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神戸決勝点をめぐってファン混乱…「ハーフウェーラインを除く」の正しい解釈とは

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2つのハーフを隔てるハーフウェーライン

 12日に行われたJ1第32節・浦和レッズヴィッセル神戸の決勝点がオフサイドの可能性として大きな話題になっているが、競技規則の解釈をめぐって混乱も生じている。

 1-1で迎えた後半アディショナルタイム、浦和がFKを獲得するとGK西川周作がゴール前に駆け上がる。しかしハイボールを神戸のGK前川黛也がキャッチし、前線で待つFW大迫勇也へパントキック。大迫は冷静に無人のゴールへ蹴り込んだ。中継映像ではパントキックがされた瞬間の大迫の位置は不明だったが、ファンが撮影した映像などから大迫の左半身が出ていてオフサイドポジションにいた可能性が高まり、SNS上では誤審だと指摘する意見が相次いでいる。

 ここで論争を巻き起こしているのが、競技規則におけるオフサイドポジションの定義だ。西川が前線にいたためキック時に浦和陣内にいた守備側選手はただ一人、DF大畑歩夢だけ。そのためハーフウェーラインがオフサイドラインになるが、オフサイドポジションの要件である「頭、胴体もしくは足の一部でも、相手競技者のハーフ内にある(ハーフウェーラインを除く)」という条文の括弧書きから“ハーフウェーライン上に体の一部が残っている場合はオフサイドにならない“と捉える投稿がX(旧ツイッター)上に散見された。

 この解釈通りだと大迫の右半身はハーフウェーライン上にあるとみられるため、オフサイドにはならない。しかし、実際のところそういった解釈はしない。自陣と相手陣を隔てるハーフウェーラインについて、当該ラインが相手陣内にあるとは見なさないことを示したのが本来の意味だ。つまり攻撃側選手の一部分がハーフウェーライン上に残っていたとしても手と腕を除く他の部位が相手陣内にあればオフサイドの対象となり、ハーフウェーライン上までであれば自陣扱いでオフサイドの対象にはならない。Jリーグ担当副審の八木あかね氏も昨年、X(@otokodetsuraiyo)で「ライン上はオンサイドで、ラインを越えたらオフサイド」と説明していた。

 オフサイドのルールについてはファンから「解釈がわからない!」といった投稿も多く発信されている。これは国際サッカー評議会(IFAB)が作成する競技規則と、日本サッカー協会(JFA)による日本語訳の両方が難しい表現や理解の難しい方法で書かれていることが原因と思われる。当該括弧書き部分は“相手競技者のハーフ”の定義を説明するものだが、「相手競技者のハーフ内にある」の“にある”の後ろに記されているため、条文全体を打ち消すものだと捉えたファンが多くいたと推測される。

 IFAB自身も競技規則の表現が難しいことは認識している。今年7月には「わかりやすい競技規則」と題し、英語で平易な言葉を使用したバージョンを公開。たとえば混乱を招いた「ハーフウェーラインを除く(excluding the halfway line)」という条文は「ハーフウェーラインは考慮しない (the halfway line does not count)」に表現が変更されている。今回の問題は括弧書きの位置を「相手ハーフ内」の後ろに移動することで解決すると思われるが、日本サッカー界に競技規則が浸透するためにも「わかりやすい競技規則」の日本語訳が求められそうだ。
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ゲキサカ編集部
Text by ゲキサカ編集部

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