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沖縄のテッペンを懸けた戦いで求められる対応力。雷雨で2度中断の激闘は那覇西が那覇に逆転勝ち!

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延長戦後半ラストプレー。那覇西の左CKをGKが弾き返せず、ゴール前中央で屋富祖昂輝(16番)が頭で押し込み、劇的な決勝ゴールとなった

[6.3 インターハイ沖縄県予選準決勝 那覇西高 2-1(延長)那覇高 恩納村赤間総合運動公園]

 今年度の新人戦を制して県大会三冠狙う那覇西高と、昨年の県総体で優勝し2連覇に挑む那覇高という好カードの沖縄県総体(インターハイ)準決勝が3日、恩納村赤間総合運動公園で開催された。

 沖縄地方は現在梅雨入り真っ只中で、大会期間中は雷雨の影響で試合が順延になったり、大会序盤は学校の土のグラウンド上で泥だらけになりながらボールを追いかける選手の姿が見られるなど、環境に対応することも勝負を制する重要なキーになった。求められる対応力を発揮し、テッペンをかけた熱戦が各地で繰り広げられる中、那覇西と那覇と共に、前原高と名護高を含めた4チームが準決勝に進出した。

 総体では16度の全国出場歴を誇る那覇西は、平安山良太監督が率いて6年目。チームとして20年大会以来の優勝を目指している。対して那覇は、昨年度の新人戦とインターハイで県二冠に導いた天願匠監督が今年度から宜野湾高へ異動。新指揮官は、那覇西を率いて05年の全国総体「千葉きらめき総体」で沖縄県勢初の準優勝の快挙を成し遂げ、昨年度まで具志川高を率いた松田邦貴監督が就任した。

 試合開始は13時の予定だったが、雷雨の影響で30分遅れでのキックオフとなった一戦。開始早々、那覇が決定機を演出。ロングボールで一気にアタッキングサードの深いところまで進入し敵陣でボールを回すと、那覇のCB高良澄弘がバックパスを受けて那覇西のDFラインが上がった瞬間、高良が空いたGKとDFラインの間のスペースに浮き球のパス。ゴール前に飛び込んだMF小渡晟勝がヘディングシュートでねじ込み、那覇が開始2分で電光石火の先制弾を決めた。その後も那覇は榎本一円と新垣歩の両サイドハーフが積極的にシュートを放ちゴールに迫るも、追加点には至らない。

 対して那覇西は、得点パターンでもある右・玉城寿翔と左・石川桔平の両ウイングが再三サイド攻撃を仕掛るが、降り続く雨の影響で水が含んだピッチ上で自在にコントロールできず、クロスに繋げられない。

 那覇のリズムで進んだ序盤だったが、前半10分が過ぎた頃に雷鳴が轟き、約40分間試合が中断した。その間にも降りしきる雨はピッチを叩き、余分に水を含んでいく。ゲームが再開する頃には目に見える水たまりが生まれ、ボールをつなぐことに長けた両チームは戦い方の変更を余儀なくされた。水の影響を受けないロングボールが必然的に多くなり、ボックス手前での球際の攻防では大きな水しぶきがあがり、まさに肉弾戦の様相を呈する。

 ゴール前での攻防が激しくなる中、那覇は主将の左FW上原康生が起点となってクロスボールでチャンスメイク。また上原自らボックス内へと進入し、追加点を狙う姿勢をみせたが、那覇西も堅いブロックで跳ね返し、前半は那覇の1点リードで折り返す。

  後半開始間際、再び雷鳴が響き渡り2度目の中断。待ち時間に何度も雷が発生し、その度に中断時間も延長。後半開始は実に約1時間遅れとなった。

「雨の日用のサッカーに徹しよう」と選手に声をかけたのは那覇西の平安山監督。「こういう状況になったとき、どう切り替えられるか。ストレスもあるだろうが、この中断時間を生かすも殺すも自分たち次第だ」と伝えたという指揮官は、泥臭くともチームが一丸となってゴールに向かう姿勢を出すことを臨んだ。

 そして迎えた後半。再三のクロスボールと直接FKからゴールに迫る那覇西に対して、那覇はGK知念律樹を中心に弾き返してそこからカウンターを狙うと展開に。ゴールへの執念を互いに見せ合う中、その思いを叶えたのは那覇西だった。後半26分、2年生FW頭山亮太が中央から右へと流れてドリブル突破を図り、GKが飛び出した瞬間にループシュート。これが鮮やかに決まり、試合を振り出しへと戻した。

 シンプルにボールを前に蹴って足を止めないサッカーを演じる両チーム。後半が終了し延長戦に突入してもその様相は変わらず、足が攣る選手も続出した中、再三サイドから進入した那覇西がチャンスを迎える。

 延長戦後半の最終盤。右CKを得た那覇西はMF山川輝が左足で直接狙うもGK知念がかろうじてパンチングし今度は左CKに変わると、左SB比嘉隼が放った右足インスイングのキックを2年生CB屋富祖昂輝が頭で触りそのままゴールイン。その直後、試合終了の笛が鳴り響き、ラストプレーをものにした那覇西が2連覇を狙った那覇を劇的勝利で破り、決勝進出を決めた。

 決勝は初優勝を狙う名護高との一戦。「那覇西と決勝で戦いたい」という思いを胸に、那覇西のコーチを離れて18年から名護の指揮官となった石川広武監督との対決を前に平安山監督「僕が那覇西に来た最初の1年間だけ監督とコーチという間柄だったが、その仲間と実際に決勝で戦えることが本当に嬉しい」と語る。

 県総体決勝は4日(土)、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで熱戦が演じられる。

(取材・文 仲本兼進)
●【特設】高校総体2022

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