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「世界への思い」ぶつかり合った「THE CHANCE」東北ラウンド、才能出し切った4選手がジャパンファイナルへ

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「THE CHANCE」の国内選考会がいよいよ幕を開けた。ナイキジャパンは6月30日、世界で戦える若きフットボールプレーヤーを探す世界規模のスカウトプロジェクト「THE CHANCE」のセミファイナル「東北ラウンド」を宮城県の仙台大船岡南グラウンドで開催。45名が参加した「東北ラウンド」をMF岡崎涼(帝京安積高)とFW皿良優介(尚志高)、DF佐藤翔太郎(尚志高)、DF池田リアンジョフィ(仙台大)の4選手が突破し、7月21日と22日に都内近郊で開催されるジャパンファイナル(計50名が参加)へ進出した。

「THE CHANCE」とはプロ契約を交わしていない若きフットボールプレーヤーを対象とした世界各国で実施されるセレクションプロジェクト。バルセロナ(スペイン)のユースアカデミーで開催されるグローバルファイナルには、世界55か国のセレクションを勝ち抜いた計100名が参加する予定だ。グローバルファイナルでは世界レベルのコーチ陣とスカウト陣が見守る中、厳しいトレーニングとセレクションに参加。ここで自らの才能と大きな可能性を示すことができれば、スカウトされ、海外でプロ契約を勝ち取るチャンスも得ることができるという非常にスケールの大きな国際プロジェクトだ。

 今回、“日本代表”としてグローバルファイナルに参加する選手は3名。その3枚のチケットをかけた戦いが仙台からスタートした。選手権全国4強の尚志高(福島)から皿良主将や11年U-16日本代表DF佐藤、U-16韓国代表MF高慶汰、ナショナルトレセンの経験者であるFW堀江一博の4選手が参加したほか、全国8強へ進出した10年国体福島県選抜で10番を背負っていたFW阿部祐機(富岡高)や、東北を代表する強豪、仙台大からも1年生10名がエントリーするなど、「東北ラウンド」のセレクションは白熱。全国的に無名ながらも評価を勝ち取った帝京安積高(福島)の岡崎が「実際に受かると思っていなかったので、ビックリしました。みんなレベル高いので、その中で残れるかどうか心配だったんですけど、名前を呼ばれて嬉しかった。大事なことは自分を出すこと」と振り返ったように、一日のセレクションで自分を出し切った4名が国内最終予選へ駒を進めた。

 午前10時30分からスタートした「東北ラウンド」は20m走の計測からスタート。そして6、7人ずつのグループに分かれてピッチの外周を3週する持久走では、岡崎とMF黒川優介(仙台南高)らがデットヒートを繰り広げ、MF千葉祥(仙台大)がトップタイムをたたき出す。そして10分間3本を行った5対5では高がプレッシャーのかかる中央で正確なダイレクトパスを通し続けたほか、阿部が身体能力の高さを披露し、またMF伊藤大騎(帝京安積高)が豊富な活動量と声で存在感を発揮するなどそれぞれがアピール。特に「自分はボールを受けなきゃ何も始まらないので、ボールを受けることを考えていました」と動き回る皿良ら尚志勢の動き出しの速さや、大学生たちの落ち着いたゲームコントロールが際立っていた。

 そして約40分間の休憩を挟んで迎えた午後のセレクションでは中盤とSBが3対3。FWとCBは3対2のアタックディフェンスでその能力をテストされた。延々と続く3対3では運動量、精度の差が出てきてしまう。このポジション別のテストが終了した段階で人数は45名から32名へと絞られ、3チームによる30分3本のゲームテストで最後の審判が下された。
 
 1本目は、ビブス無し組の前線でFW新井伶治(仙台大)が技術の高さを発揮し、FW石川隆太(仙台大)がゴール。だが、ビブス組は堀江のスルーパスからMF橋本大樹(帝京安積高)が折り返し、DF古沢友希(仙台大)がGKの頭上を抜く技ありミドルを決めると、試合終了間際には右MF増澤優(仙台東高)が豪快な右足ミドルを突き刺して2-1で勝利した。2本目は皿良が右足ミドルをゴール左上へ叩き込み、左サイドからゴール前へ飛び込んできたMF加藤聖也(仙台西高)のゴールで1-1。3本目はMF曽我将也(仙台大)のラストパスから阿部がゴールへと流し込んで結果を残した。

 即席チームだったため、ゲームテストではコンビネーションの不安が露呈。スカウトたちから「ここからは怖がらないでやってほしい」と送りだされた選手たちは、それぞれが声を出して「世界を懸けた」ライバルでもあるチームメートたちを鼓舞し、自分の良さを出そうとしていたが、強い日差しと気温25度の暑さも影響してか、運動量が低下し、全体的にミスも増えていた。その中でスカウトたちは1日を通して技術と体力、そして「ハングリー精神、上に行きたいという気持ちというものは物凄く大事」と精神面も含めて選考。担当したリー・マンソン氏は「皿良はゲームチェンジャーとしてゲームの中で目立っていた。実際に点を取っていましたし、物凄いいいシュートを撃っていた。また6本、7本のシュートシーンも作れていた。岡崎は皿良と同じチームで戦っていたが、彼ら2人はボールを持っていないところでの動きが他の選手たちよりも秀でていたと思う」という皿良と岡崎を評価。また「あれだけ力強いセンターバックがいると、実際に他の選手のモチベーションも高まる」と評価された池田、そして「最後のパスはあまり多くの選手が見れるシーンではない。ビジョンが違う。ああいうパスコースを見つけるということは、コーチが指導して身につけることはできない」とゲームテストの3本目終了間際にプレッシャーを受けながらも中央でフリーの味方に出した決定的な縦パスなどを評価された佐藤の4名が、ジャパンファイナルへのチケットを受け取った。

 目標の世界へ一歩前進した佐藤はジャパンファイナルへ向け、「今回、自分が受かったけれど、天狗にならずにこれからさらに練習して、上手くなってチャレンジしたいです」と宣言。また唯一大学生で合格した池田は「選ばれたからには、東北の代表として上のステージでやれるように、自分の出せることを出してやっていきたいなと思います」と意気込んだ。彼らと世界を懸けてジャパンファイナルで争う選手は「誰だ」。7月7日には福岡県内で2回目のセミファイナル、「九州ラウンド」が実施される。

(取材・文 吉田太郎)

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