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熊本決勝で5-0。「超越」テーマの大津がインハイで選手権の準V超えへ

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大津高がインターハイで日本一に挑戦する

[6.8 インターハイ熊本県予選決勝 大津高 5-0 慶誠高 えがおS]

 全国で「超越」する。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技熊本県予選決勝が8日に行われた。前半3分にMF中馬颯太(3年)が先制点を挙げるなど、大津高慶誠高に5-0で快勝。4大会連続22回目の全国大会出場を決めた。

 昨冬の選手権で全国2位となった“公立の雄”大津の今年のテーマは、「超越」だ。昨夏の県決勝のスコアである4-0を超え、5-0で全国切符を獲得。選手権準優勝メンバーのU-19代表候補FW小林俊瑛主将(3年)は、「『超越』というテーマでやっているので、前回を超えるという意味で、そこはインターハイでも、選手権でも全国優勝を目指しています」と力を込めた。

 5試合20得点2失点で決勝へ駒を進めた大津は4-4-2システム。GK西星哉(3年)、右SB坂本翼(3年)、CB五嶋夏生(1年)、U-17代表CB碇明日麻(2年)、左SB田辺幸久(2年)。ダブルボランチが浅野力愛(3年)と井伊虎太郎(3年)、右SH中馬、U-17高校選抜の左SH田原瑠衣(3年)、2トップに小林と3戦連発中の1年生FW山下景司が構えた。

 一方、慶誠は初めて4強入りした昨年の記録を更新し、初の決勝進出。4-2-3-1のGK村中昂星(3年)、右SB森山大翔(2年)、CB吉田悠士郎(2年)、CB糸川徠夢(2年)、左SB紫垣愛斗(3年)、ダブルボランチが大倉翔琉(3年)と福田岬(2年)、右SH前田龍心(3年、左SH甲斐勇太(2年)、トップ下が山下大斗主将(3年)、1トップを村上誠将(3年)が務めた。

 今大会、大津は対戦相手の粘り強い守備に苦しむなど先制するまで時間の掛かる試合が続いていた。だが、決勝では、立ち上がりから慶誠を飲み込んで見せる。小林がPAでDFを剥がして右足を振り抜くなど攻める大津は3分、田原の左クロスが中央へ入り、中馬がコントロールからの右足シュートでスコアを動かす。

 畳み掛ける大津はさらに6分、右サイドから攻め上がりを連発していた坂本へ山下景からのパスが入る。DFを振り切り、ゴールエリア手前まで潜り込んだ坂本の折り返しをニアの小林がスルー。背後の山下景が右足ダイレクトで決めて2-0とした。

 大津の山城朋大監督は、「自分たちのサッカーをしっかりやれば勝てるというのが身に沁みてあると思う。相手の対策も大事ですけれども、しっかりやるべきことをやること。それがこの大会はあると思う」。4回戦の東海大熊本星翔高戦では先制され、取り組んできたことをなかなか出せないまま0-1で前半終了。まず自分たちのサッカーを表現することに集中して逆転勝ちした経験が、大一番でも大津に変わらぬ攻守と強さを発揮させた。

 大津は、2点先取した後も切り替えの速い守備と強度を継続。ボールを奪い返すと、最前線で浮き球、グラウンダーのボールを次々と収める小林、左サイドで圧倒的なキープ力を見せ続ける田原を中心とした多彩な崩しでシュート数を増やして行く。中盤の底の位置でボールを回収する浅野や、スペースへ飛び出す井伊らの献身的な動きも力に攻勢を続けた。

 慶誠の古木裕監督は大津OB。警戒していた小林へのロングボール、SBのクロスオーバー、そして田原のドリブルの3つ全てを母校に出させてしまったことを残念がる。特に相手2トップに強く行けず、「術中に完全にハマりましたね。怖いから引いちゃう。一個ずつ遅れてしまう」と指摘。「出足速いし、タフだし、オーソドックスのクオリティがやっぱり高い」という大津との差は小さくなかった。

 それでも、2失点後は大倉のボール奪取や森山のシュートブロック、そして、この日再三の好セーブを見せていたGK村中のシュートストップなどで対抗。奪ったボールを意図した形で繋いでサイドへと運ぶ。随所で強度、質の部分も発揮。山下がドリブルで持ち上がって右足を強振するシーンもあった。

 大津は強引に攻めてロストすることも少なくなかった。それでも、相手が攻め切る前に奪い返して追加点のチャンスを作り出す。そして、前半13本目のシュートで3点目。35+1分、右サイドでボールを奪うと、細かく繋ぎ、中央の田原が左前方のスペースへラストパスを通す。これに走り込んだ田辺が、左足で豪快に決めて3-0で前半を折り返した。

 大津は後半開始から中馬に代えてMF香山太良(3年)を左サイドへ投入。田原を右サイドへ移した。後半は香山の縦突破も加えてよりゴール前のシーンを増やし、シュート数は計16本。だが、慶誠もGK村中が至近距離からのシュートをストップするなど、必死の戦いを続ける。

 慶誠は6分、前田をMF植田湧大郎(2年)へスイッチ。大津も13分に山下景をFW山下基成(3年)へ入れ替える。慶誠は山下の距離の長いスルーパスに植田が走り込むなどスタンドを沸かせるが、大津は20分に追加点を奪う。香山とのコンビで左へ抜け出した山下基の折り返しを小林が1タッチでゴール。大津は直後に井伊と田原に代えてMF稲田翼(2年)とMF岩崎大翔(3年)を送り出し、慶誠も前線で奮闘した村上とMF島崎快青(3年)を交代する。

 大津は23分、自陣右サイドから五嶋が大きく蹴り出すと岩崎が繋ぎ、前線でコントロールした小林が前を向く。そして、スルーパスで抜け出した山下基がGKとの1対1を右足シュートで制し、5-0した。

 慶誠も27分、山下のラストパスが大津DFラインの背後を強襲。抜け出した植田がシュートへ持ち込むが、大津GK西が距離を詰めてストップする。この後、大津は西に代えて大宮GK南雄太を父に持つGK南太童(3年)を投入。6点目を奪うことはできなかったが、最終ラインで碇が高さを発揮し続けるなど各選手が守備面でも特長を発揮して、無失点で試合を終えた。

 大津は今年、トップチームがプレミアリーグ、セカンドチームがプリンスリーグ九州、そしてサードチームが県1部リーグを戦っている。この日決勝を戦った慶誠とはサードチームが県1部リーグ戦で戦い、井伊の3発など5-1で快勝。多くの選手が高いレベルを経験し、チームのレベルアップに繋げている。今年はさらなる底上げに成功し、井伊らが台頭。Aチームはプレミアリーグで苦戦が続いていたが、インターハイ予選で自信をつけることができたようだ。

 小林は「プレミアでなかなか勝てなかったり、一人ひとりプレッシャーは感じていたと思うので、この大会で良い形でプレッシャーが取れたら良いと思っていました。一人ひとり元気が出てきたので(プレッシャーは)取れたと思いますね」。選手権準優勝を経験し、選手たちの目線も上がっている。

 全国決勝を目指すチームはこの日、全校応援の中でも動じずにプレー。山城監督は「目指しているものの手前で緊張してどうするんだという目線ではあると思います」という。田原はインターハイへ向けて「チャンスはある。最後は(選手権決勝で戦った青森)山田と決勝でやって全国制覇したい」。リーグ戦、今回の予選も進化に繋げてきた大津が、インハイで昨年度の成績を「超越」する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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