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「一昨日の自分に負けるのだけは止めよう」。日大藤沢が“ベストゲームを超える戦い”で市立船橋撃破!

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日大藤沢高が強敵・市立船橋高を撃破。MF佐藤春斗主将は得意の攻撃だけでなく、守備面でも奮闘

[8.2 インハイ準々決勝 日大藤沢高 1-0 市立船橋高 カムイの杜公園多目的運動広場B]

 2日前を“超えた”日大藤沢が、17年大会以来の準決勝進出! 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技は2日、準々決勝を行った。日大藤沢高(神奈川2)が、FW山上大智(3年)の決勝点によって1-0で市立船橋高(千葉)に勝利。6年ぶりに4強入りの日大藤沢は、3日の準決勝で明秀日立高(茨城)と戦う。

 日大藤沢は2日前の3回戦でプレミアリーグ勢の有力校・米子北高(鳥取)に3-1で快勝。佐藤輝勝監督は選手たちに向けて、「一昨日の自分に負けるのだけは止めよう」と言葉掛けをしたという。絶対に、現状維持をしない。その言葉通り、市立船橋戦では全選手が素晴らしいパフォーマンス。指揮官は「ベストゲームは米子北かなと思ったけれど、さらに超える。素晴らしかった。一人ひとりが越えたと思う」と選手たちを称賛していた。

 日大藤沢はボールへの集散が非常に速く、球際・切り替え・運動量を三原則とする市立船橋に負けずに局面でボールを奪い取るシーンを増やす。得意とするゲームメーク以上に守備の光ったMF佐藤春斗主将(3年)は、「『相手の土俵でも負けない』ということを個人とチームのテーマとしていたので、それをやり切りました」。その上で自分たちの技術力を発揮する。

 前半9分、日大藤沢は10番MF安場壮志朗(3年)のスルーパスでFW山上大智(3年)がPAへ侵入。右足で狙うが、市立船橋GKギマラエス・ニコラス(2年)に阻まれた。また、相手のビルドアップのミスを突くシーンも。対して堅守・市立船橋も簡単には相手に攻め切ることを許さず、ボールを奪い返してワイドを活用した攻撃に出る。

 そして、エースFW郡司璃来(3年)の鋭い抜け出しやロングスロー、U-17日本代表左SB内川遼(3年)の攻め上がりも活用して相手に圧力をかけた。24分には、郡司が右中間を抜け出しかけるが、日大藤沢CB宮崎達也(3年)がスライディングタックルで阻止。市立船橋は右クロスをMF佐々木裕涼(3年)が頭で枠へ飛ばし、また郡司が左足シュートを狙うも先制点を奪えない。

 前半35分、日大藤沢が先制する。右サイドでの激しいボールの奪い合いを制し、この日攻守に運動量を増やしていたMF諸墨清平(3年)から佐藤、安場、MF荻原大地(3年)を経由して左サイドへ展開。そして、注目左SB尾野優日(3年)が縦への仕掛けから左足でクロスを上げる。これが中央の安場へ通り、左足を振り抜く。最後は右前方の山上がこのボールをコントロールし、左足でゴールへ叩き込んだ。

 山上の2試合連続ゴールでリードを奪った日大藤沢は、後半立ち上がりにも佐藤の左足フィードで左へ抜け出した諸墨がダイレクトでラストパス。これに山上が決定的な形で走り込む。対する市立船橋は抜群のボールコントロールを続ける郡司を中心に反撃。縦パスやクロスからシュートを狙う。

 24分には郡司が右中間から斜めにドリブルし、ラストパス。MF森駿人(3年)が切り返しから右足でシュートを狙うが、日大藤沢CB國分唯央(3年)がブロックする。佐藤監督は「一昨日のゲーム(米子北戦)も距離感を縮めたり、アンテナ張って1プレー2プレー連続でやったけれど、より広げないと、(市立船橋には)スーパーゴールを取れる選手たちがいるので自分たちがそこを広げようと」と選手たちに説いていたという。

 特に國分は守備範囲を広げ、相手の注目FW郡司相手に健闘。抜け出しを阻止するなど決定打を打たせない。また、森、内川という相手の強みである左サイドを右SB坂口康生(3年)とともに良く封じていた。日大藤沢は187cmGK野島佑司(3年)も終始安定。市立船橋はMF太田隼剛主将(3年)の配球などから押し込むが、終盤は焦りもあったか、意思疎通のズレやミスも増えていた。

 日大藤沢は守勢になることなく、正確にボールをトップ下の安場へ繋ぎ、MF岡田生都(3年)がドリブルで仕掛けるなど貪欲に2点目を狙い続ける。そして、DF陣も集中力を切らさず、堂々の内容で勝利。敗れた市立船橋の波多秀吾監督は、「ちょっとラインが下がってしまったり、前で収まっても追い越していけなかったりとか、コンディション的な問題なのか、暑さの問題なのか、色々あると思うんですけれども、そこでも相手の脅威になるようなプレーができないとなかなか日本一は取れないと思います」と指摘していた。

 日大藤沢は初めて決勝へ進出した17年大会準決勝でも、名門・市立船橋に勝利している。主将の佐藤は「市船はリーグ戦のカテゴリーが(3つ)上のチームで、めちゃくちゃ気合入っていた。しっかり米子北戦も戦えたんですけれども、『あれと同じじゃダメだぞ』とチーム全体、自分が口に出さなくても分かっていましたし、全員がピッチで表現できたのでそこは良かったです」と“一昨日を超える戦い”ができたことに胸を張っていた。 

 佐藤監督は快勝を喜ぶ一方、「また厳しい声を掛けないといけないですね」。準決勝の対戦相手は今大会、V候補を連破して躍進を遂げている明秀日立。日大藤沢は準決勝でも、“ベストゲームを超える戦い”をして、勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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