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指揮官が試合前日に落とした“雷”…奮起した日大藤沢、「自分たちらしいサッカー」で米子北に3発快勝!!

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先制点を奪った日大藤沢高MF安場壮志朗が歓喜のポーズ

[7.31 インハイ3回戦 米子北 1-3 日大藤沢 東光スポーツ公園球技場A]

 試合前日、日大藤沢高(神奈川2)の宿舎にて、2回戦勝利の余韻に浸るイレブンは指揮官の落とす“雷”に遭遇していた。

 佐藤輝勝監督が「かなり久しぶりに怒ってしまった」と照れ笑いとともに振り返り、MF佐藤春斗主将(3年)が「自分が言わないといけなかったことを監督に言わせてしまった」と猛省していた原因は、チームの弛緩した雰囲気にあった。

 ここまでの2試合、日大藤沢の試合内容は「決して褒められたものじゃない」と佐藤監督が振り返るとおりのもの。1回戦、2回戦ともにPK戦での勝ち残りで、得点は2試合で1つだけ。「自分たちの目指すサッカーをまったくできていない」(佐藤監督)という状況下で、勝ち残ったという満足感だけが漂っていたチームに対して指揮官は問いかけた。

「本気でこの大会で人生を変えるんじゃなかったのか?」

 佐藤主将が「効きました」と振り返ったように、あるいは佐藤監督が「次の日の朝食へ行ったら、自分が一番遅いくらいで雰囲気が違っていて効き過ぎたかと逆に心配になった」と笑って振り返るくらいに、指揮官の言葉はしっかり選手たちに届いていた。

 3回戦で迎える相手は米子北高(鳥取)。プレミアリーグWESTでも好成績を残しており、2回戦では名門・東福岡高を5-1の大差で下している「間違いなく強いチーム」(佐藤監督)。前日にその相手に対して本気で勝ちに行く覚悟があるのか問うた指揮官に対し、当日の選手たちはプレーで応えた。

 序盤は米子北のペース。持ち前の激しく素早くボールに圧をかけて素早く攻める形で日大藤沢ゴールへ迫る。ただ、中村真吾監督が「やらせてくれていたのかもしれない」と首をひねったとおり、この流れは日大藤沢にとって想定内。前半の飲水タイムをポイントにして「本来自分たちがやりたいサッカー」に切り替えると、後方からボールを繋ぐことで試合の主導権を奪いつつ、奪って攻め急ぐ相手の逆を突くカウンターでゴールを狙った。

 30分、波状攻撃から日大藤沢に大きな先制点。MF安場壮志朗(3年)の得点は、MF岡田生都(3年)が「自分は相手に止められてしまったんですけど、拾って後ろからどんどん選手が出てくる形で決められたのは日大藤沢らしい攻撃だったし、練習通りだった」と振り返るとおり、会心のゴールとなった。

 米子北の選手たちが「攻め急ぎ過ぎてしまった」と振り返ったように、この1点が心理面に与えた影響も大きかった。そして35分にはFW山上大智(3年)の追加点が決まり、試合の流れは大きく日大藤沢へと傾くこととなる。

 ただ、米子北もここで折れるようなメンタリティのチームではない。ハーフタイムにチームを心理面でまず立て直し、大胆な3枚替えで戦術面でも修正。「修正して後半に入った」(中村監督)ことで、後半の立ち上がりからは再び米子北ペースとなる。9分、DF梶磨佐志(3年)のアシストからFW森田尚人(3年)が決めて1点差と迫る。

 このまま米子北が一気に試合をひっくり返す展開もあり得たが、佐藤監督が「本当に逞しくなってくれた」と振り返るとおり、日大藤沢は崩れない。「どういう状況になっても絶対にポジティブな声を掛け合おうと話していた」(佐藤主将)という選手たちは、すぐに前向きな言葉を交わし合い、動揺を最低限に抑えつつ、「この1点差を守り切るんじゃなくて、突き放すサッカーをしよう!」(岡田)と意思統一して試合を再開した。

 そして16分、そうしたチームのマインドが実を結ぶ。試合を決めたのは前線に入っていた岡田だった。

「ボールを受けたとき、思ったより相手が来なかったので、(安場)壮志朗に当てて入っていく形はイメージどおり。ファーは無理だと思ったので思い切ってニアに打った」(岡田)というシュートが見事にゴールネットを揺らし、日大藤沢にとっては大きな勇気を、そして米子北のメンタルにはシリアスなダメージを与える1点が生まれた。

 その後は「ウチのCB二人は本当に全部跳ね返してくれる」という頼もしいCBコンビ、DF宮崎達也(3年)とDF國分唯央(3年)が米子北のパワフルな反撃を跳ね返す。さらにセカンドボールを巡る攻防でも「昨日のミーティングでもそこで負けなければ勝てるという話をしていた」と岡田が話すとおり、佐藤主将を中心に、佐藤監督が強調した「相手の土俵でも負けないこと」を貫徹。見事に3-1での快勝となった。

 勝った日大藤沢の佐藤監督にとっては「やっと自分たちらしいサッカーができました」と胸を張る好内容。一方、敗れた米子北の中村監督は「技術だけではなく、フィジカルでも駆け引きでも向こうに上回られた」と率直に敗戦を認め、「もっと試合の状況に応じて戦えるようなチームにならないといけない」と秋から冬へ向けてチームとしての幅を広げていくことを誓った。

(取材・文 川端暁彦)

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