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「こんなに順調に…」柱谷哲二TAの下で強化5年目、花巻東が初の全国切符!専大北上に5発大勝:岩手

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インターハイ出場を決めた花巻東高

[5.30 インターハイ岩手県予選決勝 花巻東5-0専大北上 遠野運動公園陸上競技場]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」サッカー競技(徳島)の岩手県予選決勝が30日に行われ、花巻東高専修大北上高に5-0で大勝し、初の全国大会出場を決めた。

 かつて闘将と呼ばれた男は、優勝旗を手に何度も写真撮影に応えるイレブンを柔和な表情で見つめていた。「こんなに順調に進んでいいんだろうかという感じ。学校の助けがあってこそかなと思います」。2018年より5か年計画を掲げ、柱谷哲二テクニカルアドバイザー(TA)の下で強化を進めてきた花巻東高が、学校史に新たな一ページを加えた。

 昨年11月に行った新人戦決勝に続く、専大北上高との決勝戦。同大会で初の岩手県制覇を果たし、2冠を目指す花巻東高だったが、相手の専大北上は昨年まで2年連続でインターハイに出場し、県予選の決勝自体も4年連続で進出している近年残す実績は県内屈指の学校。この日も接戦になることが予想されていた。

 しかし序盤から花巻東は自慢の3トップを中心とした迫力十分の攻撃で相手ゴールに迫り続けることになる。そして前半3分のファーストチャンス、右FW加々美敦己(3年=レジェンド熊谷)、左FW中村翔大(3年=ヴェルディSS岩手)が絡んだプレーから生まれたこぼれ球を主将FW作山寛都(3年=ヴェルディSS岩手)が左足で豪快に突き刺し、先制点が決まる。

 勢いに乗る花巻東は、ロングスローやセットプレーからチャンスを量産。前半12分のDF船山智哉(3年=ヴェルディSS岩手)の左ミドルはGK野村明史(2年=ヴェルディAJUNT)の好セーブに遭い、直後のCKの流れからDF及川真ノ介(3年=ヴェルディSS岩手)が打ったシュートも右ポストに嫌われたが、同23分、MF八重樫優成(3年=ヴェルディSS岩手)から出されたパスでエリア内に入った作山の右クロスを中村がボレーで合わせて、欲しかった追加点が決まった。

 後半立ち上がりはハーフタイムで修正の入った専大北上にボールを持たれるが、後半6分、作山のスルーパスで抜け出した中村が冷静にゴールネットを揺らして加点。中学時代を過ごしたヴェルディSS岩手時代から続くホットラインで相手の反撃の芽を摘むと、同12分にはCKで生まれた混戦を加々美が押し込んで4点目。さらに同16分には右サイド深くに侵入した加々美の折り返しをMF工藤琉音(3年=ヴェルディSS岩手)が決めて、ダメを押した。

 柱谷TAが花巻にやってきた18年当時は、石だらけのグラウンドを整備するところから始めたという。そんなチームが今では人工芝の練習グラウンドを兼ね備える強豪校へと仲間入りしている。

 ただ柱谷TA自身はようやく始まったばかりであることを強調する。「(高校生への指導は)技術ひとつにしても、メンタルも含めて深い。これをもう少し早く経験しておけば良かった。僕が教えているんじゃなくて、生徒たちに教えられます」。日々の新鮮さがたまらなく楽しい様子だ。

 一方で試合となればテクニカルエリアの一番前に出て、選手たちに指示を送り続けていた。「レベルのすり合わせだけ。基準は年齢もカテゴリも関係ないので。あとは“サッカーって何?”ということを僕は教えてあげたい。こんな素晴らしいスポーツなんだぞってね」。溢れる愛情、情熱。サッカーに向き合う姿勢は現役時代と何ら変わらない。

 今夏徳島県で開催されるインターハイに向けては「暑いだろうけどね。うちはプレッシングスタイルなので、プレスをかけて続けて、自分たちがボールを持って攻めたい」と意気込む。元Jリーガーで19年より花巻東で教職に就き、柱谷TAとは師弟関係にある清水康也監督も「いろんな方の応援でこういう形になっている。少しでも恩返し出来るように頑張りたい」と躍進を誓っていた。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校総体2022

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