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前例なき6時間決戦に敗れるも観客を魅了…昌平は「確固たる技術」を武器に冬制覇へ

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昌平高は猛追及ばず、3位に。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.12 総体準決勝 桐光学園高 3-2 昌平高 鈴鹿]

 2年ぶり2度目の4強に駒を進めた埼玉の新鋭、昌平高は、2回戦、3回戦に続く大逆転劇を再現することはできなかった。

 前半からボールを支配し、ゲームを優位に進めるも桐光学園高の好守に阻まれゴールをこじ開けることができない。「流れの中から決められなかったことが悔やまれる」(藤島崇之監督)という昌平は、後半5分にCKから先制点を奪われると、前がかりになった背後を「スペシャルな技術を持った選手」(藤島監督)という桐光学園FW西川潤(2年)につかれて2失点目、さらに直後のCKでも加点を許し、後半開始からの10分間で3点を失ってしまう。

 それでも、4時間半の中断明けからは怒とうの攻撃を見せる。集中力を切らさずにゲームを再開すると、雷雨で水を含んだピッチは前半以上に昌平のパスワークを冴えさせ、ハーフサイドゲームを展開する。

 MF原田虹輝(3年)を起点にボールを動かしながら、高い位置を保つDF堀江貴大(3年)、DF吉田航(3年)の両SBから仕掛け続ける。隙があれば中央突破を試み、MF須藤直輝(1年)、MF渋屋航平(3年)が危険なゾーンまでボールを運んだ。

 その成果が実ったのが後半20分。MF木下海斗(3年)が左サイドからドリブルでゴール前まで切り込み、混戦からFW森田翔(3年)が押し込んで反撃体制に。再び雷雨による25分の中断を挟み、残り3分で再開されても昌平は押し込み続ける。

 左サイドのアーリクロスから渋屋が落とし、森田がシュートブロックされるも最後は須藤が押し込み、ついに1点差まで詰め寄ったが、このゴールと同時にタイムアップ。「あと1分でもあれば」、「2度目の中断がなければ」、そんな声が観客席から漏れるほど期待を抱かせる展開だった。

 藤島監督は「桐光学園さんが試合巧者だった」と振り返るが、「それでも評価できることもあった。(3点ビハインドの状況で)しっかり2点を取りながら、もうひとつ、ふたつ、ワクワクするような展開にすることはできたのかな」と観客を魅了しながらも選手が成長したことを感じていた。

 2年前、MF針谷岳晃(現磐田)、MF松本泰志(現広島)を擁し、初出場で4強まで進出したチームも冬の選手権に出場することは叶わなかった。今年のチームは2年前を経験した「主将のDF関根浩平(3年)がその悔しさを知っている」(藤島監督)ことが力の底上げになっている。

 今大会、最も観客を魅了した昌平サッカーは「平常心で発揮する確固たる技術」(藤島監督)をさらに磨き上げ、冬に4強以上のさらなる高みを目指す。

(取材・文 石井健太)
●【特設】高校総体2018

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