り、手にしたのはそれだけではなさそうだ。

(取材・文 河合拓)

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