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U-17、U-16代表候補MFや日本一経験持つDF、名門の主力・・・世界懸けた「THE CHANCE」でタレントたちがアピール合戦

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 26名の精鋭が世界へ王手をかけた――。ナイキジャパンは21日、世界で戦える若きフットボールプレーヤーを探す世界規模のスカウトプロジェクト「THE CHANCE」のジャパンファイナル1日目を行い、全国4会場のセミファイナルを勝ち抜いた選手と、全国各地を訪問するナイキスカウトから参加権を得たプレーヤーの総勢47名が参加。国内スカウトを統括する風間八宏川崎フロンターレ監督と内藤清志筑波大ヘッドコーチ、小林大輔筑波大コーチの選考委員が見つめる中、フィジカルテストやポジション別テスト、11対11のゲームテスト(30分)のセレクションを行い、1次選考突破の26名を決定した(26名はコチラ)。22日には埼玉スタジアム2002で行われる45分ハーフのファイナルゲームなどで“日本代表”3名を決定。選出された3名は、世界55か国の各選考会を突破した計100名が参加するグローバルファイナル(8月19日~26日、スペイン)に進出し、そのグローバルファイナルで最終16名に残れば、ビッグクラブをまわるスカウティングツアーでマンチェスター・U(イングランド)やユベントス(イタリア)など世界の名だたるアカデミーチームと対戦し、プロ契約を勝ち取る絶好のチャンスを得ることができる。

「最後まで凄く集中力の高いプレーを見せてもらったので、見ごたえがありました。プロでも(これだけのプレーを)2、3時間続けられない。エネルギーを感じました」。初日のセレクションを終えた風間氏は選手達の奮闘ぶりに賛辞を惜しまなかったが、その言葉通り、一次選考突破を目指す選手達のプレーからは「世界へ」という熱い想いが十分に感じられた。

 開会式で風間氏から「自分の個性を出してください」とメッセージを受けた選手たちは、垂直跳び、20mダッシュ、アジリティ(矢じりダッシュ)、シャトルランでまずは身体能力をテスト。続いて中盤は3対3、FWとDFは3対2の攻守と、技術と体力も測られるポジション別テストを重ねていく。そして初日のセレクションの最後のメニューとして47名をA、B、C、Dの4チームに分けた30分のゲームテストを実施。Aチーム対Bチームでは、開始直後に左サイドから切れ込んだFW三橋秀平(前橋育英高、Bチームが)がいきなり先制ゴールを叩き込む。

 その後もタイミングのいいパスでゲームをつくるMF片岡立綺(桐蔭学園高)とフリーランニングを繰り返した10年U-16日本代表候補MF山之内優貴(鹿児島実高)、そしてMF岡庭裕貴(横河武蔵野FCユース)、三橋のキープ力を活かして攻撃するBチームに対してAチームは2年前の全国高校選手権決勝に先発出場し、U-17日本代表候補歴も持つMF林祥太(久御山高)が下がり目のポジションで攻撃を組み立て、MF佐藤涼磨(矢板中央高)が素早い攻守の切り替えから相手の弱点へ的確に走りこむ。また両翼から縦に切れ込むMF仙頭啓矢(京都橘高)とMF木曽航平(中央学院高)が決定的なクロスを供給すると、8分にはキープ力に優れた技巧派MF牧原一紀(矢板中央高)のスルーパスからFW高田悠斗(中央学院高)が決定機を迎え、16分には木曽のラストパスからFW二反田祥平(鹿児島実高)が決定的なシュートを放った。

 ただBチームは豊富な運動量を発揮した戸田駿(大森FC)とDF池田リアンジョフィ(仙台大)、DF楠本卓海(大成高)の3バックが安定。AチームもDF西山雄介(横河武蔵野FCユース)とDF貫井優也(東大阪大柏原高)が相手アタッカーの前に立ちはだかるなど得点を許さない。そして非常に大きな声でチームを鼓舞していたFW松川哲朗(都立豊島)投入からAチームは逆転に成功する。16分、松川が鮮やかな左足のコントロールショットをゴール左隅に決めて同点に追いつくと、25分には佐藤のインターセプトから二反田が左足シュートを決め、Aチームが逆転勝ちした。

 Cチーム対Dチーム戦ではDチームのFW木下稜介(滝川二高)が試合を動かした。10分、左サイドからゴール前を横切るようなドリブルで右中間にまでボールを運ぶと、DFをかわしてPAへ切り込み、右足シュートで先制ゴール。対するCチームはGK吉田稜(青森山田高)からボールを繋ぎ、中盤の底に位置するMF木村健太(鹿児島実高)とMF斎藤朝太郎(かえつ有明高)らが攻撃を組み立てると、左のFW田畑文也(久御山高)、右のFW早田晃盛(久御山高)の両翼が個人技で相手DFに穴を開ける。そして13分には左サイドから仕掛けた田畑のスルーパスをMF松村哲太(鎮西高)が中央へ折り返し、最後は逆サイドから詰めたFW山本知伯(県立西宮高)が同点ゴールを決めた。

 だが、試合を決めたのはDチームの滝川二高(兵庫)コンビだった。22分、MF高畑智也(滝川二高)が前方の木下へ楔を入れると、DFと入れ替わりながらそのリターンを受けた高畑が中央を独走。DFを引き付けて左前方へ出されたラストパスをMF岡崎涼(帝京安積高)が決勝ゴールを流し込んだ。Cチームは終盤、昨年の全国高校総体優勝メンバーの桐蔭学園高(神奈川)DF冨澤右京が「これがひとつのチャンスなんで、ここで世界へ行けるように熱い気持ちで臨んでいました。このままじゃダメかなと思ったんで、最後意地見せてやろうと」と驚異的な突破力を披露。25分、28分と豪快な中央突破をしてビッグチャンスをつくり出した。だが交代出場のFW寺田和之(早稲田ユナイテッド)が正確なポストプレーを見せるなどリズムを失わないDチームは、フィードも安定していたDF佐々木慎太郎(滝川二)とDF酒井隆也(日本工学院F・マリノス)、GK亀岡秀平(桜宮高)がシュートにまで持ち込ませず、1点リードを守り切った。

 世界への挑戦者決定まであと1日。セレクション後に発表された26名に名を連ね、最終選考に駒を進めた山之内は「きょうは落ちるかと思った。ボールを受ける回数が少なくてアピールできなかった。もっと積極的に話したり、そういうところをやっていかないといけない。あすはどんどんボールを受けて仕事ができるのが一番だと思う」と意気込み、林は「こんなチャンスは滅多にないんで絶対に選ばれて海外のビッグクラブに行きたい。今の夢はこれで3人に残ること。でも気張るんじゃなくて、ボクは冷静に楽しくやることを心がけている。笑顔で最後までいられるようにしたいです」と誓った。

 風間氏は最終選考へ臨む選手たちへ向けて「きょうくらい自分の力を信じて頑張ってほしい。あす、強烈な個性を見せてほしい」とエールを送った。埼玉スタジアム2002という最高の舞台で戦う26名。ライバルたちに差をつけ、世界へのチケットを勝ち取るのは誰だ――。

(取材・文 吉田太郎)

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