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J理事退任の佐伯夕利子氏が涙の訴え「あの空気を絶対に壊してはならない」

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涙ながらにJリーグのスタジアム環境の良さを熱弁した佐伯夕利子氏

 Jリーグの常勤理事を今月15日限りで退任する佐伯夕利子氏が8日、実行委員会後のメディアブリーフィングで退任あいさつを行い、Jリーグの未来図を涙ながらに訴えた。同氏は長年にわたってスペインを拠点に活動し、コーチやフロントスタッフとしてヨーロッパサッカーの最前線を経験してきた現場出身のサッカー人。計4年間の理事経験を振り返り、熱く具体的な提言を示した。

 佐伯氏は2018年、Jリーグの特任理事に就任。20年からは常勤理事としてJリーグの方向性を議論し続けてきた。「外から見ていた特任理事の時のJリーグと、中に入ってJリーグを見た時、全く違うなというのが第一印象でした。さまざまな違いが見える中で、まずは違和感を大切にしようと思いながら、違和感をスルーしないで一つ一つ皆さんと共有していくことで何か気づき、学びが得られたらと思い、日本サッカー界の向上に微力ながらお手伝いをできればという気持ちでやって参りました」。

 常勤理事を務めた2年間は、世界中がコロナ禍に見舞われた期間と全く同じ。佐伯氏は村井満チェアマンの勧めで、スペインの地からリモートで理事会などに参加してきた。「ちょうど2年前くらい、JFAハウスのあたりに家を探しておりましたが、ついに住むことはなく、21年はウィークリーマンションに住みながら日本の当時57クラブを訪問して回りたいと思っていましたが、それも当然叶うことはなく、任期を迎えたということで残念な気持ちはありますが、この特殊な2年間にJリーグにお世話になったということに何か意味があったのかなと考えております」。スペインでの豊富な経験をJリーグに伝えることに加え、日本独自の社会連携プロジェクト「シャレン!」活動の推進に尽力してきた。

 この日の挨拶でも日本とヨーロッパのサッカー界を比較しつつ、次々に熱量のこもった提言が飛び出した。

「日本からヨーロッパを見たときに、スポーツの立ち位置が圧倒的に違うなとあらためて感じております。たとえば私は社会連携を担当いたしましたが、社会連携でやはり出てくるのはEUというのはコロナがありましたが、必ずしっかりとスポーツに対して財源を確保します。スポーツに対する支援が圧倒的にあります。だからこそ、苦しい状況でもスポーツの進化と成長が止まらないという背景があるということを感じながら、私たちは社会連携で何ができるのかということを考えながらこれまでやって参りました」

「フットボールに関しては、育成の部分でこれまで私たちはいい選手がそこそこ生まれてきた。でもそれって偶然だったかもしれないというところで、ぜひこれを意図的に、そして意志を持って必然に変えていくというのが私たちのプロジェクトです。そこに各クラブの意図、意思が生まれていくことで必然的にいい選手が生まれていくというのが今後の一つの真価として見出していくことができればと思います」

「トップレベルの競技力は一番時間のかかる長期戦です。いまやっていることがいい悪い、方向性が正しいという狭い視野の議論ではなく、一番時間がかかり、だからこそみんなで力を合わせて取り組んでいくという姿勢が必要かなと感じています」

 またJリーグのファン・サポーターが築き上げてきた“財産”に話が及ぶと、ときおり声を詰まらせながら熱弁した。

「Jリーグの一番いいところは、ヨーロッパにいるとスタジアムに行くのが嫌ですし、怖いです、恐ろしいですし、子供を連れて行けませんし、女性は男性に守られながらスタジアム周りを歩かなければなりません。それがJリーグのスタジアム周りは圧倒的に優しい、温かい、安心・安全・平和。あの空気を絶対に壊してはならないと思いました」

「ヨーロッパにおいてゴール裏の過激なグループというのは、やんちゃな子たちが大声を張り上げているというレベルではなく、本当に過激で危険で危ない、深い、深い、深い、解決できない思想が絡んでいます。ですので、それを曲げることなく、そういった思想や過激グループが走るようなリーグであってはならないと思います。人権、世界という舞台に立つという想いを持って、Jリーグが前に進んでいけば、いま目指す世界観に近づいていくと思いました」

 今後はヨーロッパに戻り、「ヨーロッパの舞台で、ヨーロッパのサッカー界で勝負をしたい。個人的にNPOを立ち上げまして、ヨーロッパのスポーツパーソンを支援していきたい」と力を込めた佐伯氏。異色のサッカー人が示した課題や未来図は、今後のJリーグが受け継いでいかなければならない。

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