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東京Vでの鮮烈なインパクトから掴んだU-22日本代表“常連組”入り…「自分が一番びっくり」東洋大MF新井悠太が人生初の代表遠征へ

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MF徳永涼との前橋育英先輩後輩マッチアップとなったMF新井悠太(右)

[10.7 関東大学L1部第16節 筑波大1-1東洋大 筑波大G]

 “日本代表”に違わぬ切れ味鋭いプレーをみせた。前半10分、左サイドからカットインしたMF新井悠太(3年=前橋育英高/東京V内定)はゴール前に侵入して右足を一閃。GKの好セーブに遭い先制点は決められなかったが、東洋大の応援席から「ニッポンコール」が起こるなど、会場を盛り上げた。

 一報を聞いたときは、耳を疑ったという。「自分が一番びっくり?その表現で間違いないです」。今月5日に発表になったアメリカ遠征を行うU-22日本代表メンバーの中に、これまで代表候補ですら無縁だった「新井悠太」の名前があった。

「最初に聞いたときはほかのメンバーを知らなかった。だから発表されたメンバーを見たときに、僕で大丈夫かなみたいな感覚になりました。でも代表ということでいろんな経験ができると思いましたし、自分の力を試す場だと思った。自分がどうやってアピールできるかを考えたいと思います」

 危うくチャンスを逃すところだった。海外渡航は高校2年生の時に大会選抜チームで行ったスペイン遠征以来。そこからパスポートを使用していなかったため、更新することもなかったという。

 しかし9月に韓国遠征を行う全日本大学選抜のラージ枠に登録するためにパスポートの作成を求められた。結果的に遠征メンバーから落選したことで使用することはなかったが、「その時に作っていなかったら間に合っていない」。選抜メンバー落選もまた、シンデレラストーリーの引き立て役でしかない。

 もっとも、結果を残したことを評価されての選出だ。昨年まで大学でも控え選手だった新井だが、今春より本格的に左MFに転向したことで才能が開花。6月には早くも25年の東京ヴェルディ入りを内定させると、特別強化指定選手として出場した7月2日の長崎戦では、初ゴールを決める衝撃デビューを飾った。

 鮮烈なインパクトを残した翌節に国立競技場で行った町田戦を含めた2試合を「出来すぎちゃった面があった」と笑うが、当然、手ごたえも感じることが出来ていた。8月後半から大学リーグの中断を利用して再度帯同。得点を記録した岡山戦を含めた6試合連続で、途中出場を果たした。

 ただ、うなぎ上りする評価に戸惑いがないわけではない。何より大学リーグではJリーグで披露したほどのパフォーマンスをみせることが出来ていない自覚があるという。例えば、前橋育英高時代の同期で明治大でプレーするMF中村草太は、現在11得点10アシストを記録。両タイトルで堂々トップに立っている。直接対決となった前節も、3アシストを許して「完敗」を喫していた。

「だから、(今回のU-22日本代表選出で)上回ったという感覚はなくて、正直に言っちゃえば、“ぽっと出”の選手を試しに招集しただけだと思っている。結果を出して初めて並べるくらいになると思っています」

 アジア大会ではパリ五輪出場を目指す同世代の大学生が存在感をみせた。そして今回の常連組で行うアメリカ遠征のメンバーにフィールドプレーヤーでただ一人の大学生として参加する新井にも、新たな風を吹かすことが期待されている。「しっかりと力を出して、自分らしさを出せればいいなと思います」。面識があるのは高校の2学年先輩のMF近藤友喜(横浜FC)だけだというが、そこもまた新たな自分を見つけるためのいい機会だと考える。“覚醒期”にいる大学生ドリブラーは、中学時代に所属した前橋FCの遠征で渡米して以来2度目だというアメリカの地で、必ず爪痕を残す。

(取材・文 児玉幸洋)
●第97回関東大学L特集
児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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