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FKが2度もクロスバー直撃。海星のGK栗村真尋が有する圧倒的なキックの才能

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圧倒的なキックの才を有する海星高のGK栗村真尋

[5.29 インターハイ三重県予選準決勝 海星高 2-0 四日市工高 鈴鹿]

 キャプテンであり、守護神でもある男は、冷静な口調で物事を的確に話していく。「キャプテンだから特にこうしようとは思っていなくて、去年も後ろから支えようと考えていたので、今年もそれは継続したいですね。去年も気合は入っていたんですけど、今年は自分の代ということもあって去年以上に気合は入っているので、年下の選手に声を掛けたりというのは意識してやっています」。海星高を最後尾からまとめるリーダー。GK栗村真尋(3年=ヴィアティン三重U-15北勢出身)の存在が、チームにとってとてつもなく大きなものであることに、疑いの余地はない。

「狙い通りではないですけど、中に合わせに行こうと思っていたのが、たまたまって感じです」。開始2分。自陣から栗村が蹴ったFKは、ワンバウンドしながらクロスバーを直撃する。関係者からも感嘆の声が漏れたが、本人にそれほどのことをしたという意識はほとんど感じられない。

 さらに後半10分にも、再び栗村のFKがクロスバーを叩く。「アレはミスキックでした」と本人は振り返るものの、1試合でGKのFKが2度もクロスバーに当たるシーンは、なかなかお目に掛かれない。「ハーフウェーライン付近のFKはみんなが信頼して『オマエが蹴れ』って言ってくれるので。あまり点が入ったことはないですけど(笑)」。海星にとって相手に与えるメンタル面の影響も含めて、この男のキックは大きな武器だ。

 忘れられない光景がある。昨年の12月31日。大みそかの浦和駒場スタジアム。全国大会の1回戦で海星のゴールマウスを託された栗村は、自らの無力さに打ちひしがれていた。「自分は悔しさすらなかったんです。何もできな過ぎて、逆に『それはそうだよな』と納得してしまって。自分は何もできていないし、『こうなるよな』と思ってしまったんですよね。相手の力強さに圧倒されて、自分のプレーも何も出せずに、武器のキックも1本出せたぐらいで、正直もうちょっと通用すると思っていたので」。鹿島学園高との一戦はスコアこそ0-1だったが、点差以上の衝撃を味わうことになった。

 その借りを返す舞台として、もちろん同じ舞台を見据えていることは言うまでもない。「だから、今年はまず全国大会に出場してからが本番だと考えていますし、それを目指すというのはチームにも言い続けているので、それは全員が思っています」。やられたままでは終われない。その日が来るまで、ひたすら自分を高めていく。

 個人としても、さらなる成長を期している。「最低限の所で、全国で通用するキーパーになりたいなと思っていますし、そこから上は努力次第だと思うので、できるだけ上を目指していきたいです。キーパーは結局止められれば何も言われないですし、ゼロで抑えていれば何も言われないですし、最近は『キックの良さはもうわかった』と言われることも多くなってきたので、シュートストップはもっともっと磨いていきたいと思っています」。

 大事な試合の前に見るのは、マンチェスター・シティのエデルソンと浦和レッズの西川周作の動画。GK界における世界と日本の最高峰の“キッカー”を目標に、栗村がまずは自らが守る海星のゴールに鍵を掛け続ける。

(取材・文 土屋雅史)
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