[6.3 全国高校総体宮城県予選決勝 仙台育英4-2聖和学園 宮城ス]

　平成25年度全国高校総体「2013 未来をつなぐ 北部九州総体」サッカー競技宮城県予選の決勝、仙台育英対聖和学園戦が3日、宮城スタジアムで行われた。攻撃サッカーを標榜するチーム同士ということで派手な打ち合いになったが、カウンター攻撃の鋭さで優った仙台育英が4-2で勝利し、9年ぶりの優勝、全国大会出場を決めた。

　仙台育英は形式上は3-4-3だが、左WB阿部航(3年)が下がって、右WB小牧将(2年)が前に出て試合展開により4-4-2にも変化する。FW長沼昌志(3年)は前日の準決勝で接触プレー時に記憶が飛び、救急搬送されたが、プレーに支障がないことが確認され、先発出場となった。一方の聖和学園は4-4-2の布陣。共に準決勝と同じ先発メンバーで臨んだ。

　立ち上がりから互いにディフェンスラインを高く上げ、共に高いディフェンスラインの背後のスペースへの飛び出しを狙い、果敢に攻め合う展開となった。そして先制したのは仙台育英。前半7分、左サイドに空いたスペースへ飛び出したのは左WBの阿部。長沼とワンツーを仕掛けてゴール前まで駆け上がって右足でシュートを決めた。

　勢いに乗った仙台育英は次々とカウンター攻撃からチャンスを作った。15分、MF樫崎友裕(3年)の縦パスを受けた長沼が、相手DFラインの背後のスペースに抜け出してそのままゴールを決めて2点目。28分にはFW白岩諒大(3年)からのパスを受けた長身FW浅田湧太(3年)のミドルシュートがゴール右上隅に決まって3点をリードした。

　しかし聖和学園も自慢の「魅せるサッカー」を貫こうとドリブル突破からチャンスを作った。33分、中央でボールを持ったMF荒木駿成(3年)からのパスを受けたMF山本理久(3年)が強引に中央突破してゴール前に抜け出しシュートを決めた。聖和学園らしいドリブルを武器にした攻撃で一矢報いたが、前半は3-1と仙台育英がリードして終わった。

　後半は追いつきたい聖和学園がドリブル突破で仙台育英守備陣をこじ開けようとしたが、仙台育英はキャプテンの早坂洸輝(3年)が「聖和とは入学してから6回目の対戦で慣れている部分もあった。(相手のドリブルは)1対1だと厳しいので複数人でボールを奪って、その後の速攻が一番効く」と語る通り、仙台育英はチーム全員での厳しい守備から速攻へとつなげて逆にチャンスを作った。

　そして15分、仙台育英は左WB阿部のボールカットから再び相手DFラインの背後のスペースを突き、阿部のクロスボールを浅田が右足でゴールに押し込み、この日2点目となるゴール。4-1とほぼ勝負を決めた。

　聖和学園も最後まで諦めずドリブル突破を仕掛け続け、アディショナルタイムにMF鈴木和豊(3年)の縦パスから背後のスペースへ抜け出した途中出場のFW柏木拓也(3年)がゴールを決めて2点差にまで詰めたが、直後に試合終了。仙台育英が4-2で勝利した。

　仙台育英の城福敬監督は「昨年の今大会決勝は走り負けて0-1で力負け。悔しいから選手権で頑張って全国へ行った。しかし全国のレベルはこんなものじゃないと肌で感じて悔しさと喜びが半分ずつあった。春の鹿児島・沖縄遠征はほとんど勝てなくてすごく勉強になった。プリンスリーグ東北はその経験から最初連勝したが、その後だんだん東北の水に逆に慣れてしまった。そういう経験があったので、強い気持ちで臨めた」と語った。昨シーズン主力だったメンバーが多く残った仙台育英。この1年間、貴重な経験を積んできた選手たちは、準決勝の東北学院戦のようにリードされても、この日のように失点を喫しても、決して慌てなかった。キャプテンの早坂は「高校総体は初めてだが、宮城代表として一つでも多く勝てるように、優勝できるように頑張りたい」と語った。切れ味鋭い高速カウンター攻撃が武器のチームはたくましさを増して、全国の舞台へと乗り込む。

　一方の聖和学園は敗れはしたものの、最後までドリブルで相手を崩す、「魅せるサッカー」へのこだわりを貫き、最後まで諦めずにゴールを狙い続け、2点差にまで詰める意地を見せた。「みんな聖和のサッカーがやりたくて入ってきた子達ばかり」と語る加見成司監督。今シーズンはプリンスリーグ東北から降格し、宮城県リーグ1部で戦っているが、「準備の期間が長くできた」とそれもプラス材料に変え、決勝の舞台まで上がってきた。「いつ魅せるの?今でしょ!」という現在大流行中のフレーズを数年前から横断幕で使っている聖和学園。敗れはしたが、彼らのサッカーは大会を通じて十分に観客を魅了していた。
　
(取材・文　小林健志)

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