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ベンチには恩師の麦わら帽子。長崎総科大附が「今回は何が何でも」出たかった全国へ!

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長崎総合科学大附高が2連覇を達成

[6.10 インターハイ長崎県予選決勝 国見高 0-1 長崎総合科学大附高 トラスタ]

 長崎総科大附が“小嶺先生”とともに戦い、全国へ――。令和4年度全国高校総体(インターハイ) 「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技長崎県予選は10日に決勝を行い、長崎総合科学大附高が2大会連続5回目の全国大会出場を決めた。国見高と決勝を戦った長崎総科大附は、後半4分にFW福島文輝(2年)が決勝ヘッド。1-0で勝ち、長崎制覇を果たした。

 インターハイ優勝5回、12年ぶりの県決勝進出を果たした国見は準決勝から先発3人を変更。4-4-2システムのGKは今村泰斗(3年)で、右SB村田一翔主将(3年)、CB平田太耀(2年)、CB上田陽南太(3年)、左SB和田夢叶(3年)、ダブルボランチが21年U-17代表候補MF北村一真(3年)と川添空良(3年)、右SH中田敦士(3年)、左SH今林隆之介(3年)、2トップは利根悠理(3年)と古谷莞大(3年)がコンビを組んだ。

 一方の長崎総科大附は準決勝と同じ11名。4-2-3-1のGKが亀井一起(3年)、右SB横山恒星(3年)、CB京谷來夢(2年)、CB瀬戸俊樹(3年)、左SB平山零音(2年)、ダブルボランチが竹田天馬主将(3年)と山下竣介(3年)、右SH筒口優春(3年)、左SH梅野佑汰(3年)、トップ下が尾島栞蓮(2年)、1トップを福島が務めた。

 長崎総科大附の竹田はチーム全体の巧さでは国見が上と分析。その上で、「雰囲気のところでも盛り上げて、勢いで押しつぶそうと意識していました」という。試合前には、山下が故・小嶺忠敏前監督の麦わら帽子を被って集合写真撮影。「見てくれているだけじゃなくて小嶺先生と一緒に戦っているんだという気持ちを持って被りました」という山下らイレブンは前半、出足鋭く相手との距離を詰め、幾度もボールを引っ掛けて見せる。

 だが、国見もそのディフェンスを掻い潜ってチャンスを作り出す。川添がキープ力を発揮したほか、北村がボランチの位置から前線、DF背後へ好パス。13分には利根の落としを古谷が狙い、16分には上手くDFラインと入れ替わった利根の右足シュートがゴールを強襲する。

 だが、長崎総科大附はこれをGK亀井がファインセーブ。北村、川添の相手ダブルボランチに特長を出されていた一方、山下がセカンドボールを幾度も回収。竹田の展開から梅野が鋭いクロスを上げるなど、敵陣でプレーする時間やゴール前のシーンを作る回数では相手を上回っていた。

 その長崎総科大附が後半開始からプッシュ。2分、尾山が個人技で右サイドを攻略し、ラストパスを福島が狙う。これはGK今村がわずかに触ってゴールマウスをヒット。ロングスローなどで圧力を掛けてシュートへ持ち込む長崎総科大附は4分、平山の右CKがGKの伸ばした手の先へ抜ける。そこへ走り込んだ福島がヘディングシュート。前日の準決勝でも決勝ヘッドを決めている2年生FWのゴールで、長崎総科大附がリードを奪った。

 国見の木藤健太監督はややフワッと入ってしまった後半立ち上がりを残念がる。10分には古谷と中田に代えてFW中山葵(2年)と準決勝で決勝点のMF幸偉風(3年)を同時投入。ここから流れが徐々に国見へ傾く。

 ミスから相手MF筒口にシュートを浴びるシーンもあったが、13分、川添が左サイドを突破。こぼれ球を拾った和田の右足シュートがゴールを捉える。だが、長崎総科大附DFが懸命のクリア。一方、中山と幸が右サイドの狭い局面を打開する国見は19分、今林に代えてMF濱田渉帆(3年)を送り出す。

 22分にはその濱田が右サイドへ展開し、幸のクロスがファーサイドでフリーの川添へ通る。だが、決定的な右足シュートは枠上へ。一方の長崎総科大附は24分に梅野とFW佐藤海斗(3年)を入れ替える。

 何とか1点を目指す国見は前からの攻守で押し込むが、長崎総科大附は重心を後ろに置き、ゴール前に入って来るボールを京谷と瀬戸の両CBを中心に一本一本確実に跳ね返していく。国見の木藤監督は「ドリブルにしても相手の対応も速かったですし、守備のところはなかなかPAまで入れてくれない。簡単にクロスを上げさせないとか基本的なところをしっかりやられていた」と相手を讃える。

 どう攻められても、ゴール前では必ず先にボールを触り続ける長崎総科大附DF陣。国見は32分に左SB椛島眞於(2年)とFW荒木政斗(3年)を投入し、椛島の左足キックをゴール前に入れる。だが、DF下田龍久翔(3年)を加えて守りを固めた長崎総科大附は揺るがず。ベンチの上に掛けられた恩師の麦わら帽子の前で、長崎総科大附が勝利を収めた。

 長崎総科大附の竹田は「自分たちの戦い方は相手の良さを消すところなので、最初の一歩目や球際というのは、今日は本当に負けたらいけないと思っていました。そこで勝てたので今日の勝ちがあるのかなと思います」と頷く。

 その竹田は準決勝後、恩師とともに戦い、勝つことを誓っていた。その言葉通りの優勝に、「見てくれたと思うので小嶺先生。勝てたのは本当に良かったと思います」と微笑。そして、「(小嶺先生には)やってやったぞ、見ていましたかと伝えたいです」と照れ笑いを見せた。

 名将・小嶺監督が亡くなってから初となる全国大会予選。コーチ陣は仏前に必勝を誓い、大会に臨んでいたという。定方敏和監督は「今回は何が何でも出たいと」と振り返り、全国大会出場を目指して長崎総科大附へ進学してきた生徒たちが、その挑戦権を勝ち取ったことを喜ぶ。

 そして、「先生いなくても、ここまでで来たというのは自信というか次のステップアップに繋げて。ただ、慢心せずしないようにゼロからのスタートで初心に戻るということでまたやっていきたいと思います」と引き締めた。選手たちが良く頑張ったことは確か。だが、できていない面もまだまだある。

 竹田は、まだスタートラインに立っただけであることを強調する。「本当にここがスタートラインだと思うので、去年(全国大会初戦敗退)のリベンジも個人でも、チームでもありますし、ベスト4は越えないといけないと思いますけれども、まだまだ優勝とか言えるチームではないと思うので、一戦必勝で一個ずつ戦っていきたい。全国ではもっと球際や巧さが増して来ると思うので、トレーニングから対応力や強度を上げてやっていきたいと思っています」と誓った。小嶺前監督や定方監督らコーチ陣から学んできた“総附らしい”サッカーを磨き上げ、全国舞台で表現して勝つ。

試合開始前、MF山下竣介が故・小嶺忠敏前監督の麦わら帽子を被って集合写真に収まる

試合中、ベンチの上に麦わら帽子が掛けられていた

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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