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記憶に残る戦友・工藤壮人の姿…広島MF青山敏弘「頼もしかった。本当にいい奴なんですよ」

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MF青山敏弘が工藤壮人への思いを語る

[10.22 ルヴァン杯決勝 C大阪1-2広島 国立]

 劇的な初優勝を味わった。しかし、その朝にはかつての戦友・工藤壮人の訃報が届いていた。MF青山敏弘は工藤の姿を思い返す。「FWだったので、自分に要求してくる姿は頼もしかった」と偲んだ。

 ルヴァン杯初優勝は謙虚に喜んだ。90分間での出場はなく、ベンチから戦う姿勢を見せた。ハーフタイムにはサポーターの応援も鼓舞した。「サポーターの皆さんには、先週も含めてずっと悔しい思いをさせてきた。今日は一緒に戦っていると示したかった」。サポーターも含めてチーム一丸となり、ともに頂上からの景色を味わった。

 準優勝に終わった16日の天皇杯決勝はメンバー外。悔しさを抱えながら5日間を過ごし、ルヴァン杯決勝ではベンチに入った。「ひとつでも力になりたかった。けど、僕が優勝させるということではなくて、優勝させてもらおうと。みんなに思いっきり力を借りて、自分もカップを掲げさせてもらうという思いを持って来ました。まさにその通りになった」。本心は自身のプレーでチームを牽引したかったのかもしれない。そんな思いも垣間見せる。

「最後に出てやろうと思って着替えていたんです。さっき気づいたんですけど、もう交代3回切っていたのでそれは無理だった。それくらい出たかった思いがある。みんな勝ちたかったという思いが伝わったので、ピッチに立っても立たなくても、ユニフォームを着てみんなで喜べたのが一番。みんなに感謝します」

 青山は広島一筋で多くの選手とともに過ごしてきた。その一人である工藤が21日に32歳の若さで亡くなった。昨夜は決勝に備えて早く休んでいた選手たちは、朝に一報を聞いたという。「言葉が出ないですよね」(青山)。2シーズンをともにした工藤の姿を思い返す。

「FWだったので、自分に要求してくる姿は頼もしかった。本当にいい奴なんですよ。誰にでも変わりなく接するというのは、みんなができるわけではない。プロフェッショナルというのは、ああいうことだなとみんなわかっていた。そういう遺志を、広島というチームは絶対に引き継いでいけると思っている。それがなければ広島じゃない。自分もその遺志は引き継いでいきたい」

 きょうの決勝を、工藤と「一緒に戦っていた」と表現する。「僕たちは工藤とともに戦った。それは間違いない。力を借りて、きょうは一緒に戦いました」(青山)。広島の一員である男に、静かに感謝を伝えた。

(取材・文 石川祐介)
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