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5戦34得点無失点!! 圧倒的な数字で頂点へ…京都連覇の東山、「満足はしていない」と慢心なく全国に挑む

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2連覇を達成した東山高

[06.05 全国高校総体・京都府決勝_東山高 5-0 京都精華高 太陽が丘陸上競技場]

 令和4年度全国高等学校総合体育大会・京都大会の決勝が5日、絶好のサッカー日和の中で行われた。黄金世代が最終学年となり連覇を狙う東山高と、男女共学化から創部7年目で初のファイナル進出となった京都精華高との一戦を見ようと、会場の太陽が丘陸上競技場には約1500人の観戦者が詰め掛けた。

 試合は前後半70分間を通して攻める東山、守る京都精華という展開で進み、東山が5-0で勝利した。地力で上回る東山はボールを持つ時間が長く、サイドや前線への効果的な配給からシュートまで持ち込み、DF松橋啓太(3年)のロングスローやセットプレーでも圧力をかけていく。前半27分にFW北村圭司朗(3年)がロングスローを頭で決めて先制すると、同32分には最終ラインのDF新谷陸斗(3年)のフィードに反応して相手の背後を突いたMF阪田澪哉(3年)が追加点をあげる。阪田は前半終了間際にロングスローから2点目を、後半に入り同22分には左SB仲里勇真(3年)のクロスをゴール前で押し込んでハットトリックの活躍を見せている。後半終了間際にはFW上田幸輝(3年)の折り返しをMF石井亜錬(3年)が押し込み、交代出場の2人による得点で試合を締めくくった。

 京都精華は試合の入り方はよく、守備で粘り強い対応を見せていたが、警戒していたロングスローから失点すると、その後は相手の攻撃力を抑えきれなかった。時折、中盤のMF山本莉王(3年)や左ウイングのFW千葉智輝(3年)が中心となりチャンスを作ったが、シュートまで持ち込むことができなかった。

 東山は今大会、5試合で34得点無失点という圧倒的な数字で大会連覇を果たした。この試合でも4-4-2の布陣でボランチ真田蓮司(3年)を中心にボールを動かし、前半だけで10本のシュートシーンを作っている。「前半の入り方はよくなかった。決勝戦の雰囲気や、どこかで『これくらいでも勝てるだろう』という気持ちがあったのかもしれない」(新谷)という反省はあったが、それでも流れを渡さずに先制すると、その後も今大会で追求してきた「1点を取った後に2点目、3点目を追求する姿勢」(真田)を打ち出して、前半だけで3ゴールを叩き出した。

 守っても攻守の切り替えやボールへのタイトな寄せを発揮して相手に自由を与えず、シュートを一本も打たせなかった。最終ラインは大会直前に負傷者が出たことで、ボランチが本職の松橋を一列下げ、キャプテン新谷とコンビを組ませて戦い抜いたが、これがハマった。松橋が「最初はボランチの感覚でやってしまい(新谷)陸斗などから指摘されたけど、少しずつこなせるようになってきた。陸斗はカバーリングや指示も出してくれるので、思い切ってプレーできる」と話せば、新谷も「(松橋)啓太は高さがあり、ビルドアップもできる。東山に入学してから一番いい(CBの)相棒だと思う」と相性の良さを口にしている。

 一方で、松橋が抜けた中盤では軸となる真田とコンビを組むボランチが定まらなかった。決勝戦や準々決勝・京都廣学館戦では攻撃の組み立てられる大谷彩斗(3年)を、準決勝・京都橘戦では守備を期待して石井を、3回戦・福知山戦では2列目もこなせる清水楓之介(3年)を起用するなど、対戦相手やゲームプランに応じて複数の選手を使い分けてきた。全国へ向けて松橋を戻すのか、それともボランチの定位置を手にする選手が出てくるのか。指揮官の判断や選手がどれだけアピールできるか、注目が集まる。

 充実の京都府大会となったが、チームが見据えるのは高いレベルでの戦いが待ち構えている全国の舞台だ。試合後、福重良一監督は優勝を称えつつ、試合内容や個々の出来については厳しい言葉も交えながら更なる奮起を求めていた。新谷も「大会無失点は目標だったので達成できて嬉しいけれど、満足はしていない。全国では一本のパス、一本のシュートで試合が決まることがある」、松橋も「本大会へ向けて基礎の部分や体作りなど、全てにおいて伸ばしていきたい」と話している。

 こうした成長意欲はチーム全体にも及んでいる。新チームとなった今季からの取り組みとして、新谷は上手くいかなかった練習の後のコミュニケーションをあげる。「今日は何が駄目だったのかを話して、原因や改善点を出してから終わるようにしています。駄目だった練習を、無駄な時間にしたくない」と理由を説明する。

 ロングスローやセットプレーに関しても、昨年は得点が少なかったことが課題となっていたが、今季は一転してチームのストロングポイントになっている。スタメンの平均身長では昨年よりも下回っているのだが、選手が走りこむコース取りやタイミングを工夫して、回数を重ねることで得点率が向上してきた。個人レベルでもそうだ。例えば北村は1年生から試合に絡んでいたが、飛躍が期待された2年生は消化不良のままシーズンを終えている。「去年まで球際やハードワークでサボってしまうこともあった。そこを意識して取り組んでいる」(北村)。その成果は少しずつプレーに現れており、今大会は好調を維持していた。先発入りを目指す上田も「守備のときの判断や、やりきること。攻撃ではパスを出すタイミングが遅れることがあったので、自分より上手い選手を見ながら改善している」(上田)と課題と向き合っている。今大会は多くの選手が公式戦の舞台を経験した。それらを日々の練習の中で生かしていければ、チーム全体の底上げにつながるだろう。

 京都大会を制したことで、次はいよいよ目標としていた全国が舞台となる。昨年は夏の高校総体、冬の選手権で、いずれもベスト8という成績を残している。敗れた相手は、最終的に優勝校となった青森山田だ。日本一のチームを基準に定めて取り組んできた成果を、高校総体本戦でも披露してみせる。

(取材・文 雨堤俊祐)
●【特設】高校総体2022

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