beacon

衝撃の2試合…昨年まで大学で控えボランチだった東京V特別指定MF新井悠太がデビュー戦弾に続き同点アシスト!

このエントリーをはてなブックマークに追加

シュートを放つMF新井悠太

[7.9 J2第25節 町田2-2東京V 国立]

 スタジアムの空気が一変した。東京ヴェルディは2点を追う後半21分からMF甲田英將に代えてMF新井悠太を投入。すると同25分、新井が左サイドからドリブルでエリア内に侵入し、DFを外して右足を振り抜く。

 シュートは惜しくもポストを叩き、直後にもカットインから右足シュートを放つが、今度はGKの好セーブに防がれてしまった。それでも選手たちを後押しするゴール裏の声を一層盛り上げて、「行ける」という雰囲気を作りだした。

 するとまずは後半28分、東京Vは右サイドからDF宮原和也が上げたクロスにFW染野唯月が豪快なヘッドで飛び込んで1点差とすると、迎えた同38分、またも新井が左サイドを突破。今度は左足でクロスを上げると、染野が再び頭で決めて、ドローに持ち込んだ。

「自分がリズムを変えてやろうと言うより、どちらかと言うと、チームがいい方向に行けばなという気持ちで入りました。流れが作れたことはいいことだったと思います。合流してから暖かく迎えてくれて、自分のドリブルを引き出してくれている。そういった面ではチームのみんなに感謝したいです」

 衝撃の2試合になっている。特別指定選手として登録され、初めてのプロ公式戦に臨んだ7月5日の長崎戦では後半23分から途中出場。終了間際の44分にデビュー戦弾を決めると、2試合目となったこの日も途中出場して持ち味を発揮。同点弾をアシストする結果も残した。

 右利きだが、この日のアシストが左足で上げたクロスだったように、左足の精度にも自信を持っている。「そんなに苦手意識はなくて、結構前から左足の練習はしていた。左SHになってより左足を活用してくる場面が増えたのかなと思います」と充実の表情を見せる。

「前節の得点のイメージがあったので、今日も何本もいい形でシュートが打てました。それが結果に繋がらなかったけど、結局2-2で勝ち切れなかった。これからこういった世界で戦うにあたって、転がってきたチャンスをいかに決められるかがカギになってくると思うので、満足せずにやっていきたいです」

 少なくとも半年前に自分の今の姿を想像することは出来なかった。昨年までの主戦場はボランチ。名門・前橋育英高出身で高校時代は現在徳島ヴォルティスでプレーするMF櫻井辰徳と同期で、試合には出場できていたが、「熊倉弘貴(現日本大)もいて、正直、運とタイミングが重なったというか、どちらかが怪我でいなかったから出れていた」。

 東洋大に進学後も主にボランチとしてプレー。2年生になってようやくトップチームでベンチ入りを果たしたが、リーグ戦の8試合の出場はすべて途中からだった。さらに終盤には肩を脱臼。4か月ほどの離脱を強いられ、当然、プロサッカー選手への登竜門となるデンソーカップに出場する関東選抜に選ばれることもなかった。

 しかし飛躍の時はいきなり訪れる。大学に入ってからも時折プレーすることはあったが、本格的にサイドハーフへのポジション転向を指示されると、初の先発出場を飾った開幕戦からいきなりフル出場。第4節の国士舘大戦で初ゴールを含む2ゴールを決めるなど、現在リーグ3位タイの4ゴールを記録。関東大学リーグ屈指のアタッカーへと急成長を遂げた。

 そんな新井に東京Vがいち早く声をかけた。4月末にはコンタクトがあり、ゴールデンウィーク期間中に練習に参加。すぐに獲得オファーにこぎつけた。「何試合かプロのチームと練習試合があって、そこでのプレーを見てもらって声をかけていただいたようです。ヴェルディさんが見て下さっていたという部分でも縁を感じたので、有難くオファーを受けさせてもらいました」。

 サッカー人生は劇的に変わった。少し前まで「サッカーが全てじゃないですし、就職活動もしっかりしようと思っていました。いろんな視点を持って、社会に貢献できればいいな」と考えていたが、今やJ1昇格を争うチームに欠かせないピース、救世主になろうとしている。

 ただし、新井自身はしっかりと現実を見ている。現在大学3年生。「大学を辞めてまでとは全く考えていない。ちゃんと卒業してからヴェルディに入ろうと思っています」とキッパリと話す。しかし今後も「来られるのであれば来たい」。来週末から大学のリーグ戦が再開することでチームに戻ることになりそうだが、今夏は総理大臣杯の出場を逃したことで、8月後半には再び東京Vに帯同する可能性もありそうだ。

「プロになったからといって、偉くなったわけでもない。大学はもう1年ある。今まで自分は小中高といい成績を残してこれなかったので、東洋大学でタイトルを獲りたいという気持ちが強いです。東洋大学は4年生を含めて、人としてもチームとしてもいい集団。みんなで一致団結して東洋らしいサッカーが出来れば結果はついてくると思うので、みんなで一緒に頑張っていきたいです」

 好きな選手は元スペイン代表のボルハ・バレロ氏だと話す20歳のサッカー人生には、まだまだ明るい未来が広がっている。

(取材・文 児玉幸洋)
★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!
●2023シーズンJリーグ特集ページ

TOP