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バイエルンとの対峙に19歳MF名願斗哉「すごくプレッシャーが速くて…」高卒1年目の身体作りには手応え

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MF名願斗哉

[7.29 Jリーグワールドチャレンジ 川崎F 0-1 バイエルン 国立]

 川崎フロンターレは1点を追う後半38分、右サイドからクロスのこぼれ球が左サイドに渡り、MF名願斗哉の足下にちょうど転がってきた。絶好のシュートチャンス。しかし、高卒ルーキーの19歳はやや力みすぎたか、右に持ち出して放ったシュートはニアポストの左へ。フィニッシュの精度を欠き、バイエルンからゴールを奪うことはできなかった。

 試合後、名願はこのシーンを「後から考えたら結構フリーで、余裕を持ってシュートを決めないといけないシーンだった」と振り返りつつ、「ボールが来た時には相手選手がプレッシャーに来るのが見えて、焦ってシュートに行ってしまった。うまく当てられなくて外してしまった悔しいシーン」と反省。「ああいうところで決められる選手と決められない選手では大きく変わってくる。ああいうのを決められる選手になりたい」と力を込めた。

 名願は履正社高から今季川崎Fに加入した高卒1年目のドリブラー。ここまでの半年間でJ1リーグ戦の出場機会はなく、ルヴァン杯1試合、天皇杯1試合の出場にとどまっていた。それだけにこの日、ブンデスリーガ王者との一戦にはひときわ大きなモチベーションを燃やしていた。

 意識していたのは持ち味の突破力でチャレンジすること。「試合前からずっと(バイエルンの)こういう選手たちに対して自分のドリブルが通用するかどうかを試したかった」。その姿勢はピッチ内でも垣間見せ、左サイドで果敢な仕掛けを披露。「まだ少なかったとは思う」と仕掛けを貫き切れなかった点での悔いは残したが、「何回かそういうシーンを作れたので仕掛けることは良かった」とプレー選択に後悔はなかった。

 とはいえ名願の対面ポジションに入っていたDFヨシプ・スタニシッチをはじめ、マッチアップしていたのはUEFAチャンピオンズリーグの経験も持つDFたち。仕掛ける姿勢は見せていたものの、抜き去るどころか、良い形で剥がすことさえもなかなかさせてもらえなかったことも事実だった。

「すごくプレッシャーが速くて、そんなに来ていないと思っていても自分の中では『来ているな』というプレッシャーを感じた。そういうのをドリブルで剥がしたり、抜いていけたりできるようにならないといけない」。マッチアップを通じて、ワールドクラスとのクオリティーの違いを痛感させられたようだ。

 それでもまだ高卒1年目。トップレベルの戦術、強度、練習ルーティーンに適応する必要があるのは覚悟の上でプロの舞台に飛び込んできた。またドリブラーの資本ともいえるフィジカル面では、着実に取り組みが身を結びつつある様子。「高校卒業してから身体づくりの部分はずっとやってきて、体重も結構増えてきた」(名願)。ウエイトトレーニングや食事量を増やしたことより、プロ入り時に比べて体重は4〜5kg増加したという。

 そうした下積みをピッチ内でのプレーにも活かすべく、いまは「自分の強みのドリブルでの判断」にこだわっている最中だ。「どこでどういうドリブルをするのか、ここは仕掛けていいのかという判断がまだまだできていないと思う。アキさんはそこがすごく上手だなと思うので、どんどん吸収していけたらと思う」。経験豊富なMF家長昭博からも学びつつ、自身のプレーを固めていっている中、この日のプレー選択もそうした意識ゆえの葛藤だったのかもしれない。

 またバイエルンとの対峙では、自身と同じく突破力に強みを持つMFジャマル・ムシアラから大きな刺激も受けた。「ゴールに向かう姿勢がめちゃくちゃすごいなと思った。ベンチからでも脅威を感じられた」。名願は高校時代から「サイドだけでなく中央でも仕掛けられる」という能力を強みと自負してきたが、ムシアラはまさに世界のトップレベルでそれを体現している存在。「サイドに張っているだけじゃなく、真ん中からああいうことができれば相手も真ん中を締めないといけなくなるし、そうするとサイドが空いてくる。ああいう選手がいたらチームの攻撃もうまく回るのかなと思う」。自身が目指すべきプレービジョンも明確になった。

 まずはそうした取り組みの成果を、Jリーグのピッチで発揮していきたいところ。「常にずっと試合に出る準備はしているし、天皇杯でもチャンスをもらっているので、そういうところで結果を残せればまた違う試合のメンバーに入れる。とにかく結果にこだわってやっていけたらと思う」。まずは練習試合から、そしてカップ戦から、与えられたチャンスで結果を出していく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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