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PKの駆け引きは公平性重視へ…W杯で話題の点に対処、2023-24競技規則の改正点①

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警告されるGKエミリアーノ・マルティネス

 国際サッカー評議会(IFAB)は23日、2023-24シーズンの競技規則改正内容を発表した。7月以降、世界中の公式戦で順次適用される(Jリーグの適用開始日は後日発表)。

 今回の改正では大きな変更はなく、明確化が基本となった。特にカタールW杯で話題となった事象や混乱を踏まえた不明瞭な点の解消が目立っている。

■アディショナルタイムの計算

 カタールW杯ではアディショナルタイムの厳格な計算が大きな話題となった。大会序盤はその方針が顕著に現れ、イングランド対イランでは前半に14分、後半に10分が追加されるなど試合時間が延長。大会期間中に国際サッカー連盟(FIFA)のピエルルイジ・コリーナ審判委員長は、「より正確な試合停止時間を計算するよう審判員に求めた」とコメントして実際にプレーが行われる時間の増加を期待するとともに、「特にスタジアムにいるファンからポジティブな意見が寄せられた」と手応えを口にしていた。

 この方針は世界中の各大会に波及する見込みだ。今回の改正で「以下のように前半、後半に空費されたすべてのプレーイングタイムを追加する」と示される項目に、「得点の喜び」が追加される。従来から得点したチームが喜んでいる時間はアディショナルタイムに含まれていたが、「プレーの再開を著しく遅らせる行為」の例として補足的に表記されていたため、曖昧な計測がされることも珍しくはなかった。IFABは「得点の喜びはしばしば多くの時間を浪費するため、主審が(アディショナルタイムとして)考慮することを強調するために独立して記載する」と説明している。

 もっともカタールW杯では修正が入ったのか決勝トーナメントからアディショナルタイムがやや落ち着いたように、10分超えの追加時間が今後のスタンダートとはならないだろう。今回の改正やIFAB・FIFAの方針をもとに合理的な運用が期待される。

■PKはGKとキッカーの“公平性”を重視へ

 カタールW杯の優勝国はPK戦で決まった。アルゼンチンGKエミリアーノ・マルティネスは執拗にキッカーを挑発したことでイエローカードを受けるも、様々な方法で相手選手にプレッシャーをかけて2人目のシュートをセーブし、3人目の失敗を誘引。彼の振る舞いに対して世界中から注目が集まった。

 賛否両論を呼んだE・マルティネスの行為だが、IFABはGKの振る舞いに一定の規制を行うことを決定した。現行ルールでもGKがクロスバーなどに触れてプレッシャーを与えることは禁じられ、過剰な挑発は反スポーツ的行為として警告対象だが、より“公平性”を担保する規定が明文化される。

 今回の改正で「GKはキッカーを不当に惑わせてはいけない」という条文がPKの規定に追加された。さらにその例としてボールを遠くに投げたり、キッカーに近づいて離れなかったりする行為が該当する「キックが行われるのを遅らせる」ことや、従来の「ポスト、クロスバー、ゴールネットに触れる」ことを記載。「GKは試合や対戦相手へのリスペクトに欠ける行為をしてはいけないことを明確にした」とIFABが説明したため、PKは各選手の技術がより重要なものとなりそうだ。

■フランスメディアの“細かすぎる”指摘に対応

 もう一つW杯決勝を踏まえた明確化が行われた。FWリオネル・メッシが延長後半3分に記録した得点について、フランスメディアの『レキップ』がゴール時にアルゼンチンのベンチメンバーがピッチ内にいたことを写真付きで紹介し、不正なゴールだったと報じたことに関してである。

 現在の競技規則では「主審は、(ピッチ内にいた)部外者が次の場合、得点を認めてはならない」「得点したチームの競技者、交代要員、交代して退いた競技者、退場となった競技者またはチーム役員であった場合、プレーは、部外者がいた位置から直接フリーキックで再開される」と記載されている。要するに得点側の控え選手や監督・コーチがピッチ内にいた場合はノーゴールとする旨が書かれており、仏メディアの指摘は妥当とも受け取れる。

 しかし、「得点後、プレーが再開される前に、主審が得点があったときに競技のフィールドに部外者がいたことを分かった場合」という前提があることや、そもそも厳格に罰した例をほとんど耳にしないことから、この指摘は実際の運用に即していないものとされた。

 また、決勝で主審を務めたシモン・マルチニアク主審は、FWキリアン・ムバッペの得点時にフランスの控え選手がピッチ内にいたことを示す画像を母国・ポーランドでの会見で紹介。ファンからは『レキップ』に対して「負け惜しみにしか聞こえない」などの意見が寄せられていた。

 こうした事案を受け、IFABは即座に対応したようだ。「プレーに影響を与えない人物の(得点時の)侵入を主審が罰することは競技規則が求めるものではない」として、「その人物がプレーに影響を与えた場合」という条文を追加。これまでの運用を明文化している。

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