[4.26 全国自衛隊大会準決勝 陸自習志野2-1空自3補]

　全国の自衛隊基地・駐屯地で活動するサッカーチームの日本一決定戦「第48回全国自衛隊サッカー大会」男子の部は、26日に駒沢補助競技場で準決勝2試合を行い、第1試合では陸上自衛隊習志野駐屯地(陸自習志野)が2-1の逆転で前回優勝の航空自衛隊入間基地第3補給処(空自3補)を下し、初の決勝進出を決めた。

　試合開始直後、空自3補は最初の攻撃で右MF小木曽真悟(3曹・武蔵越生高出身)が抜け出し、相手GKをかわそうとしたところで倒され、PKを獲得。エースの真木基希(士長・米子北高出身)がPKを決めて先制に成功した。勢いに乗った空自3補は、前半4分に左CKを左DF山本雄也(士長・浦和東高出身)がヘディングシュート、前半6分には山本のクロスに真木が合わせるなど攻勢に出たが、追加点は奪えなかった。すると、陸自習志野は前半7分にカウンターで応戦した。これまでとは布陣を変え、センターバックから中盤のアンカーにポジションを移していた主将の今岡和夫(3曹・大社高出身)が右サイドをオーバーラップしてクロス。長身FW小沼拓矢(士長・桃山学院大出身)がキープしてからラストパスを送り、最後は左MF渡邊修宏(3曹・郡山商高出身)が押し込んで同点とした。前半は1-1のイーブン。空自3補が圧倒的なポゼッションを見せたが、陸自習志野は堅い守備ブロックで応対。疲労した状況でも体の軸がぶれずにクリアをしっかりと飛ばすため、守備のバランスが崩れたまま波状攻撃を受けることはなく、我慢の展開に持ち込んだ。

　後半も空自3補が攻める時間が続いた。後半7分に左MF七戸翔太郎(士長・関東一高出身)がミドルシュート。同8分にはFKを山本がヘディングでそらして惜しい場面を作り、さらに直後には相手守備ラインの背後に真木が抜け出る決定機を迎えたが、前に出てきた相手GKに防がれた。チャンスの後には、ピンチあり。耐えていた陸自習志野は、後半12分に左ショートコーナーから仕掛けると、中央へこぼれたボールをCB大林竜馬(1士・秀岳館高出身)がたたき込んで逆転に成功した。空自3補の選手兼監督を務める熊谷哲平(2曹・大東文化大出身)が「前線の真木に当てて(中盤に)落として、相手のDFラインが前に出てきたところでうちの選手が飛び出していけば(相手と)入れ替われるという狙いがあって、序盤で簡単にPKを取って先制することができた。そこまでは良かったけど、失点した後にミスが続いてしまった。あのセットプレーは、ビデオで見て分かっていた。ミーティングでも話していたけど、あの瞬間にマークが外れてしまった。冷静になれなかったのかもしれない。何を言っても言い訳になる」と肩を落として振り返った場面だ。

　空自3補は終盤、パワープレーに打って出たが、陸自習志野は広範囲でカバーリングを見せたCB藤井光明(3曹・第一経済大出身)と立ち上がりの失敗から立ち直ったGK藤田龍太(士長・那須拓陽高出身)の好守でしのぎきり、2-1での逃げ切りに成功。前回王者を破る金星を挙げた。今岡主将は「何が何だか分からない。ポゼッションに対して堅守速攻で対応するというセオリーをそのままやっただけ。むやみにプレッシャーにはいかず、しっかりと引いていたので、相手が回している時間は休憩になった。うちは、チャレンジャー。相手がどこだろうが関係ない。そういう姿勢がうまく結果につながったと思う。(戦ってきた)陸自滝ヶ原、空自小松、海自徳島、空自3補の分まで戦って優勝したい」と興奮気味に喜びを語った。

　チームは、初の決勝トーナメント進出から一気に駆け上がってきた。GK藤田は「立ち上がりはテンパって(精神的に追い込まれて)、突っ込んでしまった。ただ、その後は落ち着いて行けた。決勝まで来るつもりでやってきたし、予選ラウンドから無失点で来ていたので手応えはある」と前回王者の撃破で自信を深めた様子だった。陸自は演習が多いため、海自や空自に比べて選手の確保が難しい面がある。実際に、近年は海自と空自によるタイトル争いが続いており、陸自勢の決勝進出は8年ぶり。池田浩監督は「陸自の代表として嬉しい。陸自でもできるんだというのを見せたい気持ちはある。ここまで来たら優勝しかない」と翌日の決勝戦にかける気持ちを話した。翌27日に味の素フィールド西が丘(12:30キックオフ)で行われる決勝戦では、最多16度の優勝を誇る海自厚木マーカスと対戦する。

[写真]勝利決定の瞬間、喜ぶ陸自習志野

(取材・文　平野貴也=フリーライター)