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[MOM3957]前橋育英DF山内恭輔(3年)_天使の左足はすなわち悪魔の左足。破壊系レフティのミドルが全国でも炸裂!

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前橋育英高が誇る破壊系レフティ、DF山内恭輔はゴールで勝利に貢献

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.26 インターハイ3回戦 前橋育英高 2-0 聖和学園高 徳島スポーツビレッジピッチB]

 自信はある。クロスも、FKも、もちろんシュートも、左足から繰り出すそれであれば、いつだって絶対的な自信を持っている。だって、小さい頃から何万本も、いや、何十万本も蹴り込んできたんだから。

「メチャメチャ気持ち良かったです。インターハイは見ている人も多いですし、そういう人たちに向けて“結果”を残せたのも良かったですね」。

 プレミアリーグの舞台でも輝きを放ち続けている実力派左サイドバック。前橋育英高(群馬)が誇る破壊系レフティ。DF山内恭輔(3年=前橋フットボールクラブ出身)の左足が、全国大会でもゴールという形で炸裂した。

 攻め続けてはいたが、ゴールはなかなか奪えない。聖和学園高(宮城)と激突した一戦。立ち上がりから決定機も掴みながら、スコアは0-0のまま。「全体としては『え?』というところでミスパスがあったり、流れが途絶えたり、押し込んでいるんですけど、なかなか決定的なシュートチャンスまで行けないなと思っていました」とは山田耕介監督。嫌な空気が漂う展開になりかけていたことは、否めなかった。

 33分。スイッチを入れたのは、自らの果敢なプレス。山内は思い切って前方へと飛び出し、ピッチ中央のボールホルダーに寄せ切ると、そのパスをカットしたMF大久保帆人(3年)は、そのまま前に残っていた山内へ。良い位置に止めた6番が、思い切り良く左足で振り抜いたシュートは、ゴールネットを激しく貫く。

「チームで取られた後の切り替えは意識していて、自分が前にプレッシャーに行って上手く取れて、その流れでボールが来たんですけど、相手が来ていなくて結構フリーだったので、振れば入るかなと思いました。あそこまで行くのは結構珍しいですけど、今大会はゴールも狙っているので、そこは意識していました」。

 昨年度のインターハイは、チームに帯同こそしていたものの、試合出場は叶わず。選手権も手術したケガの影響もあってメンバー外になったため、これが高校入学後は初めての全国大会。虎視眈々と狙っていたゴールという結果を叩き出したレフティは、チームメイトの祝福に満面の笑みで応えてみせた。

 後半には“2点目”のチャンスもあった。19分。ゴールまで約25メートルの位置で獲得したFK。右利きのMF青柳龍次郎(3年)とスポットに立つ。「練習が終わった後には絶対にFKの自主練はしていますね。やっぱり感覚を忘れてしまうと変わってしまうので、常日頃やっています」。キッカーはやはり山内。枠を捉えたボールは、しかし右のゴールポストに弾かれる。

「コースも良かったんですけど、風がちょっとあったので……。風がなかったら入っていたかなと。今日は決め切れなかったんですけど、もう1回ぐらいはチャンスがあると思うので、次は絶対に決めたいです」。ドッピエッタとは行かなかったものの、チームは2-0で快勝。準々決勝へと駒を進めた。

 今大会の登録メンバー20人の中で唯一の群馬出身。Jクラブのユースからもオファーは届いていたが、中学時代に所属していた前橋フットボールクラブの練習場が前橋育英のグラウンドだったこともあり、「僕らの練習の前に、日本一になった代の飯島陸選手や田部井涼選手が練習していたので、それを見ていて『やっぱり育英カッコいいな』って。『育英に入りたいな』って思ったんです」と明かしている。

 それゆえに地元愛の強さは人一倍。「僕は中学校も高校も群馬県ということで、周りも自分のことを知ってくれていたりする方が多くて、たくさん応援してもらっていることもあって育英に入ったので、その応援に応えられるように頑張っていきたいですし、もともと育英はテレビで見ていたようなチームで、そのテレビの向こうにいた存在に今は自分がなっているので、子供たちにも『育英って凄いな』と思われるようなサッカーをしていきたいです」。

 ここから先は、すべてが決戦。負けられない理由を、日本一になりたい理由を、山内は明確に宣言する。「この大会の結果は、自分もそうですけど、ここに来れていない3年生の進路にも関わってくると思うので、そういう人たちの分まで戦って、優勝したいです」。

 ともに戦う味方にしてみれば天使の、対峙する相手にしてみれば悪魔の左足を持つ男。“何十万本”に裏打ちされた山内の一振りが、タイガー軍団の命運を握っていると言い切っても、決して大げさではないはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2022

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