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今季J1リーグでVARチェック時間が短縮…要因はオペレーターの貢献と“日本流運用”からの脱却

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オンフィールドレビューに関わるチェック時間は大幅に短縮された

 日本サッカー協会(JFA)の審判委員会は3日、東京都内の新JFAハウスでレフェリーブリーフィングを開き、J1第21節までのビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)に関するデータを公開した。昨季と比較してピッチ脇モニターで映像を再確認する「オンフィールド・レビュー」に要した時間が大幅に短くなっており、同委員会はオペレーターも含めたVARチームの作業速度が上がったとみている。

 同委員会の発表によると、今季開幕からJ1第21節までの間、当該場面のチェックが始まってからオンフィールド・レビューが終わるまでに要した時間は1回あたり79.1秒。昨季はシーズンを通じて117.6秒だったため、約40秒間もの短縮となった。

 大きな要因はVAR、AVAR(アシスタントVAR)らがチェックを行うスピードが上がったこと。その結果、主審が速やかにモニターに向かうことができるようになったようだ。またJFA審判マネジャーJリーグ担当統括の東城穣氏はVARが確認する映像を動かしたり、オフサイドラインを生成するリプレイオペレーターの貢献に目を向けて「そういった方々の力が大きい」と称えた。

 また同委員会は今季から、主審とVARが交信を行う際のコミュニケーションを必要最小限にとどめ、正確性を保ちながらスピードアップにつなげようと取り組んできており、その成果も出ているようだ。これまでは誤審の疑いのある事象が発生した場合、まずはVARが主審に「どのように見たか」を確認するという世界的にも細やかな日本流運用を行ってきたが、その手続きを原則カット。VARが当該場面を見てレビューの有無を決断するという、本来のプロトコル通りの運用を進めてきており、そのこともチェック時間の短縮につながっているとみられる。

 加えて主審がレフェリー・レビュー・エリア(ピッチ脇モニターの前)にとどまる時間も、今季の第21節までは1回あたり39.0秒で、昨季の45.8秒から約6秒間ほど短縮。こちらもオンフィールド・レビュー時と同様、チェック時のスピードが向上したことと、主審とVARのコミュニケーション事項が整理された影響が大きそうだ。

 なお、カタールワールドカップではオンフィールド・レビュー時のチェック時間が66.2秒、レフェリー・レビュー・エリアでのレビュー時間が27.9秒とJリーグの今季実績よりもさらに短かった。カメラ台数、画質、VAR担当役員の人数など環境面に差はあるが、世界基準の正確性とスピードへの追求にも取り組んでいく姿勢だ。

 一方、主審がモニター確認を行わずに判定介入を行う「VARオンリーレビュー」時のチェック時間は今季J1第21節までの間に119.6秒を数え、昨季の114.8秒から約5秒間伸びた。大きな要因は今季から新たに3Dオフサイドラインテクノロジーを導入したことで、作業フローが増加したこと。もっとも、2Dから3Dに移行するにあたって増える作業時間は5秒を上回るため、こちらもVARチームの作業スピード自体は速くなったといえそうだ。

 ちなみにカタールW杯では、VARオンリーレビューにおけるチェック時間は68.3秒と大幅短縮。W杯では、各国リーグに導入があまり進んでいない半自動オフサイドテクノロジーが採用されており、それによって作業を大幅に効率化できることがあらためて明らかになった。

 とはいえ同委員会はこちらの時間も、さらに短縮できるという見方をしている。レフェリーブリーフィングで東城氏が挙げた改善策は2Dと3Dのテクノロジーの使い分け。ピッチの設置面でチェックできるものは原則2Dラインでチェックしつつ、2Dで不明瞭なものは迅速に3Dラインに移っていくことの重要性を強調していた。

 J1第21節までのレビュー数はVARオンリーレビューが24回、オンフィールド・レビューが37回の合計61回。昨季はシーズン全体でVARオンリーレビューが24回、オンフィールド・レビューが46回となっており、VARオンリーレビューが増加した。その主な理由も3Dオフサイドラインの導入により、正確な判定ができるようになったため。その結果、1試合あたりの介入回数は4.37試合に1回から3.1試合に1回に増加したが、FIFA(国際サッカー連盟)が目安としていた範囲に収まった。

(取材・文 竹内達也)
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