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“緑の血”流れる188cmの大型ボランチ…東京Vルーキー綱島悠斗がプロ初先発初ゴール「目標は常に高いところにある」

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東京ヴェルディMF綱島悠斗

[4.12 J2第9節 東京V 2-1 秋田 味スタ]

 今季わずか2失点の秋田守備陣を打ち砕いたのは、4年越しに東京ヴェルディへと帰ってきた国士舘大卒ルーキーの一撃だった。今季初先発でプロ入り初ゴールを挙げたMF綱島悠斗は「味の素スタジアムのバックスタンドで応援して育ってきたので、Jリーグ初ゴールを味の素スタジアムで迎えられたことを嬉しく思う」と喜びを語った。

 0-0の均衡を破ったのは後半6分だった。東京Vは左サイドを押し込むポゼッション攻撃からDF加藤蓮がハイクロスを供給すると、空中戦に競り勝ったFW河村慶人がヘディングで折り返しのパス。そこに飛び込んだのが豊富な運動量を活かしてペナルティエリア内まで攻め上がっていた綱島だった。

「クロスに入っていくところは意識していたし、最初に自分のところにボールが来なくてちょっと長いなと思ったら、慶人くんが体を張って競ってくれた。こぼれ球で自分がシュートを打てるようなポジションに立っていたら、運よくボールが転がってきたので、あとはふかさないように。ふかすような距離でもなかったですけど(笑)」

 ゴール正面で右足を振り抜き、豪快なボレーシュート。しっかりとしたミートでゴールに突き刺し、出場6試合目で記念すべきプロ入り初ゴールを奪った。小学生から高校生まで東京Vのアカデミーで育った綱島にとって、味の素スタジアムは憧れの地。ゴールの直後には真っ先にサポーターのもとへと向かい、エンブレムを叩いて自身の存在をアピールした。

「最高の瞬間すぎて、決めた瞬間に感情が爆発して、ゴール後に何をしたかは覚えていなくて……」。あまりの歓喜に我を忘れていた綱島だったが、脈々と流れる“緑の血”が身体を自然に動かした。「味スタのバックスタンドで育ってきて、ゴールを決めた選手がゴール裏のサポーターの前まで来てくれるのが嬉しかったし、子供たちに夢を与えられる選手になりたいと思っていたので、身体が勝手に反応したんだと思う」。興奮気味に振り返った。

 東京Vユースから国士舘大に入学し、4年越しに身を包んだ緑のユニフォーム。ユース時代は独特のポゼッション戦術の中で配球役を兼ねるCBだったが、大学で中盤を制圧する潰し屋型のボランチに生まれ変わって帰ってきた。そのうえ今季の東京Vは同じく元CBのMF林尚輝がアンカーを務めていることもあり、綱島はもう一列前のインサイドハーフのような役割を担っている。

「大学時代はどちらかというとアンカーで試合に出場することが多く、なかなかゴール前に顔を出すことはなかったけど、ヴェルディに入ってからは守っているだけじゃこの先も活躍することが難しいと思った。そういったところはヴェルディに入ってから前への意識も強くなった」

 もともと「自分は運動量に自信を持っていて、誰にも負けない。入って戻り切るところも自信がある」という綱島。そこに小倉勉コーチから「ボックス・トゥ・ボックスではなく、ボックスの中にも入って、自陣のボックスの中にも戻るということをずっと言われている」とさらに幅広い働きを求められているといい、この日のゴールはそうした心がけも実ったものだった。

 また新たなポジションを任されるにつれて、かつて共にプレーしていた選手たちからの学びも活きているようだ。

 高校時代は同期のMF森田晃樹(東京V)、1学年下のMF山本理仁(G大阪)とMF藤田譲瑠チマ(横浜FM)とも一緒にプレーしており、「高校までCBをやっていてうまい選手を見てきたので、大学に入ってからボランチにコンバートされてからも彼らの動きは参考になっていた。DAZNでも彼らのポジショニングを見ていた」と綱島。さらに「国士舘大学は基本的に個の大学なので、攻守においての対人の技術が身についた。一つ前のポジションで試合にたくさん出させてもらうことで、危機察知能力や、ここにいたら守れるという予測の部分は成長したと感じている」と国士舘大で学んだものを上積みし、ここまで上り詰めてきたという。

 また彼らに比べても際立つ武器は、188cmの上背とそれを活かした対人能力。欧州ではフィジカルに恵まれた選手が中盤中央を担うトレンドが拡大しつつある中、綱島は「模範にしている選手はたくさんいるけど、一番プレーを見ているのはレアル・マドリーのチュアメニ選手だったり、アトレティコ・マドリーのコンドグビア選手。彼らは守備の強度も、攻撃を広げる力もあるし、得点能力にも優れているので、そうした選手の良いところを全て吸収してオリジナルな選手になりたい」と欧州トップ基準の選手たちからも学んでいるようだ。

 この日のゴールではかつて育ててくれた指導者たちへの感謝も語った綱島。「自分はヴェルディに10年間いたので、いまの自分があるのもヴェルディの育成のおかげ。今までお世話になった人にゴールという結果で恩返しできて嬉しい」。その上で「ただ、まだ1点決めただけなので全然満足していないし、今日は課題も出たので、より良いプレーヤーになれるように頑張りたい」とさらなる野心も燃やしていた。

 サッカー界で成し遂げたいことは山ほどある。「目標にしているのはイングランドのプレミアリーグ。三笘選手も活躍していて、大卒にもチャンスがあると思う。プレミアリーグで活躍する日本人が増えれば良いなと思って、そこを大学1年の時からずっと目指してやっている。プレミアリーグに入るためには日本代表にならないといけない。目標は常に高いところにある」。初先発初ゴールで幸先の良いスタートを切った22歳はまだまだ足を止めるつもりはない。

(取材・文 竹内達也)
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