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ニッパツだけ異なるVAR運用…「カメラの高さ」でオフサイドライン投影に問題

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VAR運用が通常と異なるニッパツ三ツ沢球技場

 ニッパツ三ツ沢球技場(横浜市)で行われているJ1リーグ戦で、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)システムが他会場と異なる形で運用され続けていることが16日、Jリーグへの取材で分かった。ニッパツはメインスタンドの形状上、正しい位置にゴールラインカメラを設置することができず、同カメラで撮影された映像にはオフサイドラインを投影できない状態が続いているという。

 ニッパツのVAR運用を巡っては、3月3日に行われたJ1第3節の横浜F・マリノスサンフレッチェ広島戦の試合直前、Jリーグ側から「ゴールラインカメラの設置環境により、両ゴールラインカメラによるVARオフサイドラインの投影はせずに運用いたします」という公式発表があった。

 Jリーグでは今季からVARが関わる判定の際、より精度の高い「3Dオフサイドラインテクノロジー」を導入。これに伴い、これまでの16mカメラ(ペナルティエリアのライン横)2台だけでなく、ゴールライン横のゴールラインカメラ2台、ハーフウェーライン横のメインカメラ1台でもオフサイドラインの投影が行えるように設備を増強していた。そうした中、ニッパツではメインカメラ1台、16mカメラ2台の計3台のみが使われるという発表だった。

 またJリーグは翌4日の横浜FC鹿島アントラーズ戦前にも同様のリリースを発表。加えて同日には、埼玉スタジアム2○○2の改修により浦和駒場スタジアムでの開催となった浦和レッズセレッソ大阪戦でも同じ対応を行うと明らかにしていた。

 ニッパツではこの翌週以降も、横浜FCのホームゲームを中心にJ1リーグ5試合が開催。いずれもVAR運用に関する公式発表はなかった。そのため、すでに通常どおりの運用に戻っているかと思われたが、この問題はいまでも解消されていないのだという。

 Jリーグフットボール本部によると、原因はニッパツのメインスタンドの形状。ゴールライン横のメインスタンドは構造物が低い位置にしかなく、カメラを高い位置に設置することができないため、オフサイドラインの描画に必要な角度をつけることができないようだ。

 Jリーグではこの問題が発覚して以降、ニッパツでの試合のたびにVAR機材を使用し、継続的に検証テストを実施。カメラのアームをより長いものにするなど「カメラの高さを上げられないか」を検証してきた。しかし、現状では「風や振動に耐えた上で適切な映像を提供できるようには至っていない」という。

 また、より高い位置にカメラを設置できるバックスタンド側への設備移行も検討したが、映像配信の関係で他のカメラはメインスタンド側に設置せざるを得ないため、判定に支障が出るとしてこの方法は見送り。高いポールなどを新たに立てる案も検討しているそうだが、敷地管理者との調整を進める必要があり、早急な対策は難航している。

 Jリーグは3月初旬の2試合以降、ニッパツでのVAR運用に関する公式発表を行っていなかったが、試合に関わる両クラブには通知済みとのこと。試合2時間前までに検証テストを完了した上で、両チームにその試合での運用方法を報告しているという。

 もっとも、公式発表は行われていないため、サポーターは一般的な運用で試合が行われているという認識を持つ人が大半であろう。こうした事態について、Jリーグの窪田慎二執行役員は「サポーターの方にそういう認識を持たれているのであれば何らかの対応を考えている」とし、公式に説明する意向を示唆した。

(取材・文 竹内達也)
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