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今夏ブレーメン入り、進路決定で苦しみから解放された佐藤恵允が明治大ラストゲームを大勝に導く

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明治大でのラストゲームを戦い終えた佐藤恵允

[7.29 関東大学L1部第12節 拓殖大0-6明治大 拓殖大学八王子国際キャンパスサッカー場]

 テーマは「いつも通り」。栗田大輔監督は、あくまでも勝ち点3を取りに行く試合であることを選手たちには言い聞かせていたという。しかしイレブンが特別燃えないわけがない。明治大は今夏ブレーメンに渡るMF佐藤恵允(4年=実践学園高/ブレーメン内定)とのラストゲームを大勝で飾った。

 チームを勢いづけたのは、やはり背番号10だった。前半7分に佐藤は右サイドからドリブルでエリア内へ突破。横パスを出してMF中村草太(3年=前橋育英高)の先制点をアシストすると、同11分にはPKを決めてあっという間にリードを2点にした。

 その後もMF田中克幸(4年=帝京長岡高/札幌内定)のスーパーミドルなどでリードを広げた明大は、前半だけで5-0として試合を決めると、後半14分にもPKを獲得。ここは佐藤ではなく、ハットトリックのかかっていた中村がキッカーを務めたが、危なげなく勝利した。

「毎試合思っていることなんですけど、特に今日は明治のためにというのを意識して前半からやっていました。まだ決めきれるところもあったけど、結果として大勝できたので、少なからず明治のみんなに何か残せたのかなと思います」

 苦しみから解放された2試合を思い切り戦った。大学サッカーの顔として迎えた最終学年。誰もが進路を注目するなかで、進路に関するすべての質問をシャットアウトしてきた。「本当に分からないんです」。報道陣に対する答えはいつも一緒。チームメイトにすら誰にも明かしていなかった。

 ただ苦しみから解放されると同時に、周囲の目が一気に集まることも感じた。今夏でドイツに渡ることを発表したが、発表されてからの今月2試合は、明治大で試合に出ることを明言していた。分かってはいたが、自分が決断したことの大きさを痛感した。

「(前節の東京国際大戦は)自分の一個一個のプレーにスタンドから、それでドイツで通用するのかとか強い言葉をもらった。でも正直、そういうのはドイツに行ったらもっとあると思うし、本当にその通りだと思う。そういう意見をバネにして飛躍できるようになっていきたいと思います」

 3年半の集大成。紫紺のユニフォームを着てのラストゲームとなった拓殖大戦には、両親はもちろん、母校の実践学園高の後輩サッカー部員たちも姿をみせ、明治大の応援席から声援を送っていた。「明治に来て良かったなとつくづく思う。明治に来ていなかったらこのような人生になっていないと思うので、感謝しかないです」。

 この試合が最後になったという実感はまだないという佐藤だが、8月中旬にはドイツに出発。新生活を始めることになる。

「今はまだ明日また明治のみんなとサッカーが出来る感覚でいるけど、そういう当たり前のことがなくなってしまうので、日々に感謝することが大切だなと思います。行ってすぐにドイツでの生活に順応しないといけないと思うので、生きるために必死にサッカーに取り組みたいです」

 大学サッカーを一足早く戦い終えた日本サッカー界の金の卵が、いよいよ世界に羽ばたく。

(取材・文 児玉幸洋)
●第97回関東大学L特集

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