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愛着ある古巣との一戦を終えたフィッカデンティ監督「鳥栖でFC東京以上のチームをつくる」

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[5.13 J1第1ステージ第12節 F東京 0-0 鳥栖 味スタ]

 昨シーズンまで2年に渡ってFC東京を指揮していたマッシモ・フィッカデンティ監督は、AFCチャンピオンズリーグ出場権を置き土産に、今季からはサガン鳥栖の監督に就任した。首都を離れてから初めて古巣との対戦となった13日の試合は、互いに守備で譲らず。両チームに彼の哲学が強くあることが示されたゲームだった。

 スコアレスドローで連敗を2で止めたフィッカデンティ監督は、「お互いにスペースを潰し合いながら戦った、バランスの取れたゲームだったと思います。前半の最後に高橋(秀人)選手のシュートがクロスバーを叩いた場面からの連続のピンチでは、不用意にドリブルをしてしまう私たちのミスもありましたが、あそこの一瞬気が抜けてしばった場面以外は、どちらも、ほぼシュートチャンスがないような試合になりました」と、試合を振り返った。そのうえで、「ただ、お互いにチャンスがなかったというよりは、スペースを潰し合って、戦ったゲームだったのではないかと思います」と、感想を述べた。

 昨季までFC東京を率いていたイタリア人監督は、「(FC東京は)新しい選手もいる中で、ほとんど自分が知っている選手たちでした」と言い、難しい試合になることを覚悟していたと明かす。

「(昨季まで)彼らと一緒に戦っていましたから、どれだけディフェンスが堅いかは分かっていました。崩すのは非常に困難でしたが、こちらも最後まで気持ちを込めて戦えました。その部分は試合前から選手たちに強く求めていたのですが、最後まで集中を切らさずに戦ってくれたので、チャンスが生まれなかった試合でしたが、互いに気持ちを込めて戦えたのではないかと思います」

 F東京の選手たちの特長を知っていることも、メリットにはならなかったようだ。「阿部選手とGKの秋元選手以外は、私がよく知っている選手が出ていました。もちろん、相手を知っていて、良い準備ができたから、今日の結果に持ち込めました。しかし、戦う前から素晴らしい選手たちがいると知っていたことは、プラスになっていたというよりも『難しい試合になるな』と感じるだけでした。それで簡単に抑えられるわけではありません。彼らの武器が何かをわかっていても、脅威になるだけで、抑えるのがラクになるわけではありませんから」と話す。

 だからこそ、ここで得た勝ち点1は意味がある。第10節の湘南戦、第11節の広島戦と2連敗を喫していた中、昨季4位の強豪からアウェーで得た勝ち点について、「なんとか試合を乗り切ったというよりも、自分たちから手に入れた勝ち点1」と前向きに捉える。その一方で、3試合連続、今季6試合目の無得点に終わった攻撃に課題があることを強く認識する。得点を取るために必要なことを問われたフィッカデンティ監督は「簡単じゃないので、少し考えさせてください。4カ月前から考えているのですが」と冗談を飛ばしたが、その解決策は見いだせていないのかもしれない。

「おっしゃるとおりだと思います。これまでの試合では、点にならなくても、もう少しチャンスがつくれる試合ができていました。しかし、今日はそういうチャンスになりそうな場面もありませんでした。良くしていけるように、しっかりと働きたいと思います」と、答えるにとどまった。

 会見後のミックスゾーンでは、F東京の多くの選手たちがフィッカデンティ監督を囲み、笑顔で会話をしていた。「素晴らしい絆を築けた」と繰り返すフィッカデンティ監督だが、今、自分のやるべきことに集中する。

「鳥栖でも同じようなチーム、それ以上のチームをつくろうと思い、その仕事に集中しています。東京と比べたら、小さな街に行きましたが、これまでの歴史で鹿島や磐田が証明してくれたように、あまり大きくない街でも、しっかりしたプログラムを立て、やるべきことをやっていけば、歴史はつくれます。しっかりしたアイディアを持って、我慢するところは耐えて、時間をかけてつくっていけば、鳥栖で良いチームをつくれると思うので、簡単ではありませんが1日1日、必ずそういう方向に持っていけるようにやっていきたいと思います」と、決意を新たにした。

(取材・文 河合拓)

●[J1]第1ステージ第12節1日目 スコア速報

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